知識創生(KCCP)プログラム(国別研修-インドネシア)日本における再生プラスチックを含む食品接触部材の安全管理体制について

2019年11月1日

2019年10月14日~26日

インドネシア政府機関Badan POMの加工食品標準化局(SPO)の職員4名が、食品接触材料(FCM)に関する日本の安全規制や再生プラスチックの安全管理などについて学ぶため、標記KCCP研修プログラムに参加しました。

FCMの管理体制(研修1日目および3日目)

日本のFCMの規制制度は、歴史的に政府と民間の機関によって構築されてきました。厚生労働省は食品衛生法(1948年制定)に基づき、FCMを規制してきました。いわゆるネガティブリスト制度は、規格として定められた最低限の要件を守ることが求められていました。また、1973年に設立された業界団体である日本衛生オレフィン樹脂工業会(JHOSPHA)は、FCMの安全性に対する世界市場の信頼性に応えるため、認証を含む任意のポジティブリスト(PL)制度を運営しています。この度、厚生労働省は、有害物質を効果的に禁止するため、食品衛生法を改正し、公的なPL制度を導入しました。改正法の完全施行は2020年に始まり、内閣府食品安全委員会(FSCJ)によるリスク評価を受け、リストアップされた物質のみの使用が義務づけられる予定となっています。また、業界におけるGMPの運用や、FCM取引・提供者、メーカー、ユーザー間の情報交換の強化、FCMにおける許可された物質のみの使用が求められています。新PL制度については、2017年に厚生労働省から業界に対してFCMの安全管理に関する指針が示されました。FSCJは、同制度で許可される新規物質の評価について、2019年5月に公表されるガイドラインを用いて、一貫したリスク評価手法を適用していく準備を進めています。一方、JHOSPHAは、安全かつ許可された物質のみが市場で利用されていることを証明するために、独自のシステムを実施することに引き続きコミットしています。

3日目は、食品包装会社(メビウス、東洋製罐)、食品メーカー(食品包装のユーザーとしてキユーピー)を訪問し、産業界のGMP運用を視察しました。また、関係者間の情報交換を通じて、JHOSPHAの民間PL制度と公的規制の両方への適合性を業界がどのように証明しているかを学びました。

食品包装用プラスチックのリサイクルについて(研修2、4、5、及び6日目)

1995年に施行された「容器包装に係る分別収集および再商品化の促進等に関する法律」では、3R政策(リデュース、リユース、リサイクル)と持続可能なリサイクルシステムに関して、産業界、地方自治体、家庭の役割を明確に定めています。また、FCM用PETを含む再生プラスチックの安全な製造のために、3つのガイドラインが適用されています。厚生労働省は、2012年に「再生FSMに関するガイドライン」を発行しました。科学者、行政、産業界の間で長い対話のプロセスがありました。1980年末に再生プラスチックの安全性に関する研究が開始され、多くのデータや報告書が発行されました。厚生労働省では特にPETのリサイクル、安全管理について学びました。FCM用の安全な再生プラスチックの管理のために、産業界主導の民間ガイドラインが利用されています。PET協会ガイドラインPETトレー協会ガイドラインといったPETの製造・使用に関するガイドラインを事業者が策定しています。

サントリーやコカ・コーラなど、大手飲料メーカーが率先して再生PETを飲料に使用しています。再生PETボトルは、公的な規制だけでなく、上記のPETボトル規格に適合している必要があります。PETの持続的なリサイクルには、リサイクル法の方針に従って、自治体による消費後のPETボトルの選別・回収システムが非常に重要です。参加者は、総合的なモジュールでシステム全体がどのように機能しているかを学ぶために、地方自治体を訪問し、廃棄物処理施設を見学しました(5日目)。

また、消費者関連NGOとの対話も行いました(4日目)。持続可能なリサイクルのためには、家庭からの廃棄物の分別・回収を適切に管理することが不可欠です。PETボトルのリサイクルは、1990年末に施行されたリサイクル法に基づき、自治体が回収する消費後のボトルに大きく依存しています。地方自治体の役割は、消費者である家庭に対する啓発活動をおこなうことです。また、リサイクルシステムを成功させるためには、地域社会における機能的な分別収集システムが不可欠であり、消費者の参加が根幹となっています。

