泥炭林マッピングへの挑戦-泥炭調査とドローン画像での検証-

2018年9月26日

ミラクルフルーツ「アグアヘ」と泥炭林

泥炭湿地林をご存知でしょうか?水がたまりやすい酸素不足の場所で、倒木が完全に分解されず堆積した泥の上にできる森林です。泥炭の厚さは20mにも及ぶことがあり、炭素貯留に貢献しています。ところが泥炭林が農地として開発され、火災が起こることもあり、多くの温室効果ガス排出につながっています。

【画像】

泥炭林

地球温暖化軽減のためにも、泥炭林の保全は重要ですが、ペルーの熱帯性の泥炭林は、インドネシアについで世界で2番目に広いといわれていますが、泥炭林の分布が正確にわかっていません。プロジェクトでは泥炭林のマッピング方法論開発を支援しています。

ペルーの泥炭林は、ミラクルフルーツと呼ばれる「アグアヘ」が生息する貴重な環境になっています。アグアヘは、中南米原産のヤシの一種で、植物性エストロゲン(女性ホルモン様物質)をはじめ、美容に欠かせないビタミンA・C・Eを豊富に含んでおり、アマゾン地帯の人々に広く食されている果実なので、地元住民の食生活と生計の観点からも、泥炭林の保全は重要です。

【画像】

Aguaje林

【画像】

Aguajeフルーツ

泥炭林マッピングは、人工衛星に設置された測定器(センサ)で、地上の森林や河川を測定する「衛星リモートセンシング」技術を使います。電波を発射し、反射を測定するレーダー装置は、雲を透過し、水域とそれ以外の区分ができます。

【画像】

レーダー装置の活用技術は、ペルーではまだ発展途中で、プロジェクトにおける能力強化に大きな潜在性があります。衛星情報の分析結果を現場で確認しますが、行くのが難しい場所は、ドローンを使って確認しています。

泥炭林マッピングへの挑戦-泥炭調査とドローン画像での検証-

2018年8月にペルー北東部に位置するUcayali州のMasiceaとMasaray NorteとSan Martin州Moyobamba地区周辺で、湿地林マッピングのための現地調査を行いました。同地区周辺には大小様々な泥炭林が数万ヘクタール分布していると考えられています。

調査に先立ち、既存の泥炭林マップの方法論をレビューし、マップ改善のための方法を検討しました。その結果、光学センサー画像だけでなく、レーダーセンサー衛星画像、スペースシャトル立体地形データ(SRTM/DEM)及びドローンで取れる高解像度画像を組み合わせた解析と現地調査を行うことで、より高精度の泥炭林マッピングができることが期待されています。

これらの解析を通して作成した仮の泥炭林マップで現地検証地点を決定し、州政府職員らとともに、いざ現場へ。

現場では、
・泥炭分布の確認のため、泥炭をサンプリングし、泥炭厚を確認
・湿地林マッピングの指標となるAguajeの分布状況をドローンで確認
を主に行い、検討中のマッピング手法を検証できました!

検証結果から、検討中のマッピング手法の手ごたえを感じた一方、精度を上げるために必要な追加情報も明らかになりました。
湿地林マッピングへの挑戦はまだまだ続きます。

【画像】

泥炭調査の様子

【画像】

ドローンによる検証の様子