ネパールでの地震観測網強化に向けて、新たな地震計を設置しています。

2018年6月15日

2018年5月中旬、ネパールの南側、タライ平野とその近郊にて、地震分野研究者により、来るべき地震発生リスクを測るため、地震計の設置作業が行われました。

この地震計は、小さな振動が感知できる高感度地震計と、大きな揺れでも記録できる強震計の2種類の地震計が含まれ、高感度地震計は地面に掘った穴の中に埋め、強震計は地表に設置したボックスの中に設置します。民家などから離れた屋外に設置するため、電源には太陽光を利用し、24時間365日絶えず地面の動きを観測します。観測されたデータは、携帯電話網のデータ通信サービスを利用してほぼリアルタイムで首都カトマンズにあるサーバーに送信され、サーバー上では他の観測点のデータと合わせて解析することで自動震源決定が行われます。

地震計は、設置後の維持管理を考慮して公立の学校や寺院など公有地の敷地内に設置しています。設置作業は、まず設置場所の測量と整地に始まり、太陽光パネル架台の組み立て、機材を載せる土台のセメント工事、観測装置に電源ケーブルやGPSアンテナを繋げる作業、高感度地震計及び強震計の設置作業、侵入防止用フェンスの設置作業など実に多岐に亘ります。特に、地震計は3次元の揺れを測定するので、東西南北の方位を正確に決めて設置する必要があり、方位磁石を用いて何度も再確認しつつ方位出しをしています。中心になって設置を進めるのは日本からの専門家とネパール側の研究機関である鉱山地質局の職員ですが、セメント工事など人手を要する作業には地元の人の手を借りています。全て屋外での作業となりますが、この時期タライ平野の気温は日中40℃近くなることも珍しくなく、みんな汗を流しながら作業を進めていきます。設置場所が公共の場所であるため、地域の人々や学校の生徒が作業の様子を見学に来て、質問を受けることもあります。2015年のゴルカ地震以降、人々の間で地震への関心が高まっている影響でしょうか、「この装置で地震が来る前に分かるのか、或いは地震が起きた時に知らせるのか」「カトマンズに送られたデータはいつどこで公開されるのか」など、様々な質問が寄せられました。

この地震計はネパールの「中央ヒマラヤ地震空白域」と呼ばれるエリアを中心に合計8点設置されることになっており、これまでに6点の設置が完了しています。ネパールには鉱山地質局が運用する既存の地震観測網などもあることから、将来的にはネパール国内の地震観測網データを統合して活用することで、これまで以上に迅速で精度の高い地震情報を提供できるようになることが期待されています。

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高感度地震計を地面に埋める前の準備作業

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両国の専門家が協力して高感度地震計設置作業を行う

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ボックス内の強震計の方位確認や、ケーブル配線の作業をしているところ

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完成した地震観測点

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子どもたちも興味津々で作業を見守る