JICA研修員と話すHIROSHIMAピーストーク  ~ジブチで難民受け入れに関わって~

2023.10.21

今回のピーストークは、黙とうから

 JICA中国では、「JICA研修員と話す HIROSHIMA ピーストーク」として、毎年、世界各国の研修員が日本の市民に対して自身の紛争経験や平和に対しての思いなどについて話してもらう機会を設けています。今年は10月 21 日(土)に東広島芸術文化ホールくららで、ジブチ共和国出身のエーデンさんに登壇してもらいました。
 エーデンさんから、お話の前に、パレスチナのガザ地区で起きている事案による多くの犠牲者に対し、1分間の黙とうを捧げませんかとの提案がありました。広島大学で平和について学んでいるエーデンさんならではのご提案に、参加されたみなさんが賛同し、沈黙の時間が流れました。

ガザの平和を祈って、黙とう

ジブチの印象は?

 最初のワークショップは、「ジブチについて、知っていることは?どんな印象を持っていますか?」というもの。「暑い国、という印象です。」などの答えのほか、「自衛隊の基地があります。」と答えた方もいらっしゃって、エーデンさんは「すごい!そのことを知っている人がいるとは思わなかった!」と喜んでいました。
 ジブチは、「アフリカの角」と呼ばれる地域にある、四国の 1.3倍ほどの大きさの国で、紅海とインド洋がぶつかる場所にあります。交通の要衝に位置し、貿易が盛んで、内陸にある隣国エチオピアへの物流の 9割を引き受けているそうです。多様な民族が暮らしているそうで、例として、イッサ族とアファール族の若者が交流し、民族衣装に身を包み微笑んでいる写真が紹介されました。このような背景を持つジブチは1990 年代には民族どうしの対立から内戦を経験しています。しかし、お互いの立場を理解することで難しい状況を乗り越え、今のジブチの発展につながっているとのお話でした。

難民となることはどんなことか想像してみよう

 このイベントでは、参考資料として JICAが主に中学生向けとして作った小冊子「みんなが知らないジブチのこと」が配られました。そこに掲載されている、JICA がジブチシティに建設したフクザワ(Fouko-Sawa 現地の言葉で『ともにひらく』)学校はエーデンさんの母校なのだそうです。「そこで HIROSHIMAや NAGASAKIについて教わって、ぜひ行ってみたいと思ったんです。」とエーデンさんが話してくれました。20 年もの時を経て、今、夢が叶い、さらに広島のみなさんの前で平和について語っていることについて、とても感慨深そうでした。
 次に紹介したのは、エーデンさんの元の職場、ジブチの通信省のオフィスです。フランス植民地時代の建築物としてその小冊子に紹介されていました。ここで働きながら、休日にボランティアスタッフとして、難民となってジブ チに来る多くの人に面接官として接しておられました。
 「難民となってジブチに来る人が、どんなものを持っているか想像してみよう」が2回目のワークショップのテーマでした。参加された皆さんは、実際に難民の人たちの写真を見る前に、それぞれ考えてみました。ポイントは、ジブチに来る人たちを思い浮かべること。グループ内でも相談し、「着替えの服は要ると思います。」「食べ物や飲み物も要りますよね。」と短い間に話し合いが進んでいきました。「家族の写真があったら励みになるのではないかしら?軽いし。」「スマートフォンは持っておいた方がいいと思う。」など、様々な意見が出ました。エーデンさんは、「長い道のりを歩くのに、少しでも荷物を減らすから着替えは難しいです。」「写真は持っている人がいましたね。」「スマートフォンは、便利だけどエリアが変わって使えないことがあります。あと、盗まれないよう注意が必要です。」と、それぞれにコメントしていきました。参加者のみなさんも納得の様子でした。
 さらに、この時会場にあったミネラルウォーターを手に、「逃げるのに一番必要なのは水です。水がなければ生きていけません。」とエーデンさん。自身が目にした難民の様子について、スライドを見せながら話してくれました。「難民という究極の状態にならないようにするために、お互いを理解し、もめごとがあっても小さな問題のうちに対話を重ね解決に向けて努力することが重要なのです」というエーデンさんは訴えました。

グループにわかれ、難民の持ち物について話し合い

ジブチとHIROSHIMAのつながり

 イベント後半は、エーデンさんが広島に来て感じたことについて話してくださいました。一番行きたかったのは広島平和記念公園で、原爆ドームがどんな物なのか実際に見たかったそうです。また、エーデンさんのお気に入りは、平和大通りにある、ワールドカップマラソン広島大会(1985年開催)の記念碑です。ジブチのサラ・アーメド選手と日本の中山竹通選手とがデッドヒートを繰り広げた大会を記念して建てられた石碑には、勝者アーメド選手とジブチ共和国の名前が刻まれています。参加者の中には「『戦争をイメージすることで、平和がより明確に分かるようになる』とのエーデンさんの言葉が印象に残った」との感想をくださる方もいらっしゃいました。今ある平和に感謝し、世の中が平和に一歩でも近づくことを改めて願い、イベントを終了しました。


平和を願って

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