指導医講習会の内容をアップデートしました

2019年6月2日

2019年5月27~28日、モンゴルで実施されている指導医講習会(TOT研修)の内容をアップデートするワーキンググループの活動を経て、29-31日に改定された指導医講習会を実施しました。

プロジェクトでは、日本の指導医講習会をモデルにモンゴル版TOT研修を開発し、2016年以来20回以上の指導医講習会の実施を支援してきました。すでに500人を超す指導医がモンゴル全土に育成されており、いまや研修は全てモンゴルの方たちで実施できるようになっています。ただ昨今の医学教育の世界的潮流、また現場の医師のニーズに合わせ、研修内容を改定する必要が生じてきました。そこで、モンゴルにおける指導医講習会の開発、実施に大きく貢献された中島先生を日本から招き、ワーキンググループ活動として内容のアップデートを試みました。

ワーキンググループには12名のコアファシリテーターが集まりました。普段の講習会以外では、別々に活動することが多いファシリテーターたちですが、皆モンゴルの臨床教育を良くしたいと言う熱い思いを共有しておられる方です。最初に、中島先生からアウトカム基盤型教育に関する情報が提供され、2つのグループに分かれて活動しました(図1)。すぐに活発な議論が始まり、限られた時間でしたが、モンゴルにおける指導医講習会の内容を改定するに十分な議論を行うことができました。

29日から実施されたTOT研修では、アウトカム基盤型教育(注)についての理解を深めるだけでなく、現場の指導医にとって重要な、研修医評価法やフィードバックの仕方について、従来のTOT研修よりも時間を長めにとり、ロールプレイも含めて実践的内容を中心に学びました。参加者からは、「研修医指導にすぐにでも役立つ内容だった」との声が多く寄せられ、改定の目的はある程度達成できたことが実感できました。研修内容にはまだ修正が必要ですので、継続してコアファシリテーターの先生たちと協議を重ねる予定です。

プロジェクト活動として残された時間は1年となりました。指導医を300名以上育成するという、当初のプロジェクト目標は既に達成されていますが、より現場の指導医に役立つ研修を提供できるよう、またモンゴルの先生たちだけで内容のアップデートができるようになることも目指し、続けて支援したいと考えています。

モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

(注)研修を修了した時点で到達しておくべき医師としての理想像を定め、そこに到達できるように研修の方法や研修医の評価を行う考え方。従来は研修のプロセスが重視されていたが、最近の世界の潮流はアウトカムが重視されている。

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図1.グループに分かれて協議するコアファシリテーターたち

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図2.今回、新たな試みとして過去のファシリテーター研修受講者を対象にアップデート研修を実施しました。アウトカム基盤型教育について、情報共有を行いました。

【画像】図3.TOT研修の参加者たちと集合写真