ゴビ砂漠でフィールド調査−マダニのお話その2

2017年8月2日

しばらく時間が空いてしまいましたが、前回のニュースの続きです。マダニ収集と遊牧民を回って家畜の血液サンプルを収集する疫学調査を兼ねて、プロジェクトチームはゴビ砂漠が広がるモンゴル南部にやってきました。疫学調査はこのプロジェクトの活動の要の1つで、モンゴル全土に散らばる家畜の血液サンプルを集め、主にトリパノソーマ病とピロプラズマ病の分布状況を把握するのが目的です。採取した血液サンプルは、獣医学研究所の実験室に持ち帰り、どこでどのくらいの家畜が病気に対して陽性なのか調べます。この結果は、今年度発行される疫学調査マップのデータや簡易迅速検査キット(ICTキット)の開発に生かされます。

疫学調査の話はここまでにして、メインのマダニのお話を。この時期、家畜がマダニに刺されることは遊牧民にとっては当たり前で、マダニに刺されたからと言って全ての家畜が病気になるわけではないので予防の意識は低いそうです。そのためか、訪れた多くの農場で家畜からマダニが見つかりました。ただマダニに刺された皮は革製品として使い物にならなくないか低品質とみなされるため、例えば海外ブランドの原材料として輸出したくとも、皮の品質が低いため高価格では売れないんだそうです。今後モンゴルの皮の品質を向上させ革産業を発展させるためには、マダニに対する遊牧民の意識から改革しなければならなくなるでしょう。

また運悪く病気に罹り、持ち主から遠く離れた場所で悪化してしまった家畜は、持ち主の知らないところで日に日に弱り、治療を受けることもなくただただ死ぬのを待つ運命となります。次回は、そんな運命にいた家畜と出会ったお話です。(つづく)

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採取したマダニ

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マダニに咬まれているラクダ

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薬品を振りかけ治療中