JICA協力隊の人とシゴト
米田 勇太(よねだ ゆうた) さん

米田 よねだ  勇太ゆうたさん

職  種
理数科教師(現:理科教育・数学教育)
派遣国
ラオス
派遣期間
2010年1月~2012年1月
  • グローバルキャリア
  • # 教師 # コンサルタント

銀行員から
国際協力の道へ転身。
ラオスでの協力隊経験が、
今の仕事に繋がりました。

2015.07

応募のきっかけ

一人旅でのフィリピン人の
青年との出会いから、
JICA海外協力隊への
参加と途上国支援を目指す。

学生のころから一人旅が好きで、カンボジアなどを旅するうちに自分が暮らしている環境と開発途上国との違いに純粋に驚きを感じました。そのころから「青年海外協力隊で途上国の手助けをしたい」と思ってはいましたが、自分の力で何ができるかは分かりませんでした。
 銀行に就職して2年目に休暇で訪れたフィリピンで、親切な現地の若者に出会って街を案内してもらい、「ああ、国籍が違う人ともこんなに仲良くなれるんだ」と感動しました。彼は訳あってストリートで暮らしていたのですが、私は彼が「フィリピン人だから」ではなく「仲良くなった友達だから」こそ、なんとかしてあげたいという気持ちが湧いてきました。
 これをきっかけに再び途上国への興味が湧いたとき、協力隊の広告を見かけました。銀行を辞めることを親に反対され、文化や生活レベルの違う途上国で生活できるのかと不安もありましたが、「行きたい」という気持ちが勝り、応募。念願叶って理数科教師としてラオスへの派遣が決まりました。

米田 勇太 さん

現地での活動

生徒のやる気を引き出すよう
授業やテストを工夫。
現地の先生と歩み寄りながら
改善策を示す。

私は公立の中高一貫校に赴任して、主に中学校で数学の授業を担当。現地の授業は教科書を読んだり、板書を写させたりが中心で、生徒に考えさせるというやり方はあまり取っていないようでした。そこで、手作りの教材を使い、問題演習の時間を多くとるなど授業を工夫すると、やる気を見せる生徒が出てきました。生徒の熱心な様子に触れると、自然と「次の授業も頑張るぞ」と力が湧いてきます。教える喜びを日々の活動の中で実感することができました。
 一方、授業中に先生が教室外でお菓子を食べたり、生徒の間でのカンニングが当たり前に行われている状態に戸惑いました。彼らにとってカンニングは「助け合い」であり、悪いことではありません。それでも私は現地の先生に「カンニングをやめさせた方がいい」と伝えましたが、先生たちとの距離がどんどん離れていきました。「自分の価値観をどこまで押し付けていいのか」と、葛藤の連続。
 そこで、もし自分が彼らの立場で、他国から来た先生に「お前の教え方はおかしい」と言われたら?と考え、言葉で否定するのではなくカンニングできないよう隣同士でテスト問題を変えたり、みんなで話し合って問題を解く形式を取り入れたり、テストの形式を工夫するなど、自ら行動を起こすことに。ラオスの先生たちもポリシーを持ち、指導をしてきたはずなので、それを頭ごなしに否定するのは良くないという思いに至りました。そのうち先生や生徒と打ち解け、徐々に歩み寄ることができました。
 生徒たちとの数ある思い出の中のひとつに、任期終了直前に一緒に埋めたタイムカプセルがあります。それを掘り出すのは彼らの卒業時なので、その時は私も学校に戻ってくると約束しました。5年前の自分が書いた手紙を読むことが、何かを振り返る機会になったらいいなと思います。
 さまざまな思い出を心に残してくれたラオス。帰国する時は、心から寂しかったです。

現地での授業風景

帰国後のキャリア

イギリス留学を経て
教育開発コンサルタントに。
今後はJICA海外協力隊での経験を
子どもたちに伝えたい。

帰国後は、さらに教育の知識を深めるためイギリスの大学院に留学。現在は教育分野の開発コンサルタントとしてフィリピンの教育制度改革を支援するプロジェクトに携わっています。
 国籍が違う人と同じ目線で、仲間として活動した協力隊での経験は、開発途上国の人と同じ立場で向き合うことが大切な今の仕事にも生かされています。ラオスを出国する時、現地の友人に「日本人、ラオス人というくくりではなく、人と人との付き合いができたね」と言われたことが忘れられません。

JICA海外協力隊で得たもの

JICA海外協力隊での経験は私を内面的に成長させてくれ、今の仕事にもつながりました。世界は、思ったよりも近い存在です。今後は、私の経験をもとに、日本の子どもたちに「こういう道もあるよ」と提案し、彼らの将来の選択肢が広がるきっかけになれたらうれしいです。やみくもに日本を出ろということではなく、自分の目で見て、何かを感じてもらいたい。その手助けができればと思います。

違う文化や考え方に触れることによる内面的成長

これからJICA海外協力隊を目指すみなさんへのメッセージ

JICA海外協力隊の活動を通じ、自分の人生は自分で決められると実感しました。ただし、周りから反対されて心が揺らぐなら、参加をやめた方がいいとも思います。自分の将来に責任を持ち「人から反対されても行きたい」と思う強い意志がある人には、JICA海外協力隊は絶対に良い経験になるでしょう。

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