第2回国別研修を実施しました。

2015年9月21日

2015年9月5〜20日の2週間、国別研修「保健計画マネジメントと保健医療サービス向上研修」を実施し、保健省職員4名、カヤー州公衆衛生局及び保健サービス局職員4名、合計8名のプロジェクトカウンターパートが、日本を訪れました。

この研修は、1)保健計画の策定及び実施管理、2)保健医療サービスの質とアクセスの向上にかかる行政、医療機関、地域社会との連携、の2点について、日本の知見を共有すること、そして今後のプロジェクト活動への活用を検討することを目的として実施しました。今回の研修では、厚生労働省、国立保健医療科学院、板橋区役所/保健センター、板橋区医師会、東京都健康長寿医療センター、介護施設クローバーのさと、長野県庁、佐久保健福祉事務所、佐久総合病院を訪問し、講義、視察の機会を得ることができました。

保健計画の策定及び実施管理

プロジェクトでは現在、国レベル、州レベルの保健計画管理能力強化に向け、活動を進めています。そこで、国立保健医療科学院では、保健計画の立案の方法や、科学院が実施している地方の保健行政職員を対象とした保健計画管理業務の研修プログラムの企画と運営の方法について講義を受けました。

また、厚生労働省、東京都板橋区役所、長野県庁、佐久保健福祉事務所といった保健行政機関を訪問し、国、県、市町村(区)の各レベルにおける保健計画の策定と実施管理の実際について学びました。厚生労働省では、地域医療における計画の概況とその方針について説明を受けました。そして、板橋区と長野県では、この厚生労働省が示す国の方針に基づき、地域の実情に合わせて策定した各保健計画について、説明を受けました。例えば、板橋区では、区民一人一人の健康づくりと区民全体の健康を支える環境づくりを通して健康長寿の延伸を目指す「いたばし健康プラン」を策定、実施しています。また、長野県では、「しあわせ健康県」実現のための活動の一つとして、健康づくり県民運動「信州ACE(エース)プロジェクト」を策定、実施しています。このように、訪問した板橋区と長野県それぞれで、長期的視野に立って包括的な計画を策定、実施していること、さらに運動・検診・食生活等について、住民に分かりやすい具体的な目標を立て計画の実践に取り組んでいることがカウンターパートの関心を引き、両研修先で、カウンターパートからは多く質問が飛び交いました。

保健医療サービスの質とアクセスの向上にかかる行政、医療機関、地域社会との連携

実はミャンマーも社会経済の急激な変化に伴って、成人病が深刻な健康問題になってきており、さらに高齢者の医療も近い将来重要な課題なってくるといわれています。一方、超高齢社会である日本では現在、厚生労働省が、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される地域包括ケアシステムの構築を推進しています 。今回の研修では、地域の保健医療サービス提供の具体的な取り組みと行政、医療機関、地域社会の連携を知る一例として、日本の高齢者医療の仕組みをテーマとして取り上げ、東京と長野県の行政機関と医療・介護施設を訪問しました。
東京では、行政機関である板橋区役所、高度専門医療を提供する東京都健康長寿医療センター、入所・通所・訪問と種々のサービスを提供する複合型介護施設クローバーの里、医療連携を推進する板橋区医師会を訪問し、板橋区が推進する「いたばし版地域包括ケアシステム」を、行政、医療、介護、連携の各視点から学びました。
一方、長野県では、地域に根差した保健医療サービス提供のシステムを知るため、佐久総合病院とその分院を訪れました。佐久総合病院では、70年以上に渡り、「農民とともに」の病院理念のもと、医師が積極的に村に出向き住民の生活を知り、病院祭等の文化活動を通した健康教育を行っています。医療者自らが健康教育のために芝居を演じる病院祭は、同じ医療者であるカウンターパートにとって、非常に印象に残るポイントとなったようです。また今回、病院側の細やかな調整により、実際の訪問診療現場への同行がプログラムに組み込まれました。訪問診療に出かける際、ミャンマーからの参加者は二人ずつのグループに分かれ、少々不安そうな顔していましたが、数時間後には、目をきらきらさせて帰ってきて、それぞれの体験を興奮気味に報告しあっていました。訪問診療の際の医師と患者さん、さらにその家族との関係性がとても緊密である様子をみて、医師としての姿勢を見直すきっかけになったとの感想が聞かれました。

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毎週、研修内容の振り返りワークショップを実施しました。

研修を終えて

2週間の間に12か所の施設をめぐる欲張りな国別研修となりましたが、カウンターパート8名全員、全研修日程を無事終えて、研修修了証を受け取りました。研修の振り返りセッションでは、カウンターパートから、「長野県の信州ACEプロジェクトを、ミャンマーでも是非実施してみたい。」「保健教育の一環として、佐久総合病院の病院祭を、自分の病院でもやってみたい。」等の感想が聞かれました。今回学んだことを、一つでも多く実践の場に活かしていけるよう、彼らともにプロジェクト活動を続けていきます。