ルワンダで農業を追求したい!ルワンダ産ブランド豚の普及に取り組む~木下一穂~

2023.08.15

国内外で活躍するJICA海外協力隊帰国隊員のインタビューシリーズ「協力隊経験を未来へつなぐ」。第3回は、『帰国隊員社会還元表彰』のアントレプレナーシップ賞を受賞した木下一穂さんです。木下さんはルワンダで養豚、養蜂、マカダミアナッツの生産・販売を行う会社を立ち上げました。豚やナッツという現地にあるものを無駄なく使い、独創的な循環型農業を実現しています。ルワンダという厳しい環境で農業を行う難しさなどを伺いました。

偶然仲良くなった人から勧められ、JICA海外協力隊へ

―国際協力やJICA海外協力隊を目指したきっかけは何ですか?
木下一穂さん(以下「木下」):明治大学農学部を卒業後、日本の飼料会社とトマト農家で働いていました。そこで出会った農業をされている方は、それぞれのやり方を確立して自信をもっており、私もいつかは「自分だからこそできる仕事」をしてみたいと思っていました。
そんな中、偶然仲良くなった人に青年海外協力隊を勧められたのが大きなきっかけです。それまでは海外やボランティアへの関心はなかったのですが、日本で今後どうしようかと考えていた時期でもあったので、海外に行くのはチャンスだと思い、応募しました。
希望の地域としては、最初は西アフリカに憧れていましたが、最高気温40℃越え、水・電気なしという情報に怯んでしまい、東アフリカのルワンダ共和国を第一希望にしました。

薬剤が手に入らないため輪作や袋栽培で工夫

―ルワンダでは、具体的にはどのような活動を行いましたか?
木下:カヨンザ郡庁に配属されビニールハウスでトマトを作っている協同組合のサポートで、薬の撒き方や販売などのアドバイスを行いました。通常、トマトづくりの2年目以降は連作障害が発生します。日本では薬剤を使って抑えますが、ルワンダでは手に入らないため輪作※1や袋栽培※2を提案しました。
当時、ナクマットという大きなスーパーマーケットにトマトを販売できたときはみんなで喜びました。その後、スーパーマーケットのオーダーに応えることができず、結果的に一過性のものになってしまい、高品質のトマトを安定的に供給することができず実力不足を痛感しました。JICA事務所の所長や調整員の方が応援してくれていたのですごく活動しやすかったです。
※1同じ土地に別の性質のいくつかの種類の農作物を何年かに1回のサイクルで作っていく農業の手法
※2袋に培養土と肥料を入れて野菜などを栽培すること

隊員時代のトマト収穫の様子

ルワンダで農業を追求したいと思い、ルワンダで循環型農業に挑戦

―なぜルワンダで農業をしようと思ったのですか?
木下:帰国が近づくにつれ同期隊員が就職活動を始めていて、自分はどうしたいのかを考えたところ、もっとルワンダで農業を追求したいと思いました。
―ルワンダという厳しい環境での農業は計り知れない苦労があると思いますが、どのような難しさがありますか?
木下:立ち上げ当時は日本人もほとんどおらず、またルワンダという国の土地や建物の権利関係の制度も整っていなかったので、その点で苦労しました。
当初は養蜂からはじめ養鶏、ツリートマトやパッションフルーツを栽培し、ジャムやケーキ、クッキーといった加工品も作りました。
そうした中で、製品を従業員が食べてしまう、業者に買いたたかれるという問題が出てきました。そこで従業員がすぐに食べられず、日持ちがする養豚とマカダミアナッツを中心に事業展開することにしました。蜂が蜜を採ることができる果樹としてマカダミアナッツを植え、バランスの良い肥料を作るため豚を買い、飼料を作るためトウモロコシやキャッサバを植えて、と試行錯誤していたら、気が付いた時には循環型農業ができていました。
これは隊員時代にルワンダの農家がやっていた配合飼料や化学肥料に頼らない農法の影響を受けています。

蜂蜜の商品

子豚の放牧の様子

1人では大したことはできない

―従業員の方との関係構築で工夫されていることはありますか?
木下:どんなに頑張っても1人では大したことはできません。うまくいくためには地域や時代に合ったビジネスモデルであることと、それを実行できるチームが必要であると感じました。
当初は見ていなければ働かない、会社のものを盗む従業員しかいない中で、このままのやり方を続けてもダメだなと思いました。まずは従業員の中で変われそうだと感じた3人と徹底的に向き合い、衣食住を共にする中で徐々に本音や会社で起こっていることを話すようになりました。その中で私の役割は会社と従業員を同じ方向に向かわせる環境を整備することだと思い、現場は徐々に3人に権限委譲していきました。

―今後の展開などを教えてください。
木下:直線型経済で発展してきた先進諸国も徐々に循環型経済に移行しつつある中で、国と企業が連携し、すべての製品が循環できる仕様になっていくと考えています。当社は循環型農業の中で昆虫養殖の実用化を目指していきます。消費者のニーズにこたえる製品の生産、技術革新をし、当社の製品でタンパク質不足の子供たちを減らしていきたいです。

農場での木下さん

循環型農業=後進的ではないことを証明したい

―ルワンダで農業を行う木下さんを突き動かす原動力は何ですか?
木下:循環型農業=後進的な農法ではないことを証明したいというのが私の原動力です。循環型農業の中からどのように安定的に収量を上げるのか、高品質な商品を作るのか、革新的なことをするのかに挑戦していきます。またサポートしてくれる従業員や応援してくれる方々の期待に応えたいという気持ちも原動力になっています。

デッロック種の母豚

挑戦する方へのメッセージ

―最後に、これから何かに挑戦したいと思っている方や協力隊応募を考えている方へメッセージをお願いします。
木下:私はルワンダで農業をしていますが、何をすればよいかは人それぞれなので、何かを始めてみることで見つかることがあると思います。途上国では日本の考え方とは大きく異なります。そのため日本ではうまくいっていた方でも途上国での進め方に苦労していたり、未経験の方が大きな成果を上げたりしていますので、とにかく挑戦してみてください!

プロフィール

木下一穂:明治大学農学部卒業後、飼料会社とトマト農家で働く。2013年1月から2015年1月の期間に青年海外協力隊野菜栽培隊員としてルワンダ共和国カヨンザ郡庁に配属される。2015年3月にルワンダ共和国でRWA MITTU LTD.を設立する。

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn
一覧ページへ