ペットボトルのリサイクルのほかに、食品トレーの工場も見学しました(6日目)。この工場では、食品トレーのFCM用にPETとPSをリサイクルするための市場ベースの回収システムを独自に発展させています。この工場は、持続可能なPETトレーのリサイクルに投資しています。このPETリサイクルも、PETトレー協会が制定した自主基準に従って、業界主導のアプローチを実施し、成功しています(5日目)。

最終日(7日目)には、振り返りのセッションが行われました。ジャカルタと東京をテレビ会議システムで接続し、学習したことの総括と、より深い対話を行いました。Badan POM、JICAプロジェクト事務所、JICAインドネシア事務所の関係者がスカイプを通じてセッションに参加しました。

日本における食品リサイクル包装は、政府の法律と業界の自主基準によって規制されています。ペットボトルは、洗浄後、キャップやラベルを分離して、自治体やミニ市場、回収業者によって分別回収されています。日本のゴミ箱は、可燃物、不燃物、缶のみ、PETボトルのみ、瓶ガラスと区分けされています。

2001年、PETボトルリサイクル推進協議会は、リサイクルボトルのルールを「透明ボトル本体のみ(無着色)」「ボトルへの直接印刷禁止」「手で剥がせるラベルに変更」と定めています。

まず、食品衛生法第16条および第18条に基づく厚生労働省告示第370号により、食品接点材料に関する基準および規格を遵守する目的で、2012年4月27日に「食品用器具、容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針」が施行されました。

2つ目のガイドラインは、2016年3月1日に設立された「PETボトルリサイクル推進協議会」が施行した「指定PETボトル自主設計ガイドライン」です。こちらは最初のガイドラインよりも厳しい内容となっています。

3つ目は、2002年に日本PETトレー協会が施行し、2015年に改定された、再生トレーの安全性に着目した「自主規制基準」です。PETトレー協会は、現在のところは再生PETの使用を間接的な食品接触のみに限定し、将来的には直接の食品接触を可能にすることを視野に入れ、この基準を見直すことを想定しています。

日本における廃棄物管理の普及は、1997年に環境省が制定した「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(以下、容器包装リサイクル法)以来、20年以上にわたって進められてきました。

インドネシアにはPETボトルの回収システムがないため、日本からそのシステムを学ぶことができました。日本からの研修で得た多くの経験や知識は、NADFCの能力向上や食品接触材料管理システムの改善、特に食品包装リサイクルに関するガイドラインの改善にインドネシアで活用することができます。環境政策に関するJICAプロジェクトが環境林業省で進行中であり、環境の持続可能性の観点からPETリサイクル政策に取り組む可能性があることが指摘されました。

インドネシアで廃棄物管理を始めるにあたり、日本と同様に、家庭や学生への普及活動、環境省や関連機関との連携、スーパーマーケットなどの食品小売業者や産業界との連携が必要であることがわかりました。

セッションは加工食品標準化局のSutanti Siti Namtini氏がオンラインで参加し、インドネシアと日本の協力関係の継続を期待する旨を閉会の辞で述べました。最後に、北岡伸一JICA理事長による修了証が各研修生に授与されました。

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厚生労働省食品基準審査課 課長補佐 横田栄一氏(左から3人目)

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内閣府食品安全委員会(FSCJ)事務局 評価第一課 器具・容器包装担当中元昌広氏(右から3番目)

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FOOCOM代表の森田満樹氏(右から2番目)

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国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)上席客員研究員の河村葉子氏(前食品添加物部長)(右から3番目)

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ポリオレフィン等衛生協議会(JHOSPHA)企画・政策部長の津森学氏(中央)及び、同技術顧問の林田晴雄氏(左から3番目)

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最終発表会には、Badan POMのSPOオフィスからもオンラインで参加し、発表の後活発な討議が行われた。

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加工食品標準化局ディレクターのSutanti Siti Namtini, Apt.博士(中央)、食品安全標準化局担当主任のDra. Deksa Presiana, Apt, M.Kes(左)、JICAプロジェクト事務所代表/医薬品の安全に関する専門家 佐野喜彦氏(右)