卒後臨床研修の開始を想定し、本邦研修が実施されました

2018年6月11日

5月28日から6月8日、奈良県の研修病院を中心に本邦研修が実施されました。

わたしたちのプロジェクトの本邦研修は今回で4回目となります。これまでの研修では、モンゴルにおける卒後研修制度を作ることに対する学びを深めることが目的であったことから、厚生労働省や研修制度を管理する組織を中心に日本の卒後臨床研修の制度を学ぶ研修が組まれていました。そのおかげもあり、モンゴルでは卒後臨床研修の制度設計が為され、研修実施に必要な研修指定病院や指導医に必要とされる要件を定めた大臣令が発令されました。そして、いよいよ2018年10月から卒後臨床研修が開始されようとしています。

そこで今回の研修は、実際に卒後臨床研修を病院内で実施するために必要な研修プログラムの内容や研修医を指導する現場での指導内容を学ぶこと、そして研修プログラムを継続して改善するために必要となる仕組みについて学ぶことを目的に、本邦研修が企画されました。研修先に指定された奈良県には、日本の卒後臨床研修制度のモデルにもなったと言われる、40年以上の歴史のある研修病院があります。また、かつて医学生から研修先として人気のなかった病院が、行政が主導する県全体で研修病院が連携する取り組み、また個々の研修病院における研修医のニーズを重視した改革などが功を奏し、今や研修先として最も人気の高い県の一つとなりました。

ウランバートルの研修病院の研修部スタッフ、2018年10月から研修を開始する予定の病院の研修部スタッフ、そして保健開発センターの卒後研修担当者からなる研修員たちは、まず奈良県庁にて県の医療人材確保、育成に関する政策について話を聞きました(図1)。その後県内唯一の医学部である奈良県立医科大学(図2)、県内の研修基幹病院の一つである奈良県総合医療センターを訪問し、県全体で考えられている研修医育成の取り組み、各病院で実施されている研修医のニーズに合わせた研修プログラム改善の取り組み、また研修プログラムを管理する研修センターの業務内容などについて学びました。さらに、天理よろづ相談所病院では、研修員たちが研修医に密着し、早朝7時半から始まる症例カンファレンスや夕方18時から始まる勉強会にも参加し、実際の臨床研修の内容を疑似実体験しました(図3)。

本邦研修の最後には、学んだことを今後どのようにモンゴルにおける卒後臨床研修制度に活用するか、行動計画として発表しました。行動計画に含める内容について研修員たちで討議した際は、200枚あったポストイットがなくなってしまうほどのアイデアを出し合い、白熱した議論となりました。その結果産み出された行動計画は、これからモンゴル国内で卒後臨床研修を実施し、さらに自分たちで研修プログラムを改善していくために絶対に必要となる要素が盛り込まれており、本邦研修を企画した際に策定された研修目標が達成されたことが感じられました。

プロジェクトでは、検討された行動計画が実行できるようフォローし、今年秋からの卒後臨床研修開始に向け、さらに支援を続けます。

モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

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図1.奈良県庁で県の医療人材確保・育成政策について話を聞きました

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図2.奈良県立医科大学にて学長(前列右から3人目)と

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図3.研修医が実際に指導を受ける現場を視察(天理よろづ相談所病院)

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図4.JICA関西での修了式後の一枚