所長あいさつ

2022年2月にJICAエクアドル事務所に着任致しました。

皆様はエクアドルと聞いて何を思い浮かべられるでしょうか?日本の多くの方にとって、エクアドルはあまりに遠く、どんな国なのかを想像するのはなかなか難しいかもしれません。それでもガラパゴス諸島や主要輸出品のバナナなどを通じて国名くらいは聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。私自身は、アンデス山脈の中に築かれた首都キトの街並み(1978年に世界で初めて世界遺産に登録されています)に長年、恋焦がれてきました。

この度、JICAエクアドル事務所に所長として赴任することとなり、エクアドルの皆様とともに、エクアドル国の発展に貢献する機会をいただいたことを大変嬉しく感じています。他方、先人の長年の努力によって築き上げられてきた日本への信頼をより強固なものにしていかなくてはならないという責任の重さに身が引き締まる思いです。

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日本の対エクアドル協力は1960年の研修員受入から開始しましたが、JICAがエクアドルに拠点を構えたのは1991年になってからのことです。当時は青年海外協力隊の派遣事業が中心で、日本の協力は規模も内容も非常に限られたものでした。それから約30年が経ち、現在では技術協力のみならず、無償資金協力、円借款など、JICAの支援は様々な協力形態に広がっています。また、近年では、民間企業やNGOの皆様とも協働しつつ、最先端技術の活用から草の根に根差した活動までそれぞれの強みを活かした協力も展開されています。こうした対エクアドル協力の拡大を受け、2018年には支所から在外事務所へと事業を実施する体制も強化されたところです。

現在、対エクアドルの協力方針には「経済基盤整備」「格差是正・包括的な社会の実現」「環境保全・防災」という3つの柱(重点分野)がありますが、いずれの分野においても日本は多くの経験・知見を蓄えてきており、エクアドルの開発課題に大きく貢献できる可能性を有しています。例えば、過去には日本と同じ火山国であるエクアドルに対して火山監視能力の強化に取り組みましたが、この協力により2006年のトゥングラワ火山の大噴火を予知することができ火砕流から多くの人々の命が救われています。

また、最近ではデジタル技術の進歩により、従来では想像もつかなかった新たな形で開発課題に向け様々なアプローチが可能になっています。一時の勢いは無くなっているようにも思われますが、「日本=高品質・先端技術」という評価はまだ根強く、途上国の方とお話をすると、そうした評価に違わぬ協力が期待されていると強く感じます。エクアドルにおいても、こうした日本ならではの経験や技術を活用し、我々にしか出来ない協力を進めていきたいと考えています。

エクアドルは日本の国土の約3分の2、人口も1,700万人程と南米の中では決して大きな国ではありませんが、自然環境や生物の多様性もあり、多くの可能性を秘めた国です。そうした発展の可能性を可能性のまま終わらせず、少しでも前に進めるよう様々な関係者やパートナーと協力し、力を尽くして参ります。

JICAエクアドル事務所
三浦 淳一