州・地域保健計画レビュー調査の実施

2017年11月30日

プロジェクトは、カウンターパート機関である保健スポーツ省が保健計画を適切に管理できるようになることを目指し、様々な活動を行っています。活動を進めていく中で、国家保健計画とタウンシップレベルの保健計画について、様々な枠組みが確認される一方、その中間に位置する州・地域保健計画については、関係者の間で認識の違いがあることが分かってきました。そこで、州・地域保健計画管理の現状はどうなっているのか、本省はどのように州・地域保健計画管理を支援しているのか、今後どのような州・地域保健計画が必要であるか、これらの疑問点を明らかにするために州・地域保健計画のレビュー調査を実施することにしました。調査は元保健省計画局長のプロジェクトアドバイザーの協力を得て、聞き取り作業も含めてネピドーとカヤー両チームの専門家とナショナルスタッフが直接行いました。

本レビュー調査では、1)州・地域保健計画の変遷、地方分権化の現状に関する文献レビューおよび、2)本省職員と、カヤー州、マグウェ地域、エヤワディ地域の公衆衛生局、医療サービス局の局長・職員及び州・地域の社会大臣を含む政府関係者への聞き取り調査、の2つの柱を通して情報を集めました。2016年6月、プロジェクトサイトであるカヤー州から聞き取り調査を始め、同年8月に本省職員およびエヤワディ地域、9月にはマグウェ地域を訪れ、同様の聞き取り調査を行いました。

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カヤー州公衆衛生局での聞き取り調査

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マグウェイ地域政府での聞き取り

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マグウェ地域医療サービス局での聞き取り

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エヤワディ地域公衆衛生局での聞き取り

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エヤワディ地域医療サービス局での聞き取り

この調査を通し、2011年に5か年の国家保健計画(2011〜2015年)が策定されたことに引き続き、2012年州・地域保健計画策定ガイドラインが作成され、州・地域の保健局が5か年の中期保健計画を策定していたことがわかりました。ところが、計画を実施するための予算や人材が十分に割り当てられず、計画通りに活動を実施することができなかったそうです。その後、2015年の保健省再編に伴い、保健局は、公衆衛生局と医療サービス局に分かれ、現在は、州・地域・タウンシップからの提案をもとに、本省の公衆衛生局、医療サービス局が中心になって州ごとの予算配分が決められているそうです。インタビューの中では、現在の仕組みでは、州・地域レベルで中長期の保健計画を策定することは難しいという声が聞かれました。一方、地方の保健行政官からは「私たちが何を実施したいのか、なぜ実施したいのか、どれだけの費用がかかるのかを示すための計画を策定したい。」といった州・地域独自の保健計画への期待も聞かれました。

プロジェクトは、州・地域レベルにおいて、その地域のニーズや様々な事情に合わせた保健計画が策定され、実施されることが重要であると考えています。州・地域保健計画は、国家保健計画を州・地域レベルで実現する活動プランでもあります。また、州・地域保健計画は、その地域のニーズ、事情、利用可能な資源等を考慮し、優先順位を示すためのツールででもあります。

州・地域レベルで保健計画を策定することには、多くの利点があります。実施者である州・地域レベルの職員が自身で策定することで計画への当事者意識が高まります。また、州・地域の職員の間で、同じ目標を共有しているチームとしての意識を高めることが出来ます。そして何より、その州・地域のニーズや事情に合った計画を策定、実施することが可能になります。プロジェクトでは、カヤー州のカウンターパートとともにSpecial Effort 2017を作成し、計画の策定、実施、評価の過程を通した技術協力を行っています。この作成の最初の段階でカウンターパートとワークショップを開催し、組織の目的、理念、理想について話し合いをおこなったところ、彼らの希望、期待が反映された理念が作り出されました。さらに、組織内のチーム意識も高まりました。

最終的には、文献レビューの内容、聞き取り調査の内容を踏まえ、プロジェクトからの提言を含んだ報告書(英語、緬語)を作成し、関係者へ配布しました。保健スポーツ省では、2017年3月に国家保健計画(2017〜2021年)を発表するとともに、州・地域レベルでIntegrated State/Regional Health Plan、タウンシップレベルでIntegrated Township Health Planを作成することとし、本省担当部局より作成ガイドラインが提示されることとなっています。この動きについて、カヤー州医療サービス局長からは、「Special effortの経験を生かして、カヤー州のニーズ、事情に合わせた計画づくりを進めたい。」と心強い一言が聞かれました。これまでプロジェクトが行ってきた保健計画管理に関する取り組みが少しづつ根付き始めています。

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Special Effort 2017