【草の根事業紹介】メキシコ国メキシコ市における上下水道震災対策強化プロジェクト(地域活性化特別枠) ~名古屋市とメキシコ市の友情から生まれたユニークな防災教材(名古屋市のキャラクター「はち丸くん」も登場!!)~

#6 安全な水とトイレを世界中に
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#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2024.01.25

名古屋市‐メキシコ市の協力関係の歴史と新たなプロジェクトの誕生

名古屋市とメキシコ市は1978年に姉妹友好都市となりました。
こちらはメキシコのシンボルであるサボテンと名古屋のシンボルであるシャチホコをモチーフとした45周年のロゴ。

名古屋市とメキシコ市は1978年2月に姉妹都市提携を締結して以来、様々な交流を深めてきました。その代表的なものの一つが、名古屋市上下水道局とメキシコ市水道局(以下、SACMEX)による技術協力事業です。2005年に水質管理に関するプロジェクトをスタートしたのを皮切りに、下水道事業、下水処理など、水に関するテーマでこれまで20年近くJICA草の根技術協力事業を活用した技術協力を続けてきました。2016年度に草の根技術協力事業「メキシコ市における下水処理改善プロジェクト」が終了し、次のテーマを検討していた2017年9月、メキシコ市を含むメキシコ中部で300人以上が犠牲となる大きな地震が発生しました。地震の影響により多くの上下水道施設が被害を受け、一時は約 300 万人の市民が断水の影響を受ました。これを受け、SACMEXとメキシコ市上下水道局は、水道分野における震災対策強化に取り組むことを決めました。

プロジェクト開始とコロナ禍の到来

さまざまな準備期間を経て、2020年2月に草の根技術協力事業「メキシコ市における上下水道震災対策強化プロジェクト(地域活性化特別枠)」として正式にプロジェクトがスタートしました。本事業から、SACMEXに加え、防災を掌るメキシコ市リスク統合管理・市民保護局(以下、SGIRPC)もメキシコ側の実施機関(カウンターパート)として加わることになりました。事業開始と共に名古屋市の関係者がメキシコ市に渡航し、現地でキックオフミーティングを実施、「さあ、いよいよ!」というときに、誰もが予期しなかった困難が訪れます。新型コロナウイルスの世界的な蔓延です。事業開始後しばらくメキシコへの渡航が叶わず、また、メキシコの関係者を日本に迎えることもできないもどかしい期間が続きます。そのような中プロジェクトでは、定期的なWEB会議を実施し、コロナ禍でもできることに着手します。

2020年2月、キックオフミーティングを開催。この直後にコロナ禍が訪れます。

地道なWEB会議の開催による教材づくり

プロジェクトでは、「応急活動」「耐震性」「市民啓発」を取り組むべき3つの柱とし、そのうちの一つである「市民啓発」について、教材が作成されることになりました。月1回程度の頻度でWEB会議を開催し、意見交換を重ねていきます。しかし、直接膝を突き合わせて行う対面での会議ではなく、オンラインだけで進めなければいけないことは、想像以上に難しいことでした。まずは、言葉の壁があります。通訳を介したやり取りは、通常の会議の倍の時間がかかります。表現やニュアンスで誤解が生じることも多々ありました。また、プロジェクト開始直後にコロナ禍となったため、対面での交流がほとんどなく、関係者同士が打ち解けていない状態での画面を通したやり取りは、簡単なことではありませんでした。それでも関係者の地道な努力によって、教材が作り上げられていきました。

コロナ禍の間は、WEB会議で活動を継続。お互い行き来のできない苦しい時期でしたが、この期間があったからこそ産み出された成果もあります。

市民啓発教材「オリンの冒険」の誕生

こうして誕生したのが、市民啓発教材「オリンの冒険」です。「オリン」とは、SGIRPCが市民啓発のために活用しているバッタのキャラクターの名前で、今回の教材では、その「オリン」が名古屋市のキャラクターである「はち丸くん」らと冒険しながら、災害時の水資源の活用について学べる内容になっています。「1人当たり1日3リットル×3日分の水を備蓄しておく」など、元々メキシコにはなかった名古屋の取り組みについても紹介されています。市民啓発教材は、SGIRPCが持つ既存の研修プログラムにも組み込まれ、メキシコ市内の学校に配布されています。

市民啓発教材「オリンの冒険」:名古屋市のキャラクター「はち丸くん」がメキシコを旅しながら震災時の水資源管理について学びます。

市民啓発教材「オリンの冒険」:名古屋市の取り組み「1人当たり1日3リットル×3日分の水の備蓄」についても紹介されています。

アフターコロナにおけるプロジェクトの発展

「オリンの冒険」が完成する頃には、徐々にコロナ禍が明けていきました。2020年2月の事業開始以降、行き来のない状況が続いていましたが、2022年9月に名古屋市職員がおよそ2年半ぶりの渡航を果たし、翌10月にはメキシコの関係者を日本に招いた研修が実施されました。WEB上のやり取りだけで打ち解け切れていなかった双方の関係者が、メキシコではタコスを、名古屋では味噌カツを一緒に食べることで、一気に打ち解け、プロジェクトも終盤に向けて加速していきます。
紙媒体だった「オリンの冒険」は、動画化されYoutubeにアップされました。さらに、オリンやはち丸くんのパペット人形が作られ、人形劇にもなりました。こうして、「オリンの冒険」は、メキシコ市内の様々な場所で災害時の水資源の利用についての啓発活動のために活用されるとともに、名古屋市とメキシコ市の長年の協力についても市民に広めてくれています。
メキシコ関係者の来日研修時には、メキシコ人研修員が名古屋まつりのパレードにメキシコの音楽隊を模したマリアッチの格好で参加して名古屋市民の注目を集めたり、名古屋市内の地域の防災訓練に参加し、直接市民と交流を持つ機会もありました。
 
本プロジェクトは、「震災」という両国の悲しい共通点から生まれたものでしたが、名古屋市とメキシコ市、双方の関係者の地道な努力によりコロナ禍を乗り越え、大きな成果を生むと共に両市の絆を深めるものとなりました。

動画版「オリンの冒険」を活用し、メキシコ市内の学校で市民啓発活動が行われる様子。

人形劇でも啓発を行いました。

最後の本邦研修での1枚。すっかり打ち解けた様子の日墨関係者。

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