論文掲載 コレラ患者の臨床的特徴に関する解析 ―重症化に関連する因子―
首都ルサカで2023-24年に発生したコレラ・アウトブレイクにおけるコレラ患者の臨床的特徴(患者の医療背景や症状など、医療現場で得られる患者の特徴)に関して、当プロジェクトがザンビア国立公衆衛生研究所(Zambia National Public Health Institute)およびザンビア保健省と共同で解析を行い、その結果を記述した論文2報が米国感染症学会の論文誌であるOpen Forum Infectious Diseasesに掲載されました(小児患者・成人患者に関する論文;成人患者に関する論文はEditor’s choiceに選出されました)。
本論文では、ルサカ市内のコレラ治療センターに入院した小児患者(1,891人)および成人患者(6,578人)の臨床的特徴について解析を行い、入院時の脱水程度や基礎疾患の有無(HIV、糖尿病、重症栄養失調など)が、長期入院や死亡などの重症化に関連していたことが明らかになりました。
これまで、コレラ患者の重症化に関連する因子については、様々な国や地域で調査・報告が行われてきましたが、ザンビアの感染症対策機関では、国内で得られた臨床データや解析事例が不足していることが課題で、ザンビア国内の実情やエビデンスに基づいたアウトブレイク時の症例対応が充分とは言えない状況にありました。本論文により、多くのコレラ患者の臨床的特徴と、重症化に関連する因子に関する知見が得られたことは、今後、基礎疾患など重症化の危険性が高い方に特化した感染予防戦略や治療ガイドラインの構築の一助となることが期待されます。
(謝辞)データ解析や論文作成においては、国立感染症研究所 光嶋紳吾先生、土橋酉紀先生、神垣太郎先生にご指導いただきました。ありがとうございました。