総合診療研修を開始予定の施設対象にセミナーが開催されました

2019年6月29日

6月27、28日、保健開発センターおよびオルホン県地域診断治療センター(RDTC)において、総合診療研修を開始する予定となっている施設の研修担当者に対し、研修を開始するために準備すべきことについて学ぶ、セミナーを開催しました。

総合診療研修を提供するためには、まず国が定めた基準に従い研修病院として認可を得る必要があります。また実際に研修を適切に管理・運営するために、研修管理委員会を組織したり、研修プログラムや研修ローテーションを作成したり、様々な準備が必要となります。プロジェクトでは、これまでモンゴル保健省、保健開発センター、またオルホン県保健局やオルホン県RDTCと連携し、これらが適切に準備されるよう支援をしてきました。今後、モンゴル保健省では総合診療研修を提供する施設を段階的に増やしていくことを考えていますが、継続して質の担保された研修施設を増やしていくためには、モンゴル国内の研修施設がお互いに学び合う関係を作ることが役立ちます。

今回は、ホブド県、ウブルハンガイ県、ウムノゴビ県、ドルノド県の各RDTC、またウランバートル市内の2つの地区病院の研修担当者が集まりました(写真1、図1)。まず27日に保健開発センター(ウランバートル)にて、保健省専門官から、総合診療研修の概要について説明を受け(写真2)、もうひとつの総合診療研修実施施設であるチンギルテイ地区病院を視察しました。その後、参加者は夜行列車でオルホン県に移動し、翌28日にはオルホン県RDTCに集まりました。

オルホン県RDTCでは、オルホン県RDTCの研修担当者と保健開発センターの担当官から、研修病院になるために必要な準備のポイント、研修管理委員会の体制や委員会の審議内容、実際に作成された研修プログラムの内容などが共有されました(写真3)。また研修医が行う症例カンファレンスや勉強会に参加し、指導医と研修医が学び合う様子を体験しました(写真4)。さらに院内の視察や連携する研修施設を訪問し、研修環境を実際に見学しました。オルホン県RDTCのスタッフたちは、総合診療研修を開始するために準備に奔走した経験やこの1年間の知見を、自分の言葉で他施設の仲間と共有することができました。

参加者たちは、「研修医を受け入れるために準備すべきことがわかった」、「準備は決して容易ではないが、その必要性がよくわかった」とコメントしていました。そして「ぜひ研修病院同士が連携し、今後も勉強会を実施しよう」との声が上がり、参加者たちが同意する場面もありました。セミナー終了後、参加者たちは再び夜行列車でウランバートルに戻り、それからそれぞれの県に戻る時を控え、最後は皆再会を誓っており、国内各地で総合診療研修を実施していくための、良い関係づくりができたことが伝わってきました。

このように研修病院の研修担当者が集まって研修について学び合う機会は、モンゴルでは初の試みです。今回のセミナーを実施するために、保健省や保健開発センター、オルホン県RDTCの研修部スタッフたちがアジェンダや研修資料を作成し、準備をしました。また、プロジェクトのスタッフたちも移動手段の確保など、裏方として初めてのセミナーを成功させるために尽力しました。皆が「若い医師を育てる」というひとつの目的のもとに協力し合いましたが、保健省や保健開発センター、オルホン県RDTCが先導し、モンゴル国内に「モンゴルの未来に貢献する総合診療医を育てる」という新しい文化が芽生え、広がりつつあることを強く感じました。

今後もお互いが学び合うことが継続できれば、地域を超えて研修の標準化が実現でき、ひいては地域の医療格差の解消につながる可能性があります。今回はプロジェクトが支援してセミナーを実施しましたが、今後はモンゴル内の資源を有効活用し、持続可能な形を構築できるように活動を続けたいと思います。

モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

【画像】写真1. 参加者一同(オルホン県RDTCにおいて)

【画像】図1. セミナー参加施設の位置

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写真2. 保健開発センターにて保健省専門官から総合診療研修の概要について話を聞く

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写真3. オルホン県RDTC研修部部長より「指導医の役割」に関する講義

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写真4. 毎朝実施されている、研修医による症例カンファレンスを体験