土壌肥沃度向上にむけての取り組み

2019年12月3日

ブータン中西部地域における園芸農業振興を目指す本プロジェクトでは、園芸作物品種の導入や栽培技術の開発が活動の中核として位置付けられており、それらの活動は、主にJICA専門家が派遣されているバジョ農業研究開発センター(以下バジョ・センター)で行われています。
言うまでもなく、農業生産に欠かすことのできない必須条件は水と土です。プロジェクトでは、研究開発のための作物生産活動を効果的に実施するため、バジョ・センターの灌漑施設整備と並行して、堆肥作り等による土壌改良にも力を入れて取り組んできました。継続的な努力の甲斐あって、バジョ・センター圃場の土壌は徐々に改善されてきましたが、長年水田として使われてきた影響もあって、有機物含有量が極端に少なく、乾けばかちかちに固まり、雨が降れば滞水するという厄介な性質が解決されたわけではありません。

このように、園芸作物試験農場としては不利な土壌条件と言わざるを得ないバジョ・センター。その状況を少しでも良くするため、いくつかの新しい試みを進めています。
その一つが、現地で「ダインチャ」と呼ばれるマメ科の一年性草本を圃場で栽培し、緑肥として施用する技術の導入です。よく知られているように、マメ科の植物は根粒菌の働きによって窒素を固定する能力を備えています。ダインチャを圃場で育て、土壌に漉き込むことによって、窒素だけでなく有機物の還元を同時に行なうことができ、土地の肥沃度アップが期待できます。
今年から取り組んでいるのが、日本でもお馴染みの有機発酵肥料(ぼかし肥)作りです。お米が主食のブータンでは、有機発酵肥料の主要原料である米ぬかの入手は容易です。製造方法も比較的簡単であることから、バジョ・センターでの導入にとどまらず、活動対象5県の農家や普及員向けに研修を行い、地域の生産現場における普及にも取り組んでいます。他の農業関係機関や地元の学校から講習依頼が舞い込むなど、予想以上の波及効果も現れています。
そしてもう一つ、力を入れて実施しているのが燻炭作りです。燻炭とは、籾殻や木屑を蒸し焼きにして炭化したもので、肥料ではなく、土壌の通気性や保水力を良くするための土壌改良剤などに使用されます。ブータンでは酸性土壌がほとんどを占めるため,園芸作物作付け前の土質改良にも適しています。こちらも主要原料である籾殻や木屑、剪定枝の入手が容易であることから、試行段階を経て、増産に向けた燻炭製造・備蓄施設の整備を進めているところです。こちらも他の農業研究開発センターや郡普及員から指導依頼が来始めており、農家が安全かつ安価に製造できるような普及パッケージを考察しています。

これらは全て、有機農業志向の強いブータンにとって有用な技術であり、工夫次第で農家レベルでも導入が可能な簡易技術です。プロジェクトは最終盤を迎えつつありますが、バジョ・センターでの導入・開発と並行して、可能な限り農村の生産現場における普及も進めたいと考えています。

【画像】

ダインチャの漉き込み作業

【画像】

ダインチャの生産量調査

【画像】

有機発酵肥料の仕込み作業

【画像】

農家&普及員向け有機発酵肥料作成研修

【画像】

燻炭製造装置

【画像】

燻炭原料の籾殻を投入

【画像】

果樹苗木植穴への燻炭施用

【画像】

有機発酵肥料と燻炭の普及用リーフレット