救急診療における超音波検査を学ぶ研修(パイロット版)が実施されました

2019年9月30日

9月28および29日、救急診療における超音波検査(Point-of-Care Ultrasound:POCUS)について学ぶ研修のパイロット版が実施されました。これは、6月末に活動を開始した、日本の厚生労働省の「医療技術等国際展開推進事業」として行われる研修です(プロジェクトニュース6月28日参照)。救急医療における継続研修パッケージの開発は、プロジェクトの重要な活動の一つでもあるため、プロジェクトがこれまで得た研修開発などに関する知見を本事業の関係者と共有することで、活動に協力しています。

6月末に事業が開始されて以降、モンゴルの6名の救急医が、日本で行われた超音波検査(POCUS)を活用した救急診療について学ぶ研修に参加しました。その6名の救急医を中心に、さらに日本から4名の救急医がモンゴルを訪問し、研修が開発されました。6名の救急医たちは、動画を含む研修教材の開発に加え、日本の専門家から事前に実技指導のアドバイスも受け、パイロット研修の当日に備えました。

パイロット研修には、救急の専門研修を受けている研修医たちや若手救急医たちが参加しました。1日かけて行われる研修は、超音波機器や検査方法に関する知識を得るための講義、またボランティアの被験者に超音波検査を行うことで技術の習得を目指す実習、そして症例シナリオを用い、実際の診療の現場での具体的な超音波検査の利用方法を検討するシミュレーションから構成されていました。受講生たちは、普段超音波機器に触れる機会がまだ限られていることもあり、特に実習の際には時間を超過しても熱心に技術の習得に努めていました。

参加者たちからは、現場のニーズにマッチした研修であること、CTなど高額な医療機器がすぐに利用できない地方での診療に活かせる内容であることなどから、研修内容に非常に満足したコメントが寄せられていました。一方で、研修で利用する超音波機器の性能の問題や講義資料の不備への指摘、また実習の時間を確保するために研修参加人数を制限すべきであるなど、改善に向けた提案もありました。

本事業では、今年度はあと1回日本から専門家たちがモンゴルを訪問し、活動の成果を評価する機会があるようです。プロジェクトとしては、事業で開発されたPOCUSの研修が、確実に地域で診療する救急医たちに活用される形になるように、技術的側面から支援することを検討しています。

モンゴル国一次及び二次レベル医療従事者のための卒後研修強化プロジェクト
チーフアドバイザー 井上信明

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超音波機器や検査法についての講義

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健康被験者(ボランティア)を使って超音波検査法を学ぶ実習の様子

【画像】指導者と参加者の集合写真