病院情報管理システム強化に向けた再教育研修

2017年9月21日

病院では、疾病ごとの死亡率、有病率といった疫学統計の分析に用いられるデータから、外来患者数、入院患者数、平均在院日数といった病院管理にかかるデータまで、様々なデータが集められ、病院運営や患者の診療管理、さらに国全体や地域ごとの疾病対策や医療機関の設置、人材の配置、それらの予算確保の検討に利用されます。

ミャンマーには、中央の大規模専門病院から地方の診療所まで1,100か所を超える公立病院があり、それぞれの病院は、これらのデータを毎月決まった様式の病院レポートとして集計して、保健スポーツ省に提出しています。各病院ではレポートを取りまとめる際に、診断名を国際基準に沿って病因、死因別に区分できるよう、世界保健機構(WHO)が作成したICD(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems) コードに置き換えて記載しています。また、一部の大きな病院〈2017年2月時点で22か所〉では、1996年に導入されたCAMRS(Computer Assisted Medical Record System)というソフトウェアを使ってデータを入力し、CD等でソフトデータの形で報告書を提出していますが、ほとんどの病院では依然として手書きで取りまとめたものを提出しています。手書きの報告書が多いことで、本省でのデータ入力の作業が膨大となり、その結果、国の病院統計年報の作成・発刊が大幅に遅れてしまっています〈2017年9月現在、2015年12月に発刊された2013年版が最新〉。また、それぞれの病院でも、手作業では、月間または年間の疾病の傾向や患者動向をタイムリーに分析、確認することができません。

タウンシップ病院以上の大きな病院では、Medical Records Technicians(MRT)と呼ばれる診療情報管理の担当者が、病院レポートを作成します。全国に200名程度(2017年3月現在)のMRTが働いていますが、経験や研修の受講状況が異なり、報告書の書き方、CAMRSの活用状況、ICDコード付けの理解にばらつきがあります。また、コンピューターがない病院、もしくはコンピューターはあってもCAMRSを操作できるMRTがいない病院も依然として多くあり、こうしたこともミャンマーの病院データ管理体制の改善を遅らせる要因になっています。

そこで、保健スポーツ省医療サービス局は、病院情報管理システム強化に向け、1)既存200名のMRTに再教育研修を実施すること、2)新規に400名のMRTを雇用すること、3)各病院にコンピューターを配置すること、を2017年初頭に決定しました。そして、同年5月、プロジェクトのネピドーチームは医療サービス局とともに、この既存200名のMRTに対する再教育研修を始めました。再教育研修の目的は、全国の病院データの収集・集計の迅速化と正確性の向上です。具体的には、既存のMRTが 1)良質な月例報告書を作成し提出できるようになること、2)CAMRSを活用できるようになること、3)近い将来インターネットベースの報告システム導入に向けて関連する基礎知識と技能を習得すること、を目標としました。

講師養成研修の実施

MRT再教育研修に先立ち、すでに病院現場でCAMRSを活用しているMRT11名を同研修の講師候補として集め、2017年5月8日〜12日の5日間の日程で、講師養成研修を実施しました。この研修は、医療専門用語、ICDコード付け、CAMRSの活用方法を確認するとともに、受講者それぞれが講義案を作成して模擬講義を行う、実践的なものとなりました。2017年度内に計画されている8回のMRT再教育研修は、この11名の講師が2つのグループに別れて交互に担当していきます。

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講師養成研修での講義

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診断名に相当するICD-10コードを探す講師候補者

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グループプレゼンテーションの準備

【画像】講師向け研修修了