【国別研修】ウクライナ破壊廃棄物の適正処理と再資源化の推進/戦禍からの復旧に向けて

2024.02.29

2022年からのロシアによる軍事侵略によって、ウクライナでは建物やインフラの損壊を受け大量のがれきが発生し続けています。そのがれきの迅速かつ適正な処理は、同国の復旧・復興に向けて解決すべき大きな課題となっています。

数々の自然災害に見舞われてきた日本。東日本大震災を経験した東北地方では、当時大量の災害廃棄物が発生し、復旧に向けて迅速な処理が求められ、廃棄物処理技術やリサイクル方法などの知見が蓄積されてきました。このような廃棄物処理に関する技術・知識を戦禍で被害を受け多量の破壊廃棄物を抱えたウクライナの復興支援に役立てるため、国際協力機構(JICA)は、ウクライナの中央省庁や地方自治体の廃棄物処理担当者8名を日本に招き、関連施設・機関への訪問、視察を行ない、こういった知見を共有しました。

ウクライナ国破壊廃棄物の処理課題

2024年1月25日~2月8日まで実施されたこの研修では、まず初日に研修員同士の間で現在のウクライナが抱える課題について意見交換が行われました。主な課題として、がれきに地雷や不発弾が混入しており迅速な処理が難しい場合があること、がれき処理を担う地方自治体への中央政府からの財政的な支援がないこと等が挙げられました。

東北災害復旧からの学び

未曾有の自然災害から復旧・復興を遂げた東北でのこれまでの知見・経験を共有するため、宮城県仙台市、石巻市、福島県大熊町にて廃棄物処理方法を学ぶ機会を設けました。今回の研修では、各自治体から災害からの廃棄物処理事業概要について説明がなされ、実際の処理施設の視察が行われました。東日本大震災では、発生した大量廃棄物処理に対応するため自治体・大学・民間企業が連携し協力したことも大きな特徴でした。東北大学・秋田大学・京都大学・鹿島建設の講師からは、廃棄物処理に当たって計画の策定から、処理施設の設置、処理方法、廃棄物の分類、リサイクル方法等、そしてこれからウクライナが直面するであろう課題についての講義やディスカッションが行われ、研修員は真剣な眼差しで聴講し、また数多くの質問が交わされました。

自治体(宮城県)による廃棄物処理事業概要の講義

自治体(宮城県)による廃棄物処理事業概要の講義

宮城県石巻市での廃棄物処理の仮置き場跡地視察

宮城県石巻市での廃棄物処理の仮置き場跡地視察

災害廃棄物処理方法に関する講義の様子

災害廃棄物処理方法に関する講義の様子

講師陣との集合写真

講師陣との集合写真

帰国後の取り組みについて

研修では、日本で学んだ知見を帰国後に役立てるため、研修員はそれぞれのアクションプランを作成しました。中央政府から参加した研修員は、戦争終結後を見据えて建設リサイクル制度の構築に取り組むこと、地方自治体から参加した研修員はがれきのリサイクルのための具体的な取組としてアスファルトプラントの設立などの案が発表され、研修員及び日本の環境省、JICAも含めた意見交換を行いました。ウクライナ国中央政府と地方自治体職員双方の異なる立場からの意見が交わされたことは、これまでウクライナ国内で交流の場がなかったと思われることから、研修員にとって非常に有意義なものとなりました。

アクションプラン発表会の様子

アクションプラン発表会の様子

今回の国別研修では、戦禍による多大な被害を受けたウクライナ国が、がれき処理から復旧の為の道筋をつけるために、日本の省庁・自治体・大学・民間企業など様々な関係者からの協力を得て、研修が行われました。日本の災害廃棄物処理や建設リサイクルを定める制度、地方自治体の取組、処理技術などを学ぶ機会を設け、ウクライナにおけるがれき処理のモデル事業の成果発現及び関連する廃棄物管理能力の向上する支援を行いました。研修に参加したインフラ開発省コストロフ・イリア主任専門家は「日本は自然災害による被害で、ウクライナは戦争による被害で災害自体は違うが、破壊によって発生したがれきは同じだ。日本の経験は貴重だ。がれきの処理の仕方については必ず日本の経験を持ち帰ってウクライナでもできることをしたい」と話しました。この研修で得られた知見は、これからのウクライナ復旧・復興に大きく貢献することでしょう。

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