本邦研修を実施しました

2018年7月17日

2018年7月9日(月)から17日(火)まで、「日本の水道の運営・維持管理と地下水管理」をテーマとした本邦研修が実施されました。

本研修での学びを通じ、プロジェクト・パイロット州(カッサラ州及び白ナイル州)水公社(SWC)の研修生は、公社運営・維持管理能力強化に係るアクションプランを描きました。

研修の様子は下記の通りです。

1.オリエンテーション、ブリーフィング、JICA本部表敬(7月9日)

本邦研修に参加した研修生は、カッサラ州から州水公社職員2名及び地下水ワジ公社職員1名、白ナイル州からはSWC職員2名をカウンターパート(CP)側と協議して選出しました。また、JICAスーダン事務所よりナショナルスタッフ1名も参加しました。尚、本研修はアラビア語にて実施されました。

入国翌日7月9日(月)のオリエンテーションにおいては、上村総括及び七條副総括によるブリーフィングが実施されました。このブリーフィングで上村総括は、多くの関係者の尽力により本邦研修が実施されることになった背景と、研修に対する真摯な心構えが伝えられました。また、上村総括は研修開始直前に発生した「西日本豪雨」についても触れ、「新幹線で熊本に移動する車窓から、生々しい洪水災害の被害状況とその復興にむけた迅速な対応を目にしていただきたい」と研修員に伝えました。

午後には全員がJICA本部を表敬訪問し、地球環境部水資源第二チームの望戸課長、庄司企画役、村上職員、資金協力業務部の川瀬職員及びアフリカ部鈴木職員と面談をしました。研修員代表であるカッサラSWC職員のバービキール氏からは今回の本邦研修の機会に関して、日本政府、日本国民及びプロジェクト関係者に対する謝辞が述べられました。また、各参加者からは自己紹介、研修参加の目的・目標が述べられました。

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JICA東京、ブリーフィング

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JICA本部表敬

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JICA本部表敬

2.東京水道歴史館(7月9日)

当初、7月15日(日)に予定されていた東京都水道歴史館への訪問は、「西日本豪雨」により広島県尾道市の浄水場訪問がキャンセルになったことから、9日(月)に実施されました。水道歴史館は東京都が江戸時代、近代及び戦後にかけての東京における上水道の歴史及び技術の発展について、パネル・模型・実物を展示してわかりやすく説明している博物館です。研修員は、東京都水道局の広報として水道歴史館が極めて重要な役割を果たしていることに高い関心を示しました。

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東京水道歴史館

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東京水道歴史館

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東京水道歴史館

3.熊本大学(7月11日)

7月10日(火)に研修生は東京から新幹線で熊本市に移動し、翌日11日(水)に熊本大学を訪問しました。午前中は熊本大学理学部の細野准教授、嶋田名誉教授、及びくまもと地下水財団の寺田事務局長から「熊本地域の地下水の概要及び保全事業」について講義を受講しました。受講後、カッサラ州地下水ワジ公社職員のイスハック氏とカッサラSWC職員のサファ氏からは、カッサラ州における地下水利用の現状と本プロジェクトの支援により設置した地下水モニタリングについてプレゼンテーションが実施されました。また、午後からは豊かな地下水に恵まれている熊本市及び周辺の現場を訪問し、熊本市における先進的な水源保全やモニタリングの現状を視察しました。

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細野准教授による講義

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嶋田名誉教授による講義

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くまもと地下水財団寺田事務局長による講義

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熊本県庁前、地下水モニタリング表示施設の説明

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江津湖周辺、芭蕉園

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江津湖周辺での観察

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江津湖の自噴井の観察

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水張事業地区の視察

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熊本大学前での記念撮影

4.熊本市上下水道局(7月12日)

研修生は、熊本市上下水道局の本田氏(経営企画部)、坂口氏(計画調整課)及び熊本市環境局の緒方氏から「熊本市における上水道事業の概要、計画的な配水管更新及び地下水源のモニタリング業務」について講義を受講しました。その後、研修生は上下水道局内に設置されている水運用センターを訪問しました。水運用センターは2015年に更新され、最新の情報処理及び遠隔監視システムを備えています。研修員は、水運用センター内で実施されている無駄のない配水量及び水圧・残留塩素濃度コントロールの方法について熱心に質問を投げかけていました。

