モンゴルにおける新生児蘇生法が大きく進展しました

2019年9月15日

プロジェクトでは、昨年よりモンゴルの新生児科医たちとともに、新生児蘇生法に関する研修の開発に取り組んできました(プロジェクトニュース2018年12月21日)。この研修は、日本で実施されている新生児蘇生法であるNCPR(Neonatal Cardiopulmonary Resuscitation)がモデルとなっています。NCPRの研修は、JICAの周産期医療に関する課題別研修においても、モンゴルの産婦人科医や助産師たちが受講してきた研修でもあります。

かつて、モンゴルにおける新生児蘇生法に関する研修の課題は、海外から指導にくる複数のグループが、それぞれ独自の蘇生法を指導していたため、異なる蘇生法が教えられていてモンゴル国内に混乱を招いていたことがありました。また、国内に新生児蘇生法を指導できるインストラクターが育っていなかったため、自分たちの力で研修を広めることができない課題もありました。

そこで、プロジェクトではモンゴルの新生児科医たちの協力を得て、まずNCPRの講義資料のモンゴル語訳を行いました。また受講する人たちが統一された手技を学ぶことができるよう、モンゴルの新生児科医たちが蘇生手技を実演する、映像教材の開発を支援しました。さらに、研修で教えられる蘇生プロトコールが、国内の標準プロトコールとなることを企図し、保健省内に設置されている小児医療専門委員会でプロトコールを審議してもらいました。また日本からNCPRの指導に熟練した専門家を招き、新生児蘇生研修のインストラクター養成に挑戦しました。

研修の開発に取り組み始めて9ヶ月以上かかりましたが、2019年9月11日、保健省小児医療専門委員会において、新生児蘇生法のプロトコールが正式に承認されました。これにより、今後は国内で統一された内容に基づいて、標準化された新生児蘇生法が教えられることになります。

また9月10日には、短期専門家の嶋岡医師(国際医療福祉大学塩谷病院)の指導により、新生児蘇生研修のインストラクター養成研修が行われました。従来、新生児蘇生研修を指導していた3名の熟練の新生児科医に加え、新たに12名の新生児科医たちが、蘇生研修における効果的な指導方法について学びました。

このインストラクター研修で指導を受けた医師たちにより、早速9月11日には鳥取県が10年以上も前から支援を続けているTuv県の県病院、12日にはウランバートルの第一産科病院において、新生児蘇生研修が実施されました。いずれも国から承認を受けた、統一された新生児蘇生法のプロトコールが研修の教材に使用され、育成されたインストラクターたちにより、研修が実施されました。また16-19日には、ロータリークラブがモンゴル助産師会を支援して、モンゴル国内の各県から招かれた100名近い助産師たちを対象に、同じ教材を用い、育成されたインストラクターにより、新生児蘇生研修が実施される予定です。

モンゴルの新生児死亡率を改善するためには、今後継続して新生児蘇生研修が実施され、国内に広がっていく必要があります。そのためには、インストラクターをさらに育成する必要があります。また研修の質を評価し、適切に研修が実施されていることを確認することも必要になります。プロジェクトでは、モンゴルの方達が自分たちの力で質が担保された研修を展開することができるよう、技術的な側面からの支援を継続したいと思います。

モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

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新生児蘇生のプロトコールをポスターで示し、研修中に反復して確認できるようにしました

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Tuv県でのインストラクター研修を受講した2名による指導の様子。

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第一産科病院での指導の様子

【画像】新生児蘇生法のインストラクター養成研修の参加者たち