ファッションショーの盛り上げにひと役

2023年5月8日

去る4月15日(土)の夜、王立ブータン大学科学技術単科大学(CST)では、学生クラブ主催で、全学年全学科が参加する「ファッションショー」が開催されました。25チームが参加し、「世界の民族衣装」「映画と若者」という2つのカテゴリーで、工夫を凝らした衣装を制作し、所属学科の学生がモデルとなって、華やかにランウェイを歩きました。

学内寄宿舎で生活し、すべてが大学構内で完結している学生たちの息抜きの機会の1つとして考案されたファッションショーは、毎年4月の年中行事として、CSTでは定着しています。そんなファッションショーに、今年は初めて「ファブラボ」が関わることになりました。ミシンや刺繍ミシンだけでなく、レーザー加工機や3Dプリンタといった工作機械、マイコンボードやLEDライトなどの備品もファブラボには用意されています。

このため、ファブラボCSTでは、ファッションショー開催から1カ月以上前の3月初旬に、主催者である学生クラブとの協議を開始し、ショーを支援するために、いくつかのプログラムを用意することになりました。

1つめは「オンライン・ミートアップ」です。4月4日に、ファッションショーを用いたSTEM教育の普及で実績のある米国のNPO「MakeFashion Edu」のジェームズ・シンプソンさんとキャリー・ルンさんを招き、今年2回目のオンライン・ミートアップを開催しました。テクノロジーを駆使したランウェイショー運営のノウハウや、他国で子どもたちが実際に製作した作品について、2人にお話しいただきました。このミートアップは、事前登録視聴者数が130人を超える盛況となりました。

2つめは、「参加学生向け縫製研修」です。4月4日から12日まで、大学の放課後を利用して、ミシンや刺繍ミシンの操作法を体験する縫製研修を13回開催し、各参加チームから、計49人が受講しました。これにより、ミシン操作未経験の多くの学生も、衣装の制作が自分たちでできるようになったといいます。昨年12月にファブラボCSTで行われた縫製研修で、アシスタントを務めた学生インターンが、インストラクターを務めました。

3つめは「ファブラボの施設提供」です。縫製研修を受講した学生は、その後、ファッションショー本番に向け、連日深夜まで施設を利用し、ファブラボCSTのスタッフもこれに協力しました。ファッションショー参加25チーム中、ファブラボを利用したのは10チームほどにとどまりました。しかし、これは、ミシンや刺繍ミシンがそれぞれ1台しかないことによる「交通渋滞」も影響しました。

4つめは、「経験共有の場の提供」です。ファッションショー後、ファブラボ利用チームのうち9チームを招き、5月6日(土)に、「ファブラボCSTユーザーズフォーラム」を開催しました。それぞれの衣装のどこをファブラボで作ったのか、どのような機械を使用し、どこが難しかったのか、その経験を共有してもらいました。ミシン操作は生まれて初めてという学生が多く、「難しそうに見えたけれども、研修を受けて実際に操作してみたら、意外と簡単だった」との声も聞かれました。また、「大きな刺繍はファブラボの刺繍ミシンでは難しい」との指摘に対して、フロアからは、「スクリーン印刷ならできたのでは」とのコメントも寄せられました。

そして、5つめは「アーカイブ化」です。ユーザーフォーラム参加チームには、この後、撮影した動画や写真を提供してもらい、私たちはこれらをファブラボCSTウェブサイトの「プロジェクトギャラリー」にまとめて掲載しました。これは、オンライン・ミートアップに登壇いただいたMakeFashion Eduのジェームズさんとキャリーさんが、「公開(publish)」という言い方で強調されていたポイントでもあります。

こうして来年の参加チームが参照できるよう記録を残したことにより、約2カ月にわたる、ファッションショーへの協力プロセスは終了しました。

【画像】

参加学生向け縫製研修、ミシン操作は生まれて初めて(写真/Karma Kelzang Eudon)

【画像】

衣装制作も夜間ファブラボで行うチームも(写真/Karma Kelzang Eudon)

【画像】

デジタル刺繍ミシンが大人気(写真/Karma Kelzang Eudon)

【画像】

ランウェイのファースト・ルックは学生クラブコーディネーター(写真/山田浩司)

【画像】

土木工学科3年生チームの衣装(写真/CST土木工学科)

【画像】

IT学科2年生チームの衣装(写真/CST IT学科)

【画像】

ユーザーズフォーラム、小物も3Dプリンタで製作されたことを知る(写真/山田浩司)

【画像】

計装制御工学科4年生チームのプレゼン(写真/山田浩司)

【画像】

ユーザーズフォーラムには、JICAブータン事務所員も同席(写真/山田浩司)