2度の休校を経て学校再開

2022年3月24日

新型コロナウイルス感染拡大により休校していたバングラデシュの教育機関は、2021年9月より約1年半ぶりに再開しましたが、感染状況が悪化したため2022年1月末よりすべての教育機関が再び休校になりました。その後、感染状況が落ち着いてきたことから、2022年2月末より就学前教育、初等教育、中等教育以降の学校が順次再開されています。

小学校は3月2日よりスタートしました。そこで、2022年3月10日、本プロジェクト団員は再開後の学校の様子を調査するため、ダッカ市内にある公立小学校2校を訪問しました。新型コロナウイルスの影響をそれほど受けていない学校もある一方で、コロナ前と比べ全校児童が40%ほど減少している学校もありました(注1)。学校の教員に尋ねたところ、その理由は、親の経済状況悪化により、仕事を求めて出身の村や他地域へ引っ越す家族が増えたからとのことでした。

(注1)ある小学校では、2020年1月480人だったのが、2021年12月には280人に。(バングラデシュの学校暦は1月に始まり12月終わりです。)

【画像】

マスクをつけ登校する児童たち(ダッカ市内の公立小学校)

休校中の教師の学習サポート

休校中、教師は週に数回Google Meetやfacebookメッセンジャー等を利用したオンライン授業を実施したり、各家庭に学習プリントを配布したりするなど、子どもたちの学びの機会を保障するために様々な工夫を凝らしていたようです。しかし、教師への聞き取りによりますと、オンライン授業を実施しても、児童が視聴できるデバイスを持たないため、クラスの30%ほどしか参加できなかったといいます。参加できた生徒も、保護者にスマートフォン等を借りる必要があるため、教師は保護者が仕事から帰宅する夜7時以降に授業を行う必要があったとのことでした。

また、オンライン授業はインターネット環境とパソコン・スマートフォンなどのデバイスがあれば良いというわけでなく、特に小学校1~2年生の低学年の場合、傍らで学習をサポートしてくれる人(保護者や年上の兄弟など)がいなければ学習を進めるのは困難と予想されます。保護者への聞き取りでは、仕事や家事で忙しく、子どもの学習を見る暇はなかったとの声も聞かれ、家庭でのサポート体制や教育力の差が、学習格差をますます広げている懸念があります。

【画像】

休校中、オンラインで授業を受ける生徒(中学生)

2年分の学習をどのように取り戻すのか

バングラデシュの小学校は、計2年ほど休校していたことになります。小学校3年生は、1~2年生で基本的な読み書き・計算を習得しておかなければなりませんが、長期間の休校により多くの子ども達がそれを身につけないまま3年生の勉強をしています。教師への聞き取りによりますと、児童は前の学年で習得すべき学習内容を身につけないまま2つ上の学年の勉強をしているため、高学年になっても基本的な読み書きがままならない児童、しっかりした理解を伴わないまま教師の発言や板書をただ暗記している児童が目立つとのことでした。

【画像】

小学校3年生の算数の授業

公立小学校の場合、政府により発表された時間割を用いますが、その中に毎日20分間の「補修クラス」が導入されています。この20分間で、教師は休校した2年分の学習の遅れを何とか補おうと日々努力しています。

本プロジェクトが行う支援

先の記事(注2)のとおり、本プロジェクトでは、休校下の学習支援として算数映像教材の開発支援を行いました。そのほか、算数と理科の初等カリキュラム改訂支援や、1~5年生までの教科書・教員用指導書の開発支援も実施しています。
特に、リソースが限られた地域では教科書が唯一の学習教材となるため、教科書の質は非常に重要です。バングラデシュでは教科書普及率は99.9%(2020年)(注3)と高く、ほぼ全ての児童が教科書を持っていることになります。
本プロジェクトの教科専門家(理数科)は、児童にとって分かりやすく、教師にとって教えやすい教科書を目指し、教科書分析、教科書改訂マニュアルの作成、新教科書のドラフト開発など様々な支援を進めています。

(注3)MoPME(2020)“Annual Primary School Census 2020 Final Report”より

文責:大橋悠紀(教員研修2/業務調整)

【画像】

「大気汚染の原因」についてグループで話し合っている(小学校5年生理科)