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【更新情報】西ニューブリテン州でのリンパ系フィラリア症の予防薬投与第2回目キャンペーンの分析と評価

第2回MDA実施結果

2024年11月~12月にかけて、西ニューブリテン州(以下、「WNBP」)においてリンパ系フィラリア症(以下、「LF」)の第2回集団投薬(以下、「MDA」)が実施され、結果に関する関係者向けの発表会を2025年5月に州都キンべで開催し、これをもって同州でのMDAは完了しました。

同州では、2023年の第1回MDAに続き、世界保健機関(以下、「WHO」)を通じてパプアニューギニア(以下、「PNG」)国に無償提供された イベルメクチン177.6万錠(米国メルク社)、ジエチルカルバマジン186万錠(日本エーザイ社)、アルベンダゾール37.8万錠(英国グラクソ・スミスクライン社) の三種の薬剤(以下、「IDA」)を用いて第2回MDAを実施し、LF制圧に大きく貢献しました。一方、第1回MDAにおいて同時投薬を行った風土性トレポネーマ症(以下、「英名:Yaws」)に有効なアジスロマイシンについては、全住民対象とする薬剤量の調達が実現しなかったため、Yaws疑い症例および接触者に対する限定的な投薬となりました。

実施結果は、妊婦・高齢者・一部乳幼児を除く、州全体の住民約32万人に対して、 IDA服薬人数257,083人(MDAカバー率79%) アジスロマイシン服薬人数22,018人(6.8%)となり州内4エリアすべてでIDAのMDAカバー率は78%~80%と高い水準を維持し、WHOが推奨する65%の目標値を大きく上回りました(表1参照) 。MDAカバー率が高ければ高いほどLFの伝播を防ぎ、LF制圧の可能性が高まります。また、投薬と同時に実施された皮膚疾患系の顧みられない熱帯病(以下、「Neglected Tropical Diseases: NTDs」)を確認するスクリーニングでは、LF疑い164例、Yaws疑い18,334例、疥癬(かいせん、scabies)7,128例が報告され、1回目と同様に多数の皮膚系NTDsの疑い症例が確認されました。

MDAカバー率に関する補足調査の結果と実施に対するフィードバック

2024年末のMDA終了後、翌年2月に州保健局スタッフによってカバレッジ評価調査(Coverage Evaluation Survey: CES)が実施されました。この調査では、州内の26地域において403世帯・2,304人を対象にインタビューを実施しました。「MDA薬剤を服用した」と回答した人の割合は79.1%で、服薬しなかった理由としては、「MDA実施時に不在」(42.0%)、「実施を知らされていなかった」(8.7%)、「チームが来なかった」(0.3%)が主な回答でした。また、「薬剤を受け取ったが服薬しなかった」理由としては、「副作用への懸念」(15.7%)、「十分な情報がなかった」(15.5%)などが挙げられました。

第1回MDA時の調査内容と比較すると、「実施を知らされていなかった」割合は14.2%から8.7%に、「自分の地域にチームが来なかった」は5.0%から0.3%に低下、「副作用への懸念」は65.7%から15.7%へと大幅に減少しました。 これらの変化から、住民への実施周知と服薬へのアクセスの向上、服薬への不安軽減が改善されたと分析されます

2025年5月8日~9日には、州保健局関係者を対象とした、本プロジェクト、保健省およびWHOとの共催によるMDA実施後の結果報告ワークショップ(Post MDA Workshop)をキンベで開催し、本ワークショップでは結果発表に加え、各医療施設代表者によるMDAの地域別のフィードバック共有が行われました。

共通して指摘された課題としては、 一部住民の服薬の躊躇、MDA活動を実施するマンパワー不足、アクセス困難地域の存在、予測が難しい天候の変化(特に天候不良時は、海が荒れやすい)、通信環境の脆弱性、州保健局でのオペレーションコストに対する精算業務の遅延 などが挙げられました。一方で、 集団投薬による費用対効果の向上、皮膚疾患への副次的効果が得られた点など、ポジティブな評価も多く報告されました 。ある医療施設では、 MDA実施期間中に特定したLF症例に対して日常生活に対する助言や患部ケアの指導を行っているとの報告もありました。 また、診断が難しい皮膚疾患に関しては、MDA実施前後の研修にてWHO担当官による症状説明の講義やWHO支援の皮膚疾患のピジン語資料の配布が行われ、医療従事者の知識・スキル向上にも貢献しました。さらに、各医療施設ではMDA実施前の研修が地域ボランティアとスタッフ向けに実施され、疾患に対する対策のキャパシティビルディングと継続的なケア・モニタリング体制の構築が期待されます。