午後には健軍浄水場を訪問し、地下水利用と浄水及び配水施設・機材の状況を視察しました。

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熊本市上下水道局による講義

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健軍第5取水井の視察

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健軍第5取水井

5.北九州市上下水道局(7月13日)

午前中、北九州市上下水道局の川嵜氏(海外事業部海外事業課)から「北九州市の海外における技術支援の実績、上水道事業の概要及び広報活動について」の講義を受講しました。川嵜氏からは、「日々、確実に24時間、飲料水を確実に顧客へ届けることが、最大の広報活動である」、また「北九州市は100年以上の歴史を持つ水道局であるが水質が脅かされた時代もあった。100年努力を重ねて信頼を築いていてきたが、信頼が崩れるのは一瞬であると肝に銘じている」等、多くのメッセージが研修員側へ伝えられました。

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海外事業課川嵜係長による講義

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研修員代表の挨拶

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質疑応答

午後は北九州市上下水道局の畑浄水場及び畑貯水池を訪問しました。畑浄水場の岩崎係長からは詳細な浄水プロセスを説明していただき、普段、午後には実施しないろ過施設の逆洗浄の見学についても便宜を図っていただきました。岩崎係長からは「日常を監視・記録することで、施設に異常が起きる兆候を察知することができる」と、日常点検の重要性が研修員に伝えられました。荒牧浄水場長からは、畑浄水場に隣接する畑貯水池の概要説明を受けました。7月7日から8日にかけて降り続いた豪雨時には24時間体制で、貯水池の放水を管理しました。当時の緊張感を交えて、荒牧浄水場長から研修員に対して、水道局が管理する畑貯水池の役割と管理方法について講義を実施しました。研修員は、60年以上の歴史を持つ(1956年竣工)畑浄水場が小規模ながらも、適切な維持管理を継続して、現在も現役の浄水場として使用する北九州市上下水道局の努力・歴史に驚きを示すとともに、その維持管理ノウハウについて熱心に質問していました。

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岩崎係長の説明

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浄水の確認

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着水井の視察

6.TOTOミュージアム(7月14日)

TOTOは、北九州の小倉に1917年に創立された日本を代表する「水まわり関連機器メーカー」であり、世界的にも有名な会社です。この博物館は、TOTOの創立100周年記念事業として開設されました。スーダンでは深刻な水不足や漏水が発生しておりますが、トイレの排水量に関しては未だ15!が基本であり、大量の上水が使用されています。このような現状を改善したいと願っている研修生は、TOTOの先進的な節水型トイレに高い関心を示しました。

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ミュージアムの説明

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TOTO製品の説明

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最新製品の節水型トイレ

7.評価会、アクションプラン発表(7月17日)

7月16日(月)は「海の日」で休日であったにもかかわらず、研修生は翌日のアクションプラン発表会に向けた準備を日本人専門家とともに実施しました。また、プレゼンテーションのスライドを作成する前に、全員で研修内容に関する協議を実施し、学んだ点・今後の方針について意見を交換しました。ここで、上村総括は研修生に対して、実現不可能な長期的アクションプランではなく、より現実的な計画にすることの重要性が伝えられました。その後、上村総括、七條副総括、加賀田専門家及び佐藤専門家の助言と指導により、研修生はプレゼン資料を完成させました。

7月17日(火)には、各研修員による評価会とアクションプラン及び研修全体に関する所感の発表会が実施されました。発表後、JICA東京の小林次長より研修終了証書の授与が行われました。

研修員は帰国後、このアクションプランをもとに活動を開始し、その途中経過は9月にスーダンJICA事務所にて発表される予定です。

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評価会の様子

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意見交換の様子

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アクションプラン発表

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村上職員のコメント

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小林次長から終了証書の授与

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集合写真