国連気候変動枠組条約第24回締約国会合(COP24、カトビツェ)においてサイドイベント開催

2019年10月13日

2018年12月13日(木)、プロジェクトはCOP24日本パビリオンにおいてサイドイベント「東南アジアにおけるNDCの実施・レディネスの促進-地域能力強化と相互協力の役割を中心に」を開催した(JICA-タイ温室効果ガス管理機構(TGO)-海外環境協力センター(OECC)-地球環境戦略研究機関(IGES)で共催)。

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本イベントは、2015年12月のCOP21で合意したパリ協定の実施フェーズへの移行準備が各国で進む中、特に東南アジアに焦点を当てて、各国の気候変動対策の実施のための能力強化の進め方や国際協力の展望に関して、同地域で積極的な活動を展開する主要関係機関を招聘して全体討議することを目的とした。

冒頭、TGO理事長による基調講演では東南アジアにおける能力強化の協力の重要性が強調され、更にTGO局次長より東南アジア諸国の実施能力の強化に向けた努力の実例として気候変動国際技術研修センター(CITC)の機能と実績が紹介された。その後TGOとJICAの共同ファシリテーションの下、次の3つの設問を中心にパネル討議が行われた。
1.気候変動対策の実施能力強化を行う主体は誰か。
2.能力強化のための国際支援・相互連携はどうあるべきか。
3.現在展開される能力強化の結果は応用・実装されているか。

パネル討議を通じて確認された主な論点は以下の通り。
・能力強化は、先ずニーズの把握と評価が重要であり、その取組みは国家から域内協力へ、更には地域間協力へと発展的に展開することが理想的。実施能力の向上は実施を担う各セクターが今後より重要な役割を果たすが、他方で気候変動の国家窓口機関も国内努力の全体進捗管理と成果取り纏めの役割が残り、両者のニーズは異なる。能力強化の具体的な設計に際しては、集中と選択を含めたニーズへの対応に工夫が求められる。
・TGOは南南協力を重視。ベトナム・ラオスとの二国間協力枠組では、政策協議を通じた理解醸成からスタートし、次に実施に関連深い個別テーマ(例:MRV, NDC(注))を選定して制度設計と運用の具体の相互学習を図る段階アプローチを展開している。
・能力強化に向けた域内協力はそれ自体に価値が見出せる。特に東南アジアは多様であるがその中でも各国が相互の背景事情・コンテクストへの理解を進めており、この相互理解に基づいて域内の能力強化が機能する。
・WRI/NDCパートナーシップはNDC実施支援を展開。エビデンスベースの数値目標の策定支援、GHGプロトコルを通じたMRV能力強化等。NDCの実施に際しては、民間の関与が不可欠となってくる。
・能力強化の評価は対象とする階層(国、地方、個人)によって範囲・手法が変わりうるため、容易ではない。ただし現在の能力強化の評価は投入(研修受入人数等の単純なインプット)・プロセスベースのものが主流であり、能力の強化を正しく測るには十分ではない。今後は、能力強化の評価の軸を成果(アウトプット)ベースに移して、新しい方法論を確立していかなければならない。

本イベントは、能力強化に要求されるカバレージや包括性に照らして、地域協力の重要性について再認識が共有され、閉幕した。

(注)NDC(Nationally Determined Contributions)とは、2015年に採択されたパリ協定の実施フェーズにあわせて条約締約国が自らプレッジした気候変動対策の貢献を指し、2030年までのGHG数値削減目標と適応策で構成されることが多い。

開会挨拶:
武内和彦 地球環境戦略研究機関(IGES)理事長

基調講演:
クルジット・ナコンタップ タイ温室効果ガス管理機構(TGO)理事長

パネル討議:
共同ファシリテータ
ジャカニット・カナヌラック タイ温室効果ガス管理機構(TGO)能力開発・啓発局ディレクター
福田幸司 JICA長期専門家・技プロ「東南アジア地域低炭素・レジリエントな社会構築推進能力強化事業」総括

パネリスト
ナタリカ・ニティフォン タイ温室効果ガス管理機構(TGO)副局長
川西正人 国際協力機構(JICA)国際協力専門員
パンカジ・バディア 世界資源研究所(WRI)気候プログラム副ディレクター
加藤真 海外環境協力センター(OECC)主席研究員

閉会挨拶:
村上裕道 国際協力機構(JICA)地球環境部・気候変動室室長