所長あいさつ

JICAモロッコ事務所長の伊藤隆司(いとうたかし)です。2021年4月に事務所長として当地に着任いたしました。この機会に皆さまにご挨拶申し上げます。

モロッコはアフリカ大陸の北西端に位置し、ジブラルタル海峡を挟んでヨーロッパと目と鼻の先という地政学的な要衝にあり、伝統的にフランスをはじめとするヨーロッパ諸国と深い関係にある一方、イスラム穏健派としての独自の地位を築いています。近年では2017年にアフリカ連合(African Union:AU)に再加盟し、また同年西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)への加盟申請をする等、仏語圏を中心としたアフリカ諸国との関係を急速に強化し、地域における有力な国として存在感を高めています。

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2011年以降の「アラブの春」に連動した民主化運動に伴い、政情不安や経済停滞といった状況に直面した国も多かったですが、モロッコは国王主導の政治改革により相対的に早期に安定を取り戻しました。地中海に面した街タンジェでは広大なフリーゾーン(工業団地)が開発され、欧米企業や日本企業にとって「ヨーロッパへのゲートウェイ」として有望な投資先としての注目も集めています。首都のラバトや経済の中心地であるカサブランカには都市鉄道(トラム)が通り、タンジェ~カサブランカ間の350kmを2時間強で結ぶ高速鉄道が走り、主要都市を結ぶ高速道路網も整備されています。

こうして順調に発展しつつあるように見えるモロッコですが、大都市と地方部の格差、大部分の耕作地が天水に頼るという脆弱性を抱えた農業、若年層を中心とする高い失業率等の課題を抱えており、そしてそうした課題は過去数十年間、常に話題とされてきました。一人当たりの所得は3000ドルを超えるレベルに達していますが、教育や社会保険といった面での改革も課題とされています。

JICAは従来、基礎教育や母子保健といった分野での技術協力を実施する一方、高速道路、鉄道、灌漑施設、上下水道等のインフラ建設のための資金協力を数多く実施してきました。また大西洋と地中海に面して豊富な漁業資源を有するモロッコに対する水産分野での協力は1970年代以来脈々と続くユニークな歴史を持っています。

JICAは今後モロッコの一層の発展のために何ができるでしょうか。是非皆さんと一緒に考えていきたいと思います。ヨーロッパから少し足をのばさなければ日本からはいけない「ちょっぴり遠い国」ですが、皆さまにおかれましては是非この国に関心を持っていただき、ご協力ご支援を賜りたくお願いいたします。

モロッコ事務所
所長 伊藤 隆司