ザンビアの先生たちに広がる‘KYOZAI KENKYU’!-教員養成校で教材研究ワークショップ開催-

2019年1月11日

KYOZAI KENKYU(教材研究)とは?

Ninja(忍者)からKaizen(改善)まで、ザンビアでも多くの日本語が認知され、現地の人々の日常会話で使われています。実は、ザンビアの学校の先生方の間では、日本でも普段の生活ではあまりなじみのない、「Kyozai Kenkyu(教材研究)」という日本語が広まってきています。十数年にわたる日本の協力により、教育現場への授業研究(教員間で授業を公開して意見を交換し合い、よりよい授業のあり方について研究すること)の普及とともに、Kyozai Kenkyuという言葉も現地で使われ始めました。

日本の先生方は、授業準備の時間が十分にとれずに教える内容や方法がしっかり吟味できていないことを「教材研究の時間が取れない!」と表現することがあります。ここでいう教材とは、小学校の算数セットのような教具だけでなく、教科書、学習内容そのもの、それらと関連した日常の現象や話題までも含む広い意味があり、授業をわかりやすく興味深く教えるための材料すべてが教材ということになります。そこには、授業に参加する子どもたちのこれまでの経験や学習、考え方なども含まれます。「教材研究」の意味がとても深く、英訳が難しいため、短くまとまった「Kyozai Kenkyu」という日本語がそのまま使われています。ザンビアの先生方は、その頭文字をとってKK(ケーケー)と呼んだりしています。

しかし、ザンビアの先生方がどこまで教材研究を実践できているかというと、まだまだ改善の余地があり、プロジェクトが解決すべき課題のひとつとなっています。プロジェクトでは、教員養成校の教官と近隣小中学校(協力校)の教員の連携を通したよりよい授業づくりを目指していますが、それが達成できるかどうかは、より深い教材研究を行える人材の育成にかかっていると考えています。

より深く教材研究を実践していくために

先日、プロジェクトの活動として国立科学センターによる教材研究ワークショップが行われました。対象の教員養成校3校で行われ、養成校の理数科教官と協力校の教員が参加しました。算数は「台形の面積の求め方」、理科は「物体の重量が形の変化により増減するか」を題材とし、児童が自らその答えを見つけられるような授業をつくる活動を行い、より深い教材研究を体験してもらうことを目的としました。

国立科学センターの職員が、どのような視点で、どこまで深く教材が精選される必要があるのかを示し、参加者は、実際の児童の動きをイメージしながら、参加者間で活発な話し合いをし、実に楽しそうに教材をあれこれ作成し検討をしていきました。

どのような形やサイズの台形を提示すれば、児童は台形の面積の公式を作り出せるだろうか、重量と形の関係を調べるために、どんな材質の物体をどの重量で配れば、児童は実験を通して結論を導けるだろうかといった、きめ細かな検討がなされ、まさに教材研究が実践されていきました。

1回のワークショップで授業がすぐに改善されるとは限りませんが、参加者が教材研究の深さ、そこで検討すべき視点を知ったことは大きな一歩です。今後も繰り返し教材研究を実践する中で、教官、教員に蓄積されていくものこそが、ザンビアの授業改善へとつながっていくと考えています。

【画像】

スクリーンに映し出される’Kyozai Kenkyu’

【画像】

児童が台形の面積の求め方をどのように見つけるかを検討

【画像】

児童に提示する台形を精選

【画像】

実験で測定する物体の材質、重量を検討

【画像】

実際に行われた授業の様子(理科)