JICA海洋プラSATREPSサイト(プロジェクトニュース)記事 (2023年9月更新)

熊本大学で化学分析研修(第2回) を実施しました。

2023年7月9日~7月29日に熊本大学理学部で行われたJICA国別研修にチュラロンコン大学の修士課程学生1名が参加しました。この研修は環境試料中のプラスチック添加剤の分析技術を身に着けるもの。今回の研修では特にガスクロマトグラフ質量分析器(GC/MS)による有機系添加剤の測定技術を身に着けました。廃棄物処分場周辺及び海岸で採集した土壌、粉塵、堆積物を用いた実際の測定では、このような媒体に含まれるプラスチック添加剤が、どのように海洋に流出し環境に影響を与えるのかを推測するのに必要な情報の一部が得られました。研修員は分析方法に限らず、研究室のマネジメントや改善に必要なアイディアも得たようで、この研修を引率した中田晴彦准教授大学院生の山原慎之助さんに深い感謝を述べていました。

海洋プラスチック研究合同セミナーとハンドヘルド蛍光X線分析計研修を実施しました。

2023年8月24日にバンコクで海洋プラスチックの合同セミナーとハンドヘルド蛍光X線分析計の使用法に関する研修を行いました。このセミナーと研修には九州大学、熊本大学、鹿児島大学、チュラロンコン大学、プリンス・オブ・ソンクラ大学、ブラパ大学、ワライラック大学、SEAFDEC、タイ天然資源環境省公害管理局、同省海洋沿岸資源局などタイ側、日本側併せて30名の関係者が参加しました。セミナーでは、バンコク近郊の沿岸域で実施中のマイクロプラスチック研究の進捗、サメーサン地区の廃棄物処分場及びその周辺で採集したプラスチック添加剤の化学分析の結果、SNSを用いた市民参加型ゴミ分布調査について、それぞれ九州大学海洋プラスチック研究センター、熊本大学、鹿児島大学の先生が発表しました。タイ側からは、プロジェクトマネージャーがタイ国内の各機関・大学が行うマイクロプラスチックに関する政策・活動について包括的に紹介しました。質疑応答ではプラスチックが与える環境・生物への影響について活発な議論が行われました。また、今後のタイにおける海洋プラスチックのモニタリングについて、統一した分析手法を確立する必要性が確認されました。プロジェクトではこれを機に合同調査を進め、より良い廃棄物管理政策へ向けてアイディアを提供することを目指しています。

海洋プラスチックの流出動態把握に向けた化学分析に資する現地調査を行いました。

2023年8月25日~26日にチョンブリ県サタヒップ郡サメーサンの廃棄物処分場及びその周辺で土壌、道路粉塵、廃棄物の採集を行いました。この調査は熊本大学の中田晴彦准教授が主導し、タイからはチュラロンコン大学の研究者が参加しました。本研究では、試料に含まれるプラスチックの種類・組成及びそれらに添加された化学物質を明らかにし、マイクロプラスチック発生源としての廃棄物処分場の位置づけ、廃棄物がどのような経路・過程で海洋へ移行するのか、海洋生態系への影響はどのようなものかを明らかにすることを目指しています。昨年3月にも同様に採集を行いましたが、今回は特に覆土や降雨がマイクロプラスチックやその添加剤の流出と生態系にどのような効果・影響をもたらすのかに着目しています。今後、分析を進め得られた情報をタイの廃棄物管理に生かす予定です。