【青年研修】タイ/障害者支援 日本の障害者支援の取り組みを知る

2024.02.08

アジア太平洋地域には、およそ10人に1人の障害者がいると言われており、その多くは教育や就労等、社会参加の機会が乏しく必要なサービスを受けられない状況にあるとされています。中進国入りしたタイにおいても、障害者が地域社会の一員として活躍している実績は数多く確認されておらず、障害者をはじめとする社会的弱者支援への取り組みが不可欠です。

2023年11月26日から12月9日まで、国際協力機構(JICA)は宮城県及び福島県にて「障害者支援」をテーマにした青年研修を開催しました。この研修では、タイにおいて障害者支援に携わる行政官/関係機関・団体の若手リーダーが13人参加し、日本における障害者支援の取り組みや現場での活動について学びました。

研修を通じて得たもの

この研修に参加した研修員は、障害者支援、バリアフリーのまちづくり、ユニバーサルデザイン、防災、タイと日本の文化交流など、さまざまな学習活動に取り組みました。この取り組みによって、タイの障害者支援の最先端にいる研修員は、地域社会における知識や必要なスキルを身につけることができました。

障害者の被災体験からの学び

研修の中でも重要なプログラムの一つとして、福島県郡山市や宮城県仙台市、岩沼市で障害者自身が主導するコミュニティでの防災に係る取り組みについて学ぶ機会を設けました。障害当事者や大学の講師、NPO法人の代表を務める講師の方々により、東日本大震災発生時に直面した困難について共有され、研修員は災害によって引き起こされる課題や誰一人取り残さない防災について深い洞察を得ることができました。特に避難方法、避難所や仮設住宅での生活、地元の防災慣行に関する話は、コミュニティ全体を巻き込んだ包括的な防災の重要性を認識することとなりました。一方で研修員からはバンコクでの洪水や、障害者とともに行う避難訓練に関するタイの情報も共有され、日本とタイの事例を通して、講師の方々と研修員の間で相互に学び合う貴重な時間となりました。

福島県郡山市の特定非営利活動法人あいえるの会にて

福島県郡山市の特定非営利活動法人あいえるの会にて

インクルーシブ防災に関する講義の様子

インクルーシブ防災に関する講義の様子

障害者就労支援の取り組みを知る

この研修で研修員は、防災だけでなく、障害者の就労支援に関する具体的な取り組みや、インクルーシブな教育や社会の構築についても学ぶ機会がありました。研修員は宮城県と福島県にある、障害者が日常の生活スキルを習得できる自立移行住宅や自立生活援助について学び、障害者が日常生活で直面する課題について理解しました。さらに、障害者の就労移行支援を行う企業や、障害の有無に関わらず「ごちゃまぜ」をコンセプトとした福祉施設を訪問し、社会での暮らしや就労について知ることができ、大変実りのある研修だったとの声が聞かれました。

日本の障害者就労支援について学ぶ研修員

日本の障害者就労支援について学ぶ研修員

日本の社会福祉の制度を学ぶ

宮城県岩沼市役所(社会福祉課)を訪問し、雇用支援を実現するための社会福祉や法律について学ぶ機会を設けました。この講義によって、どのように障害者を巻き込んだ地域づくりが出来るのか、どのように障害者の雇用を促進し、彼らをエンパワーメントしていくのかを研修員が考えるきっかけとなりました。

文化交流を通じたグローバルな視点

この研修では、学問のプログラムに加えて、保育園児や障害を持つ小学生、生活介護利用者との文化交流体験の時間もあり、参加者同士は日本とタイを繋ぐグローバルな経験を共有しました。若手のリーダー達がタイに戻ってからも、今回得た障害者支援の知識を活かし、障害の有無にかかわらず誰もが安心して生活できる社会の実現に貢献してくれることが期待されます。

障害を持つ子どもたちとの、かるた交流

障害を持つ子どもたちとの、かるた交流

今回の青年研修では、タイの自治体で活躍する若手リーダー達が、防災や雇用促進を含めた、障害のある人もない人も安心して暮らせるインクルーシブなコミュニティの実現に向けて必要な学びを得る非常によい機会となりました。研修で得られた経験は、若手リーダーたちの努力と共に、より包括的で強靱な世界の創造に貢献してくれることでしょう。

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