現地普及セミナー(5):病理診断技術

2016年10月3日

病理診断の研修は当プロジェクトの国内協力機関6大学のうち長崎大学が担当し、福岡順也教授が主任指導教員を務めています。長崎大学ではデジタル技術を活用してコンピューター画面を見ながら病理診断を行うデジタル・パソロジーを導入しています。この技術を活用し、複数名で症例の検討を行うサインアウト・セッション(カンファレンス)を毎日実施しており、研修期間中はミャンマー人病理医も参加します。デジタル・パソロジーでは遠隔地から専門医のコンサルテーションが可能となることに加え、若手病理医も多くの症例を経験でき、チームとして病理診断の技術向上が図られるという教育的効果も高く、福岡教授はインターネットで長崎大学とミャンマーを繋いだデジタル・パソロジーを紹介することを企画しました。

病理診断の帰国研修員一人目、ヤンゴン第一医科大学病理学講師のDr. Tin New Ooは2015年末に消化器に関する研修を終了し、2016年1月11日にJICAミャンマー事務所会議室にて普及セミナーを開催しました。帰国研修員二人目のヤンゴン第一医科大学病理学助教Dr. Su Nandar Myintは2016年3月末に乳腺の病理診断に関する研修を終え、7月20日に普及セミナー開催となりました。

この時までには大学のインターネット環境が改善したことで大学構内の会議室にてデジタル・パソロジーの技術を使った普及セミナーの開催が可能となり、学長、副学長、事務長等が揃って開会式に出席しました。数カ月で大学の環境整備の大きな前進です。長崎大学からは福岡教授、唐田博貴研修医、Ruben Groen氏、そして富山大学医学部附属病院 堀隆特命助教の計4名の指導者が本セミナーの支援のために来緬しました。

長崎大学とインターネットで繋いだセッションでは、長崎大学博士課程に留学中のミャンマーからの長期研修員も参加し、双方で画面を動かしながら診断カンファレンスを展開しました。ヤンゴン第一医科大学、第二医科大学、国立衛生研究所(National Health Laboratory)から55名が参加し、デジタル・パソロジーの有用性を十分に認識した様子で熱心に参加されていました。また、参加者のうち15名は検査技師であり、前日にミャンマーの公立・私立病院の病理検査部門を視察した堀特命助教は標本技術改善のためのレクチャーを行い、現場での喫緊の課題への対応策を示しました。

ヤンゴン第一医科大学学長からは、今後2年以内に大学構内に8階建て研究教育センターを建設予定で1フロアは病理学科の占有となるとの説明があり、その展望を踏まえ、セミナー閉会後には第一医科大学主任教授と福岡教授との間でデジタル技術活用に関して熱心な質疑応答がなされました。

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普及セミナー開会式にて挨拶をするヤンゴン第一医科大学学長(左)

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普及セミナーに参加した日本・ミャンマーの教授陣

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帰国研修員Dr. Su Nandar Myintによるプレゼンテーション