森林モニタリングの報告精度の向上を目指して-Google Earth Engineの機能を利用した森林減少地点検知システム研修-

2018年9月28日

2018年9月26から28日の3日間、森林の変化をモニタリングし報告する取り組みの精度向上を目指し、Google Earth Engine(GEE)を利用したツールの研修をハノイにて開催しました。

今回の研修は森林総局森林保護局(FPD)の中央および地域事務所の職員、ベトナムの森林プロジェクトを統括する農業農村開発省森林プロジェクト管理委員会(MBFPs)、タブレットPCおよび専用のアプリケーションによる森林モニタリングシステム(通称:PFMS)を導入した16地方省の森林保護局の職員を対象として計34名が参加しました。

ベトナム国政府が取り組む森林モニタリングシステム(FRMS:Forest Resource Monitoring System)は大きく分けて二つの取り組みから構成されています。一つは中央で管理する森林資源情報データベースの取り組み、もう一つはレンジャーが実際に森林モニタリングを行う現場レベルでの取り組みです。前者はFORMISプロジェクト(フィンランド政府による支援)によりデータベースが構築され、後者は当プロジェクトにて支援を続けてきました。これまでのニュースレターでも報告してきましたように、当プロジェクトで開発したPFMSは、FCPF2(世界銀行)をはじめとしたUN-REDD2(UNDP/FAO/UNEP)、Vietnam Forest and DeltaやGreen Annamites(USAID)(注)などの他ドナープロジェクトと連携して展開しており、現在は当プロジェクトが直接支援する5省(ライチャウ、ソンラー、ディエンビエン、ホアビン、ラムドン省)を含め16省まで導入が拡大してきています。

今回の研修は、現場レベルでの森林モニタリングの取り組みをサポートするツールの研修でした。Google Earth Engine(GEE)という無料のサービスを利用し開発したツールで、レンジャーが発見しきれない森林減少が起こった箇所の目星をつけることができます。このツールにより、これまで見落とされてきた森林減少が適切に報告されるようになることで、年間の森林変化報告の精度が向上することが期待されています。また本ツールは一部の省で試験導入を開始しており、各省からのフィードバックを反映させて現在の形にたどり着いたものです。このこともあり、中央の森林保護局も本ツールの機能に高い関心を寄せています。

研修では、GEEツールのFRMSの中での位置づけや、森林モニタリングの精度を向上させる重要性について講義するとともに、利用方法の実習に多くの時間を割いた実践的な研修カリキュラムとしました。特に各省の実務者レベルの参加者からは、細かな利用方法やツールを利用するタイミングに関する質問が多く上げられました。講義の内容をビデオで録画していたり、休み時間や1日の研修終了後に個別に質問していたりと、とても熱心に取り組んでいました。また、プロジェクトスタッフのみならず、FRMSのデータ管理を担当する森林保護局傘下の情報データ局(DID)の職員も参加者からの数々の質問に対応していました。このようなカウンターパート職員と研修参加者双方の積極的な参加により、より充実した研修となったといえます。

今後、当プロジェクトで開発と展開を進めているGEEツールを含めた森林モニタリングシステムがベトナム全国に展開されていくことを目標に、森林保護局およびその他のステークホルダーと共に、国としての予算措置やロードマップの作成に本格的に取り組んでいきます。

(注)Forest Carbon Partnership Facility、UNDP: United Nations Development Programme、FAO: Food and Agriculture Organization of United Nations 、UNEP:United nations Environment Programme USAID:United States Agency for International Development,

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研修の様子

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GEEシステムの実技演習。省FPD職員からの質問にDIDとプロジェクトスタッフが共に対応。

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質問を行うFPD地域事務所からの参加者

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MBFPsの副局長Thang氏による閉会宣言