栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(NCSRC)教材確認ワークショップと郡講師育成研修実施

2019年9月30日

2019年度のプロジェクトの主要な活動の一つは、アシャンティ州11郡における、母子手帳及び栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(注)(NCSRC)研修の実施です。栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(NCSRC)は、Ghana Health Service(GHS)が、全国に導入したいと考えている新しいサービスであり、全国に先立ちアシャンティ州11郡において試行することになっています。プロジェクトではこれまで、会議やワークショップを繰り返し、栄養カウンセリングサービスとリスペクトフルケアの概念、目的、具体的な内容について議論を重ねてきました。そしてこの9月、漸くこれまでの努力が実を結び、11郡での活動が大きく動き始めました。

(注)妊娠・出産・子育て期の女性と子ども及びその家族を尊重し、彼らを主体とした、安全で質の高いケア

教材確認ワークショップ開催

2019年9月6日、アシャンティ州の州都クマシにて、これまで作成を進めてきた栄養カウンセリングサービス及びリスペクトフルケア(NCSRC)にかかる実施ガイドライン、研修講師用ガイド、研修教材を、関係者が見直し、郡講師育成研修を準備するためのワークショップを開催しました。GHS栄養課課長、ナショナルファシリテーターの他、栄養クリニックを展開しているグレーターアクラ州及びボルタ州の州栄養士、活動対象地域であるアシャンティ州の州講師が参加しました。

ワークショップではまず、7月に実施したベースライン調査・現状調査の結果を発表しました。(プロジェクトニュース「アシャンティ州でのベースライン・現状調査の実施」参照)この調査結果は、実施ガイドラインや研修内容に取り入れていくとともに、各郡における母子保健や栄養行動の啓発活動のターゲットや重点分野、キーメッセージを検討する際に活用することになります。

次に、GHS栄養課課長が、栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(NCSRC)の実施ガイドライン第1稿の概要を説明し、参加者全員で確認・修正作業を行いました。この実施ガイドラインには、栄養カウンセリングサービスの概要、母子保健サービス(妊婦健診、乳幼児健診)に組み込まれる基礎的栄養カウンセリングの実施手順、コミュニティ活動の実施概要、リスペクトフルケア概要、メンタリング・スーパービジョンの方法等が記載されています。併せて、研修講師用ガイドと研修教材の見直し作業も行いました。研修参加者が、限られた研修期間中にコンセプトを理解し実践に移せるよう、栄養カウンセリングやリスペクトフルケアに関しては、講義型の研修を短縮し、ロールプレイやディスカッションといった参加型アクティビティを多く取り入れることにしました。

今回、これらの作業を通し、これまで議論を重ねてきた「栄養カウンセリングサービス(NCS)」の全容がより明らかになりました。そして、1)栄養カウンセリングの強化が主要な目的であること、2)コミュニティ活動を含むことから、これまで使用してきた「クリニック」より「サービス」という名称が適当であることを踏まえ、名称を「栄養カウンセリングサービス(NCS)」に変更することになりました。

郡講師育成研修実施

2019年9月24~27日の4日間、同じくアシャンティ州クマシにて郡講師育成研修を実施しました。本研修には、対象11郡から、保健師、栄養士、助産師等33名が参加しました。彼らは郡講師として郡内のすべての保健医療従事者に母子手帳、栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(NCSRC)研修を実施することとなります。

講師研修は、1.5日の母子手帳研修、1.5日の栄養カウンセリングサービス・リスペクトフルケア(NCSRC)研修および0.5日の郡研修計画策定の構成で行われました。半日の病院実習を含み、母子手帳の正確な記録方法、身長・体重計測方法、栄養カウンセリングの提供方法について学びました。

新しい項目である、栄養カウンセリングサービス(NCS)については、最初に目的、個人及びコミュニティレベルでの活動内容、実施体制等を紹介しました。栄養カウンセリングサービス(NCS)では、個人(妊産婦及び子ども)レベル及びコミュニティレベルの活動の両方に3A(1.Assessment(評価) 2.Analysis(分析) 3.Action(実行))ステップを採用し、その過程を通じて個人・コミュニティレベルでの栄養行動を継続的に変容させていく手法をとることが説明されました。次に、3Aステップに基づき、妊婦と子どもの栄養状態をどのように調べ(Assessment)、妊婦の貧血や子どもの低体重をどのような基準で判定し(Analysis)、フォローアップや搬送・紹介等、程度に応じてどのような対応をするべきか(Action)の内容を記した手順表についても説明しました。その上で、既存の妊婦健診や乳幼児健診といった母子保健サービスの中に、栄養カウンセリングを組み込んでいくためにはサービスの現場でどのような工夫が必要であるか、栄養カウンセリングを含めた健診の一連の流れをスムーズに進めるためには、限られた診療スペースをどのように活用していくべきかについて、郡ごとに話し合い発表しました。

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月齢別の離乳食に関するグループワーク

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母子手帳記入の練習

リスペクトフルケアについては、WHOやガーナ保健省が作成した、ケアの質に関する基準や患者憲章等、リスペクトフルケアにかかわる既存文書を確認しました。その後、参加者があらかじめ作成されたシナリオを用いてカウンセリングのロールプレイを行い、それを観察した参加者が良かった点、改善点を挙げました。保健医療従事者が、妊婦に自己紹介をしているか、必要な情報を提供しているか、プライバシーに配慮しているか、ロールプレイを観察し、ポイントを挙げていくことで、学んだことをどのように実践に移していくかを、具体的にイメージできるようになりました。さらに、「上司や同僚が、患者に不適切な態度で接していたらどうするか。」、「あらゆることに不平・不満を言う患者、医療指示を守らない患者にどのように対応するか。」といったテーマについてのグループディスカッションも行いました。参加者は、自らの経験を振り返りつつ共有し、非常に活発な議論が展開されました。

母子保健サービスのあらゆる局面でリスペクトフルケアは必要ですが、特に栄養カウンセリングにおいては、「母親から事情を聴きとって」「母親が納得できる解決策を母親と一緒に探し出す」ために、リスペクトフルケアが重要な役割を果たします。そこで、プロジェクトでは、栄養カウンセリングサービス(NCS)とリスペクトフルケア(RC)と母子手帳の基本的な使い方を融合させた研修を実施することになりました。

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ロールプレイ準備

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ヘルスセンターでのカウンセリング実習

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ヘルスセンターでの身長計測実習

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成長曲線への記入法の実習

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11郡保健局長へのオリエンテーション

最終日の4日目には、郡ごとに、日程、参加者、実施場所等、研修実施計画を話し合うグループワークを行いました。また、この4日目のプログラムに並行して、郡において栄養カウンセリングサービスを確実に導入していけるよう、11郡の郡保健局長へのオリエンテーションを実施しました。オリエンテーション終了後には、郡保健局長が研修会場にいる研修参加者に合流し、今後の研修実施方法を一緒に確認しました。ここで作成された郡からの実施計画書をもとに、今後の研修の進め方を決定していきます。

これからの活動

10月からは、いよいよ11郡での保健医療従事者研修が始まります。11郡での活動を通して、保健医療従事者が母子手帳への記録だけでなく、栄養カウンセリングや小児の身長測定といった新しいサービスを確実に提供できるようになるよう、質の高い母子継続ケアが促進されるよう、そして栄養カウンセリングサービスを通し、妊婦、母親、子ども達がより健やかな毎日を過ごせるようになるよう、カウンターパートとともに活動を進めていきます。