今回のMDAにおいて本プロジェクトからは、主に以下の内容について関係団体・関係者と協働して、各種調整を行いながらLF対策強化にあたりました。

【本プロジェクトによる主な支援内容】

  • MDAの予算・実施計画(マイクロプラン)の策定
  • MDAで使用する物品・燃料等の調達、仕分、配送作業
  • 医療従事者を対象としたMDA実施前研修および実施後ワークショップの開催
  • MDA実施中のモニタリング
  • MDA実施データの集計・分析・報告

今後の予定

同州での今後の活動としては、規定回数のMDA終了を受け、今後半年以上の間隔をあけて、 MDA実施後のLF感染状況を調査するIDAインパクト調査を実施する予定 です。この調査は2025年後半~2026年頃の実施が見込まれており、2年ごとに計3回の調査を行い、すべての回で達成(Pass)することが求められています。

PNGは、WHOの「NTDs制圧ロードマップ」に沿って、2030年までのLF制圧を目指しており、薬剤の服用によってLFの伝播を阻止することが可能であるため、対象地域での活動体制を強化しながら着実に保健省・州保健局が主体となって感染拡大を阻止する活動を進めていきます。

参考情報

関係情報をJICAパプアニューギニア事務所ホームページで掲載しています。

「Official Launch of Mass Drug Administration (MDA) Round 2 in West New Britain Province; The Project for Elimination of Lymphatic Filariasis Phase 2(2024年12月9日掲載)」

「リンパ系フィラリア症のない未来へ:駆虫薬の集団投薬後ワークショップを開催(2025年5月28日掲載)」

タイムライン

2024年7月 第2回MDA実施に関する予算計画の策定
2024年8月~10月 ・薬剤や調達品の輸送、仕分、配送作業
・各医療施設代表者と州保健局職員対象の研修実施
2024年10月末~11月初旬 各医療施設でのMDA実施前研修の実施
2024年11月 ・MDAローンチ式を開催、MDA開始(各地域でMDAの啓発・広報活動を実施しながら投薬活動を実施)
・投薬データの集計・データマネジメント開始。翌年2月初旬に終了
2024年12月初旬 MDA終了。一部地域での追加投薬の実施
2025年2月 カバレッジ評価調査の実施
2025年5月 MDA実施後の結果報告のためのワークショップの開催

表1. エリア毎のLF投薬率(保健省調べの州人口データを使用)

MDA1 回目(2023年) MDA2 回目(2024年)
District/Area Target
Population
(域内対象
人口・人)
Treated
Population
(投薬人口・人)
Coverage
Percentage
(割合%)
Target
Population
(域内対象人口・人)
Treated
Population
(投薬人口・人)
Coverage
Percentage
(割合%)
Nakanai 130,106 76,753 59.0 127,165 101,990 80.2
Talasea 85,387 59,818 70.1 87,440 67,972 77.7
Gloucester 43,920 33,873 77.1 42,072 33,614 79.9
Kandrian 60,658 31,836 52.5 67,506 53,507 79.3
WNBP (全体) 320,071 202,280 63.2 324,183 257,083 79.3

各地域での投薬活動の様子

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受付(Paruru/Vituヘルスセンター) 

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登録用紙に記載(Mosaヘルスセンター)

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身長確認(Mosaヘルスセンター)

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薬剤を渡す様子(Kimbe州病院チーム)

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子どもへの投薬(Kimbe州病院チーム)

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ヘルスワーカーの前で薬剤を飲む(Pililoヘルスセンター)

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ヘルスセンターの車両から薬を受け取る順番を待つ住民たち(Kandrianヘルスセンター)

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ヘルスセンターに集まってMDAに関する説明を受ける住民たち(Turukヘルスセンター)

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周辺で仕事をする船舶関係者に船内で投薬活動(Kaliaiヘルスセンター)

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集落間を小型ボートで海上を移動して投薬活動(Wakoヘルスセンター)

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陸路アクセスが難しい地域にヘリコプターで移動して投薬活動(ヘリコプターは州保健局が手配。Eseliヘルスセンター)

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移動中に急な悪天候により、道の周辺の葉っぱを傘にして移動する活動チーム(Wakoヘルスセンター)

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足場の悪い岸壁を活動用具や食料を持って移動する活動チーム(Wakoヘルスセンター)

州内各地で確認されたLF疑い症状者の事例

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Ulamonaヘルスセンター

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Baeaヘルスセンター

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Eseliヘルスセンター

カバレッジ評価調査の様子

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住民にインタビュー調査をする実施する州保健局スタッフ(Biallaエリア)

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住民にインタビュー調査をする実施する州保健局スタッフ(Kandrianエリア)