古代文明と乾燥林

2018年4月16日

3月後半に1週間、ペルー北部海岸地域のLambayeque州で、乾燥林図の現地検証活動を行いました。

ペルーはアマゾンの広大な熱帯林を擁していますが、他にも様々な種類の森林があります。6,000mを越える高峰がそびえるアンデス山脈には高地林があります。山並みと海岸の間には、世界でもっとも雨が少ない地域のひとつで、サバンナ性の乾燥林が広がっています。過酷で特異な環境に発達した乾燥林の生態系には、希少な動植物が豊富に生息しています。

ところが、乾燥林地域には、インカ文明の遥か前から文明が栄え(例えばMoche文明-後記)、何千年ものあいだ、人が森林資源を利用し続けています。特に近代は、農地や宅地、社会経済インフラ開発などのため、無秩序に森林が転用されています。薪炭材として木材が伐採され、放牧や野焼きなどで疎林がさらに荒廃し、希少な生態系が重大な危機に瀕しています。

乾燥林を保全するためには、森林を特定して林地境界を確定し、現況に則して森林を各ゾーンに分けて、それぞれのゾーンに合った利用方法や保全方法を決めて運営する必要があります。ところが、ペルーには乾燥林の正確な地図がありません。技術的な課題があるからです。

5-7年周期で発生するエルニーニョ現象のときにのみまとまった雨が降る地域ですので、木はそのあいだ落葉した状態で耐え抜きます。人工衛星のデータは、通常木の葉の緑色(葉緑素)を検知して森林を特定しますから、乾燥林ではそれが難しいのです。

そこで、JAXAが打ち上げた日本の衛星の大地2号に搭載されたセンサーを用いて、幹など(バイオマス)を検知して、精度の高い乾燥林図を作り、その変化をモニタリングする方法の開発をプロジェクトで支援しています。

斬新な試みであるため、技術的な課題は山積ですが、衛星データの分析と現地での検証を繰り返し、現地関係者の熱意とそれに応える日本人専門家のサポートで、カウンターパートはめきめきと技術力を高めています。

余談:プロジェクトがパイロットを実施しているペルー北部海岸地帯のLambayeque州には、有名なSipan遺跡があります。これは、モチェ文明末期の王・Sipanの墓です。Moche文明は、紀元前100年ごろから紀元後650年ころまでに繁栄した「プレ・インカ」と呼ばれる高度な古代文明のひとつで、墓からは、シパン王とその妻、子どもや護衛とみられる複数の人骨、無数の黄金が発見されています。Lambayeque州の州都のChiclayo市にはSipan遺跡の博物館があり、MachupicuやNascaほど有名ではありませんが、代表的な観光地となっています。

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現地検証の活動写真