ラオカイ省でオーガニック手法を用いたシナモン林の病害虫対策研修を実施しました
2024年6月11日~13日、当プロジェクトが支援しているラオカイ省バオイェン郡ビンイェン地区のシナモン林所有者グループらを対象として、オーガニック手法を用いた病害虫対策研修を実施しました。ベトナム北部では雨季の始まりである5・6月に多くの病気や害虫が発生するため、当プロジェクトが支援するビンイェン地区のシナモン林も被害を受けていました。研修は3日にわたって行われ、初日はラオカイ省の森林保安官約25名、2日目と3日目は農業普及員や対象グループの森林所有者ら50名以上を対象にして進められました。なお、森林保安官や農業普及員は、研修で学んだ知識を担当地域の住民へと普及する役目を果たすため、研修後も研修内容が地域の中で広まることが期待されています。
研修ではシナモンに発生する主な病気や害虫の特徴、ライフサイクル、発生時期、駆除方法などについて講義がありました。プロジェクトが取得を支援しているUEBT認証 1 が生物多様性の保全を重要視していることから、本研修では化学合成農薬に頼らない手法を用いた病害虫対策に重点を置いて説明がなされました。一例をあげると、虫の好む波長の紫外線を用いることで虫の誘因・捕獲を進めるライトトラップの設置や、天敵そのものを用いた生物農薬の利用といった手法が紹介されました。これらの手法は、参加者が身近に入手できる資材を利用して実践することができるため、病害虫に悩む参加者からは、早速試してみたいとの声が聞かれました。なお、生物農薬の利用は薬剤耐性菌が出にくいという観点からも、持続的な対策のひとつと考えられています。
講師は知識を一方的に教えるだけではなく、参加者が自ら考え答えを導くことができるように工夫して研修を実施しました。これまで、参加者は、シナモン林に異変があっても、それが病気によるものなのか害虫によるものなのかが判別できませんでしたが、研修を受けたことによって、それらの違いが少しずつ判別できるようになってきました。また、本研修のテーマが参加者の関心の非常に高いものであることから、講師への質問が相次ぎました。そのため、今後もシナモン林の病害虫の発生で困ったことがある際には、講師に質問できるように、講師と参加者でグループチャットを作り、情報の交換を進めていくことなりました。
今回の研修は、地域で初めてのオーガニック手法を用いた病害虫対策研修であり、森林所有者にとってシナモン林の病気や害虫のライフサイクル等を体系的に学ぶことができる良い機会となりました。プロジェクトでは、対象グループのUEBT認証取得へ向けて、今年中に必要な研修を完了できるように支援を続けていきます。
1 UEBT認証については過去のニュースをご覧ください(https://www.jica.go.jp/oda/project/1941864/news/20240319.html)。
初日に行われた森林保安官への研修
標本を用いながら害虫を確認する講師と森林所有者
ヘルメット・反射ベストはUEBT認証取得(労働者の安全項目)のためにプロジェクトで研修を実施し、供与したもの
生物農薬をシナモン林に噴霧する様子
害虫を採集するためのライトトラップ設置
病害虫の早期発見・予防のための作業