初めてのミャンマー保健フォーラム開催

2015年7月29日

2015年7月28、29日の2日間に渡り、首都ネピドーのミャンマー国際会議場IIにおいて「ミャンマー保健フォーラム(Myanmar Health Forum-Investing in Health:the Key to Achieving a People-Centered Development)」が開催され、700名以上の保健セクター関係者が参加しました。本フォーラムは、ミャンマーにおいて、関係者がこれだけ大規模に一堂に会する初めてのフォーラムで、Health Vision 2030(注1)の推進と2030年までにUniversal Health Coverage(UHC)(注2)を達成しようとする国家目標に向けて、保健セクター全体で、これまでの成果を共有し今後のアクションを議論することを目的として開催されました。

(注1)ミャンマー政府が2000年に発表した長期保健政策で、(1)国民の健康状態の向上、(2)感染症対策、(3)新興疾患対策、(4)保健サービスが国中に行き渡ること、(5)人材育成、(6)ミャンマー伝統薬の活用、(7)医学研究推進、(8)必須医薬品、伝統医薬品の質と量の確保、(9)保健システム強化、の9つの目標が掲げられています。

(注2)ユニバーサルヘルスカバレッジ(Universal Health Coverage, UHC)の達成とは、「すべての人が、必要な保健医療サービスを支払い可能な費用で持続的に受けられる状態」になることです。

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本会合会場の様子

保健計画に関する分科会の開催

本フォーラムは、3つの全体会合と8つの分科会からなり、プロジェクトは、保健計画に関する分科会「Parallel Session Part 2:Advancing health reforms-planning for UHC, Session 4:Planning for the future」の企画と運営を担当しました。フォーラム開催の決まった本年5月から、保健省のセッション担当課長と共に、セッションの目的及び内容構成の検討、司会者、発表者、討論者の選出・各種調整を進め、当日はセッション全体の実施調整を行いました。本セッションは、今年が国家保健5ヵ年計画(2011-2016)の最終年度であり、現行計画の評価及び次期計画の策定という重要なタイミングであることから、国家・州・タウンシップ保健計画の現状を分析し、あわせて次期保健計画の策定と、実施、モニタリング・評価、保健計画改定のプロセスがどのようにマネージされるべきかを討論することを目的としました。司会者からのセッション概要説明の後、保健省、州公衆衛生局、タウンシップ保健局の発表者による保健計画の現状に関するプレゼンテーション、保健省、UNDP、JICAの討論者からのコメント、そして質疑応答の流れで進行しました。登壇者からは、限られた保健人材に多くの過剰な業務負荷がかかっていること、地方分権化の遅れ、保健データの不十分な活用、セクター横断的なアプローチの不足などの課題が挙がり、セッションのまとめとして、(1)保健計画マネジメント能力、保健情報システムの強化、(2)州、タウンシップ保健計画に関する適切なガイダンスの整備、(3)内外の開発パートナーとの協調促進のためのミャンマー保健セクター調整委員会(M-HSCC)(注3)の機能強化、(4)十分なキャパシティビルディングを伴った段階的な地方分権の推進、の重要性が提言されました。セッション会場は、保健省や地方保健行政機関の職員、開発パートナー機関関係者等70名以上の聴衆を迎え、参加者からは「次期保健計画の作成時期に合わせたタイムリーなテーマ」との評価を得るなど成功裏にセッションを終了することができました。

(注3)ミャンマー保健セクター調整委員会 Myanmar Health Sector Coordination Committee (M-HSCC):保健セクターにおける調整機関の役割を果たす目的で2012年に設置されました。

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前日の最終打ち合わせ

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分科会の様子

プロジェクトブースの設置

会場入り口には、保健省各局、全国15の州保健局及び開発パートナーのブースが設置され、それぞれが活動内容を展示、紹介しました。JICAミャンマー事務所と当プロジェクトは、2つ分の大きなブースを設置し、JICAのミャンマー保健セクター支援と保健システム強化プロジェクトの活動内容について、展示を行いました。プロジェクトでは、プロジェクト目標や保健計画に関するプロジェクトのビジョンを掲示するとともに、3月に実施した国別研修、7月に開催した第1回プロジェクト合同委員会会議、カヤー州における新生児ケアとマネジメント研修、四半期調整会議といった活動の写真を展示、紹介するとともに、日本がどのようにUHCを達成したかを示すDVD「Protecting People's Health-Universal Health Coverage in Japan(注4)」も放映しました。初日には、副大統領がブースを見学し、2日間で250名以上の方がブースを訪れました。

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ブースエリアの様子

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プロジェクトナショナルスタッフが、来訪者一人一人にプロジェクト内容を説明しました。

フォーラムを終えて

フォーラムの最後には、(1)UHC達成に向けたマルチセクターアプローチ、(2)保健サービスの質とアクセスを確保するための保健システムの早急な強化、(3)保健財政システムの一層の強化、(4)その土地のニーズに応じた意思決定ができるよう、地方分権化推進、(5)保健セクター事業を体系的に統合する国家保健政策のための政策対話推進、の5つの必要性が関係者で合意されたことを示したコミュニケが配布されました。そして、保健セクターへの投資は、人々の健康、延いてはミャンマーの持続的な経済発展に資することが強調されました。保健セクター関係者は、UHC達成に向け、今後更なる努力を重ねていくこととなります。

本フォーラムは、初めての開催でありながら、準備期間が2ヵ月と非常に短く、手探りかつ大急ぎで準備を進める日々でしたが、JICA本部、ミャンマー事務所、関係者の方々からお力添えいただき、何とか分科会の開催、ブースの設置にこぎつけることが出来ました。この過程において、保健計画についての関係者と相互理解を深められたこと、カウンターパートとの関係構築を図れたことは、プロジェクトにとって重要な一歩となりました。