【考える力を育てる体育へ ~ハート・オブ・ゴールド 本邦研修~】

2023.10.20

小学生が生き生きと楽しむ体育の授業を見学

 JICA草の根技術協力事業により、カンボジアの小・中・高校で、「態度・知識・技能」を学ぶ新しい体育の普及と発展に取り組んでいる、特定非営利活動法人 ハート・オブ・ゴールド。2023年9月29日(金)から10月7日(土)にかけて、岡山県内での研修が開催されました。教育・青年・スポーツ省学校体育スポーツ局、国立体育・スポーツ研究所、小学校、高等学校などから13名が来日し、体育教育の現場の視察や、アクションプランの作成を行いました。様々な活動の内、10月5日(木)に行われた小学校での授業見学の様子をお伝えします。
 見学先である岡山市立高島小学校に足を踏み入れて、最初に目に飛び込んで来たのは、「Hello!」と元気良く挨拶してくれる小学生のみなさん。大勢の「Hello!」に感激しながら控室に向かいました。この日に見学したのは、6年生の体育授業で、種目は「ティーベースボール」です。カンボジアからの訪問団にとって、初めて触れるスポーツであったため、まずは、その概要や、授業の目標などについて、ブリーフィングが行われました。
 その後は、校庭に出て、実際の体育授業を見学しました。ルールを簡略化したゲームから始め、生徒が楽しみながら、段階的にティーベースボールに馴染めるように工夫された授業に、どの参加者も見入っていました。競技するだけでなく、途中でディスカッションを入れ、生徒自身が現状分析や戦略立案を行う場面に、特に注目が集まりました。
 この研修の特徴の一つは、授業見学後に、担当教員や関係者との協議の時間が設けられていることです。参加者からは、「様々な要素が組み合わさった授業であるが、教員一人で、どのように運営しているのか。」「安全面で、何に重点をおいて説明しているか。」「次回以降に、今日の学習をどのように発展されるのか。」など、たくさんの質問が飛び出しました。議論の中心となったのは、生徒と教員の関わり方です。生徒が自律的に課題の発見をして取り組むこと、そして、教員による声かけや問いかけにより、生徒のアイデアや能力を引き出すことの重要性などについて、活発に話し合いました。
 自国の生徒たちのことを思い浮かべ、研修からの気づきや学びをどう実践するかを熱心に考える研修参加者の方々の姿に、カンボジアの体育科教育の明るい未来が見える、とても有意義な時間でした。

研修参加者の声

【教育・青年・スポーツ課職員】
 日本では、学校の体育設備が整っており、生徒が楽しみながら授業に参加しているのが印象的だった。カンボジアでは、教員が一つ一つ指導するというやり方だが、この研修で見た日本の体育授業では、教員が教え込むのではなく、生徒が自律的に取り組んでいた。時間はかかるかもしれないが、小さな子どもでも、自ら考えることができることを実感したので、今後は、生徒主体の授業を実現させたい。
 
【高校の体育教員】
 教員による授業の運営の仕方が興味深かった。また、日本では、体育授業のための設備がしっかりと用意されていると感じた。特に印象に残ったのは、見学先の生徒が、楽しそうに授業に参加していること。カンボジアでは、他の教科の方が大事だと考える風潮があり、体育に参加するのを喜ばない生徒も多い。今日の授業で見たように、正式なルールに縛られることなく、より簡単な活動から始めて、生徒が楽しみ、ストレスを解放するような体育の授業をしたいという想いが強くなった。そのためにも、教員のスキルを向上させる必要がある。帰国後に、この研修から得たものを他の教員と共有し、学びを広げたい。

(記:岡山県JICAデスク)

体育授業の見学

熱心に見入る研修参加者

授業見学後の協議

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