コウモリからの検体採取とLower Zambeziにおけるコウモリ生態調査

2022年12月7日

当プロジェクトでは、ザンビアのルサカ州にある洞窟で、コウモリからの検体採取および生態調査を継続的に行っています。過去にはこの洞窟に生息するエジプトルーセットオオコウモリからマールブルグウイルスなどの人獣共通感染症を引き起こす病原体が検出されています。

今年10月にも、日本人専門家チームとカウンターパートが数回にわたり同洞窟を訪れ、調査を行いました(写真1~2)。同洞窟で継続中の活動は、2022年6月のこちらの記事でも詳述しましたので、ぜひご覧ください(注)。

今回は洞窟で捕獲したコウモリの一部を共同研究機関であるザンビア大学に持ち帰りました。日本人専門家とカウンターパートの息の合ったコンビネーションで、丸一日かけて全てのコウモリを解剖し、血清および臓器検体を採取しました(写真3)。現在、ウイルスのスクリーニングを行っています。

また、今年4月の調査で、この洞窟のエジプトルーセットオオコウモリがジンバブエとの国境に近いLower Zambezi国立公園およびその付近へと飛翔していることが分かりました。これは、同洞窟で捕獲したコウモリにデータロガーを装着し、GPS位置情報からその移動を追跡することで明らかになったものです(写真4)。コウモリの移動に伴い、マールブルグウイルスなどの病原体も同じ範囲に拡散するリスクがあり、注視が必要です。

Lower Zambezi国立公園内で、コウモリがどのような環境を利用しているのかを明らかにするため、日本人専門家、カウンターパート、共同研究者、関係機関の職員など、総勢十数名で現地へ赴きました。Lower Zambezi国立公園の北側を、GPS位置情報をもとに調査した結果、大型の洞窟は確認できなかったものの、コウモリが好みそうな岩場に形成された空間をいくつか発見することができました。また、Chongwe Fallに存在する洞窟も訪れ、内部にコウモリが生息することを確認しました。今回の調査により、ルサカ州のコウモリはLower Zambezi国立公園一帯に存在する洞窟や岩の割れ目などを利用しながら同地域で短期間活動し、ルサカ州の洞窟へと再び戻ってきているらしいことが分かりました(写真5~6)。

コウモリがどのようなウイルスを保有しているのか、そのウイルスがいかにして広がっていくのか、これからも当プロジェクトでは分析を続け、ザンビアの人獣共通感染症対策に貢献していきます。

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写真1 特別な防護服を身に着け、洞窟に入ります。

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写真2 コウモリの飛来を待つ間、カウンターパートにサトウキビの食べ方を教わり腹ごしらえ。硬くてなかなか難しい!

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写真3 捕獲したコウモリから血清サンプルを採取する髙田チーフ。獣医としての腕が鳴ります!

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写真4 エジプトルーセットオオコウモリにデータロガーを装着する様子。この装置がコウモリのGPS情報を集めます。このコウモリ、可愛い顔をしていませんか?!

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写真5 真夏のような暑さの中、ひたすら岩場を歩いてコウモリの住処を探します。

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写真6 コウモリのGPS信号が消えた場所には、このような岩の割れ目が複数存在していました。

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写真7 おまけ アフリカで4番目に長いZambezi川に沈む美しい夕日

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写真8 おまけ Lower Zambeziには野生のゾウもそこら中にいました!