南スーダンでスポーツをとおして平和を実現!! 母国の平和のために走る!!

2023.08.07

7月26日に南スーダン国別研修「スポーツ行政/スポーツ振興」の研修員達が静岡県御殿場市陸上競技場で開催された(株)SHARKSと南スーダンのオリンピック選手による子供向け陸上教室を視察しました。

南スーダン国別研修「スポーツ行政/スポーツ振興」の研修員達が
(株)SHARKSおよび南スーダンのオリンピック選手による陸上教室を視察

陸上教室の子供達といっしょに

南スーダンは2011年に独立を果たした世界で最も若い国です。独立後も2度の内戦をはじめ、部族間の対立、経済苦境、行政機関の機能不全など、特に若い世代がその影響を受け、社会での行き場が失われつつあります。JICAは2016年より、南スーダンにおいて全国スポーツ大会「国民結束の日(NUD:National Unity Day)」の開催を支援し、異なる部族の選手間交流を促すことで平和及び国民融和への貢献を試みてきました。その核となる取り組みとして、2019年11月より技術協力プロジェクト「スポーツを通じた平和促進プロジェクト」を実施しています。

7月26日に同プロジェクトの一環として南スーダン国別研修「スポーツ行政/スポーツ振興」の研修員達が、静岡県御殿場市で開催された株式会社SHARKS「阿見アスリートクラブ SHARKS」(以下、SHARKS)と南スーダンのオリンピック選手による子供達向け陸上教室を視察しました。 

SHARKSは、中距離をメインとした陸上クラブです。当初、11名のメンバーで開始して、現在では、300名規模の会員数があり、日本記録保持者も同社の楠康成CEOをはじめとして複数名在籍しています。また、8月に北海道で実施予定のインターハイに出場予定の選手も在籍しています。
南スーダン代表で東京オリンピックにも出場したグエム・アブラハム選手は同社のスタッフとして雇用されており、陸上教室のコーチや、パリオリンピック出場を目指して、日々、トレーニングしています。

陸上教室でのトレーニングの様子①

視察に訪れた南スーダンの青年・スポーツ省等から参加した研修員達は、アブラハム選手に面会することで、「母国の平和のために走る!!」という同選手の熱意や、パリオリンピックを目指して日々トレーニングしている様子を直接実感することができ、非常に感激していました。
今回、視察させていただいた子供達向け陸上教室では、現役の日本記録保持者を含むトップアスリートのコーチ陣が直接指導しており、まさしく飛ぶように走るトレーニングメソッドは必見です。同メソッドを南スーダンでも導入すれば、同国においても飛躍的に陸上分野での記録が伸びると思われ、南スーダンでも同様な陸上教室を開催したい気運が研修員間でも高まっていました。
また、アブラハム選手にとってはSHARKSで活動することにより、走るための技術スキルや練習場所等の環境面が向上することで、自身が持つ南スーダンのレコード記録を度々更新しています。
さらに、「母国の平和のために走る!!」というアブラハム選手の熱意は、SHARKS側にとっても陸上教室の子供達にもメンタル面でとても良い影響を与えており、非常に良い関係となっています。

陸上教室でのトレーニングの様子②

陸上教室でのトレーニングの様子③

南スーダンのアブラハム選手による中古シューズの寄贈企画

現在、南スーダンのアブラハム選手が中心となって、アルペンやXebio等のスポーツショップとコラボして、中古シューズのドネーションの企画を実施中です。9月にはアブラハム選手が企画している「アブラハム・プロジェクト」を南スーダンにおいて実施予定で、同イベントの際に、寄付された中古シューズを南スーダンの子供達や陸上選手に贈呈することを検討中です。

同プロジェクトは、今回、視察したSHARKSが実施している子供向け陸上教室をモデルとしていて、アブラハム選手がコーチとなり、今回の視察に参加していた南スーダン国の青年・スポーツ省やJICA 南スーダン事務所ともコラボレーションして、南スーダンの子供達や陸上の選手を対象に陸上教室を開催する予定です。

【(株)SHARKSおよび南スーダンのアブラハム選手による講義と意見交換の様子】
(中央左)SHARKSの楠康成CEO、(中央右)南スーダン代表のアブラハム選手

今後の展望

また、来年度からは、全世界を対象に、「開発途上地域におけるスポーツのアクセス向上を通じてより多くの人々がスポーツによる恩恵を受けられる平和な社会の実現を目指す」ための課題別研修「スポーツ行政/スポーツ振興」のコースを新規に立ち上げ予定です。同研修においても今回のような先進的な子供達向けの陸上教室の視察は、研修員達にとっても子供達にとってもインパクトが強い有意義な研修になることが予想されます。
スポーツを通じて育まれた絆が新たな力を生み出し、自他共栄の精神に基づく共生社会の実現や、地域振興の推進などの社会を変えるきっかけになるーこのような道筋をJICAは研修事業を通じて目指していきます。

(JICA東京 人間開発・計画調整課 井上 裕二)

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