プロジェクトで育成したマスタートレーナーが日本での学びを現場で実践
2026年1月19日~2月3日に実施された課題別研修「UHC達成に向けた看護管理能力向上」に、重点対象病院である Shaheed Suhrawardy Medical College Hospital(ShSMCH)から、シニアスタッフナース兼マスタートレーナー(MT)のNasrin Naharさんが参加しました。
Nasrinさんは、本プロジェクトで育成されたMTの一人です。ShSMCHでは、院内研修の実施や委員会活動などを通じて、看護師の能力向上や臨地実習の質改善に積極的に取り組んできました。今回、日本での研修を終えたNasrinさんから、帰国後すぐにアクションプランの実施を開始したという嬉しいニュースが届き、プロジェクトでインタビューを行いました。
「驚きの連続だった」日本での学び
「日本の病院を訪問できたことが何より印象的でした。あらゆる体制や管理方法がバングラデシュとは異なり、驚きの連続でした。」
そう語るNasrinさん。特に印象に残ったのは、日本の病院における看護師の業務管理の仕組みでした。
「バングラデシュでは、看護師が事務管理に使用できるパソコンが病院に1台しかないことがほとんどです。対して日本では、必要な情報をどこでも確認することができました。また、日本ではスタッフがそれぞれの役職や役割に応じて明確に配置され、さらに一人ひとりの能力に合わせて業務が割り振られていたことにも驚きました。そのうえ、バングラデシュでは医薬品の発注や薬剤保管庫からの受け取りなども看護師が手作業で行う必要があり、看護業務以外の負担が大きくなっています。一方、日本ではこれらがパソコンを活用して効率的に管理されており、とても印象的でした。」
今回が初めての海外渡航だったNasrinさんにとって、日本での生活や、他国から参加した研修員との交流も大きな刺激になったといいます。
帰国後すぐにアクションプランを開始
日本での学びをもとに、Nasrinさんは次の3つを目標としたアクションプランを作成しました。
- 効果的なストレス管理を通じて、看護師の心身の負担を軽減する
- 人員不足の中でも、過重な業務負荷を適切に管理する
- 限られたリソースの中で、効率的かつ実践的な研修を実施する
帰国後、Nasrinさんはすぐに看護部長へ相談し、活動を開始。2月末には看護師同士で話し合う場を設け、業務過多の要因分析や業務配分の見直しについて検討しました。
さらに、日本の病棟で学んだタスク管理方法を参考に、自ら業務割り振りフォーマットを作成。現在、病棟での導入を進めています。今後は、今年9月頃を目途にフィードバックを収集し、改善を重ねながら活動を継続していく予定です。
「MTとしての経験が、自信につながった」
Nasrinさんは、今回のアクションプラン実施にあたり、これまでのMT活動の経験が大いに役立ったと振り返ります。
「MTとして最初に担当したのは、ShSMCHでの第1回臨地実習指導者(Clinical Nurse Teacher: CNT)研修でした。自分たちで研修を実施するのも、人前で講義をするのも初めてで、とても戸惑ったことを覚えています。」
特に印象に残っている出来事があるそうです。
「講義中、緊張して早口になってしまった私に、日本人専門家が何度も “Nasrin, ゆっくり話して。参加者に伝わるようにしましょう!” と声をかけてくれました。」
その経験を重ねる中で、会議の進め方や研修・ワークショップの企画運営、準備のプロセスなどを少しずつ学び、今回のアクションプラン実施にも活かすことができたといいます。
「看護師をリードして会議を行ったり、活動計画を立てたりできたのは、MTとしての経験があったからです。」
仲間とともに続くMTの活動
ShSMCHでは、Nasrinさんを含む4人のMTが協力しながら活動を続けています。
「私たちは毎日のように連絡を取り合い、院内研修や、看護師のための活動について相談しています。MTは正式な役職ではないので業務は増えましたが、同僚の看護師たちが前向きに変わっていく姿を見ることが大きな励みになっています。」
活動を通じて、自身の成長も実感していると話します。
「自分自身の能力が高まっていると感じられることも、モチベーションの一つです。これからも、自分のため、そして同僚の看護師たちのために活動を続けていきたいです。」
看護部長も実感する変化
NasrinさんたちMTの活動を支えてきたShSMCH看護部長のShahnawaz Parveen氏も、院内の変化を実感しています。
「看護部長として、MTが活動しやすい環境づくりを支援してきました。看護師たちの能力向上は目覚ましく、何より、仕事に対してより真剣に、意欲的に向き合うようになったことに驚いています。」
バングラデシュでは、看護師が就職後に実技を伴う研修を受ける機会は限られています。また、看護学生を指導する立場にあっても、指導方法を体系的に学ぶ機会は多くありません。そのような中で、MTによる院内研修やCNT研修の実施は、看護師の能力向上だけでなく、職場環境の改善や看護師自身の自信・責任感の向上にもつながっています。
学びを「現場の変化」へ
日本での研修を終えた直後から、現場で行動を起こしたNasrinさん。その背景には、MTとして着実に培ってきた自信と経験がありました。Nasrinさんのアクションプランは、これから本格的な実践と改善の段階へ進んでいきます。今後も、ShSMCHをリードするMTとして、仲間や病院関係者とともに、看護師の能力向上とより良い看護実践に貢献していくことが期待されます。
これまでのShSMCHでのMTの活躍は次のニュース記事も参照ください:
2024年7月11日「臨地実習協力病院でCNT育成研修を実施しました」
2024年10月31日「研修のその後 -シャヒードスラワルディー医科大学病院での臨地実習の変化-」
日本での研修を修了したNasrinさん。ここでの学びが、その後のアクションプランにつながった。
日本での学びをもとに作成したアクションプランを堂々と発表するNasrinさん
MTとしてShSMCHの看護師をリードするNasrinさん
日本での経験共有に真剣に耳を傾けるShSMCHの看護師たち