広い北海道を舞台に道路維持管理研修をしています。(その1)

2024.03.26

 北海道は、広い面積の中に人々が比較的散在して生活を送ってきたという土地柄があります。そのため、生活の様々なところで近代的交通手段の確保は不可欠でした。開拓の初期段階から輸送手段としての鉄道は重要視され、昭和の半ばまでに道内には広く鉄道網が張り巡らされました。その後、モータリゼーションの進展とともに、特に人々が点在して住んでいる地域を中心に、採算性の乏しい鉄道路線沿線の輸送手段が鉄道から自動車へと大きくシフトし、現在に至っています。そうしたことから、人々をつなぐ道路を、常に良好な状態に保つことが北海道にとっては特に重要と言えます。
 他方、途上国に目を転じれば、急速な経済発展とともに人口増加の要素も加わり、ヒト・モノの輸送を円滑に進めることが急務であり、汎用性の高い輸送手段である自動車交通需要が特に高まっています。そのため、途上国政府や途上国を支援する他国の援助機関は、多くの国で道路網の整備に力を入れていますが、整備された道路の維持管理を担うのは、援助機関ではなく各国の道路技術者たちです。
 道路が重要なライフラインである北海道に拠点を構えるJICA北海道センターでは、途上国の道路部門技術者に道路維持管理の研修を行っています。

2023年度の研修員受け入れ

2023年度は アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン、マラウイ、モザンビーク、ザンビア、ジンバブエ、ベナン、カメルーン、ギニア、ブルキナファソ、コンゴ民主共和国から合計19名の研修員を北海道に受け入れ、道路維持管理に関する講義や視察を組み込んだ研修を行いました。研修は、母国での言語別に、ロシア語、英語、フランス語に分けて実施しています。
研修では、道路維持管理サイクルの考え方、予防的・効率的な維持管理計画、計画に基づく点検・評価活動などについて理論・ノウハウを学ぶとともに、実際の維持管理現場を訪問し、工事の様子を視察することで、母国で実際に行っている作業との違い、座学で学んだ理論の深い理解につなげることができました。また、道路のみならず、橋梁やトンネルについての知見を深めることに加え、円滑な交通に欠かせない、信号機規制や交通標識についても学んだほか、工事を行う上での安全対策についても新たな気づきを得ることができました。

舗装面のひび割れ補修研修(協力:東亜道路工業株式会社)

橋梁点検実習(於:白老橋)(協力:一般社団法人北海道開発技術センター)

常温アスファルトを使用した、ポットホール(破損部)補修研修
(協力:ニセコ町都市建設課・ニセコ町道)

トンネル建設工事の視察(協力:小樽開発建設部、鹿島・伊藤・吉本JV)

日本での体験

19名の研修員は、限られた時間でしたが、日本についての理解を深めることもできました。

札幌滞在中、札幌や江別、千歳の学校を訪問し、生徒の皆さんと交流する機会を持ちました。また、札幌市内の大倉山ジャンプ台では冬季オリンピックの開催について学び、石狩平野に位置する札幌市を一望することもできました。日本文化を知るひとつの機会として、日本酒の酒蔵も訪れました。

大倉山ジャンプ台を訪問。札幌市内を一望。

日本最北の石造りの蔵を有する国稀酒造(株)を訪問。

研修参加者の声

カメルーンから参加したVirginie(ヴィルジニ)さん

古いことわざで「道ができれば、そこは発展する」といいますが、これは途上国にとっての道路工事の重要性を示しています。それは、設計や建設だけのことでなく、建設後の保守・検査のことでもあります。こうしたことから、私たちは、北海道での研修で身に着けたことを業務に生かしていきたいと考えています。
今回は、一人の人間として実に得難い体験でしたが、研修を通じ多くの経験を得るとともに様々なこと新たに知ることができました。工事現場の視察では、大規模建設(インターチェンジ、高速道路、トンネルなど)に感嘆し、先進的な建設素材の研究施設も訪れ、また、再生アスファルトという技術についても知ることができました。さらには、私たちの国でみられる土道で大いに役立つ土のうによる道路整備のノウハウも学ぶことができました。
特に、日本では、道路の維持管理・点検や、メンテナンス計画に関してPDCAサイクルが実践されていることに啓発されました。
個人的な体験という点では、やはり日本の美しさが印象的です。海沿いの町小樽、山間部のニセコ町、それにモエレ沼公園やエスコンフィールドなどを訪れました。美しい風景と地域のグルメ、視察先での日本人との出会いや交流、何より江別市の小学校での生徒とのふれあいは、人として素晴らしい体験となりました。
JICAとHIECC(公益社団法人北海道国際交流・協力総合センター)を通じて、素晴らしくもあり有益でもあった今回の機会を提供してくださったすべての関係者及び日本政府に感謝いたします。

<関連リンク>
研修員受入事業

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