ゲジラ州でのベースライン調査結果・その1:戸別調査

2017年2月20日

スーダン国プライマリーヘルスケア拡大支援プロジェクト(愛称:Mother Nile Expansion)は、スーダンの18州のうち3州(ゲジラ州、カッサラ州、ハルツーム州)を対象として、保健サービスの改善に向けた活動を行うことを計画しています。3州での活動内容はそれぞれ異なりますが、活動の中心となるのはゲジラ州で、コミュニティ助産師(注1)などの保健スタッフのトレーニング、コミュニティでの保健活動の推進、病院での5S(注2)活動の導入、保健省職員のトレーニングなどの活動を進める予定です。プロジェクトは、活動の対象地域について詳細な情報を入手し、実施計画を策定することを目的として、ゲジラ州におけるベースライン調査に着手し、2016年12月、すべてのデータ収集を終了しました。

調査の対象地域であるゲジラ州は、人口は約450万人、面積は約28,000平方キロメートル。日本で言えば四国と九州の中間くらいの大きさに相当する広大な州です。ゲジラ州の州都、メダニは人口約220万人の大都市ですが、街には高層の建物もなく、のんびりした雰囲気が漂っています。

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ゲジラ州保健省

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ゲジラの街中のマーケットの様子

ゲジラ州で実施したベースライン調査は、保健施設調査、コミュニティ調査、戸別調査などいくつかのパートに分かれていますが、このうち最もサンプル数が多く、多くの時間を費やしたのは戸別調査です。この調査は、子どもを持つ母親を対象とするインタビュー調査で、妊娠・出産時のケアの利用状況や、栄養、衛生に関する意識などを把握するために実施しました。

調査の結果、多くの興味深いデータが得られました。スーダンでは自宅分娩を選ぶ女性が多く、今回の調査でも59%(サンプル数704)の女性が自宅で出産したと回答しました。このうち94%は、プロジェクトの支援対象であるコミュニティ助産師を自宅に呼んで介助を受けており、コミュニティ助産師が自宅分娩において重要な役割を果たしていることが示されています。

一方、コミュニティ助産師は妊娠・出産に関するケアを提供するのみでなく、コミュニティの女性に対して保健知識の普及を行う情報提供者としての役割も担っています。この点では、残念ながらコミュニティ助産師の活動はまだ十分ではなく、コミュニティの女性の知識も不足しているという課題がデータから読み取れました。保健省は、産前・産後の検診についてそれぞれ「4回以上」受診することを推奨していますが、今回の調査では、産前検診については4回以上の受診率が69%であるのに対し、産後検診についてはわずか14%にとどまることがわかりました。特に、産後検診については十分に理解されていないようで、1度も受診していない人が27%に及んでいました。産前・産後の検診をきちんと受けることの重要性について、正しい知識を広めていく必要があると言えます。

プロジェクトでは、ベースライン調査から得られたデータに基づき、今後予定しているコミュニティ助産師に対するトレーニングの内容を強化するとともに、コミュニティでの保健知識の普及について、効果的な進め方を検討していく方針です。

(注1)スーダン連邦保健省は、自宅分娩の介助者として「コミュニティ助産師(Community Midwife)」の育成を進めています。
(注2)5Sとは、日本の産業界で発展した職場環境改善の手法です。「整理・整頓・清掃・清潔・躾」というサ行(S)で始まる5つの活動が基本となっています。

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コミュニティ助産師(左)と分娩介助キット

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コミュニティの女性たち