世界の妊産婦の健康改善に向けて~4年ぶりに来日研修を実施しました!~

2023.08.22

世界では、2分に1人の割合で妊娠・出産中の女性が亡くなっています。SDGsでは、2030年までに妊産婦の死亡率を10万人当たり70人未満まで削減することを掲げており、目標の達成に向けてJICAでも様々な取り組みを行っています。その1つ、「妊産婦の健康改善」研修をご紹介します。

4年ぶりに来日プログラムを実施!

「妊産婦の健康改善」研修は5月に始まり、約2か月間にわたって実施しました。今年度はオンラインプログラムに加えて、4年ぶりに来日プログラムを実施し、アンゴラやインドネシア、コモロなど、9か国から12名が参加しました。
来日前のオンラインセッションでは、動画教材の視聴や講師とのディスカッションを行い、各研修員が自国で抱える課題を整理しました。そして来日後の講義や視察を通じて、本研修の目標である母子保健の改善を目指した活動計画の作成に取り組みました。
本研修は2010年より、公益財団法人ジョイセフに委託し、実施・運営されています。講義ではジョイセフに加えて、JICAの国際協力専門員や海外からのパネリストなど、様々な講師が登壇し、日本の母子保健における経験や知見だけでなく、アジア・アフリカでの実践など、研修員が取り入れやすい事例の提供を行いました。また、東京かつしか赤十字母子医療センターやみどり助産院などを視察し、実際に施設やサービスを目にする中で、利用者とのコミュニケーション、ニーズや感情に配慮した、尊厳あるケアについて学びました。研修員からは「視察先の皆さんは、これから母になる女性たちに、安心や自立性、前向きな出産体験を与えることを大切にしていました。こうした妊産婦ケアは、女性に対するエンパワメントの大きな一例だと思います」との感想が聞かれました。
これらのプログラムを通じ、思春期や女性、母子に対する質の高いサービスの提供や、そうしたサービスにアクセスできる環境づくりの重要性について理解を深めました。

本研修に参加した研修員の皆さん。ともに講義を受けたりディスカッションしたりする中で、研修員同士の仲も深まりました。

研修の学びを自国で活かすために

来日プログラムの終盤には、これまでの学びを活かし、母子保健の改善を目指した活動計画を作成しました。2日間、講師からコンサルテーションを受けつつ、他の研修員とディスカッションを行い、具体的かつ効果的な活動計画を目指しました。その後の発表では、保健施設の質向上ツールである5S-KAIZENの実践や、母子手帳の有効活用に向けた見直しなど、各国の課題に適した計画が紹介されました。例えば、パキスタンの研修員は、自国の避妊率が低い点に着目し、家族計画のカウンセリングサービスを利用率の高い乳幼児予防接種の機会と併せ、母子保健サービス全体へのアクセスを増やす計画を立てていました。また、発表の最後には、研修員が自身の活動に対する意気込み(コミットメント)を述べ、「(自身の計画を実行し)リスク妊娠の早期発見の機会を増やす」といった決意や「思春期世代の未来のために絶対に諦めない」といった熱い想いが語られるなど、各自のモチベーションが非常に高まった中で来日プログラムを終えました。

ディスカッションを重ねながら計画を作成しました。

妊産婦の健康改善に向けて、歩みを続ける研修員たち

来日研修から1か月後、活動計画の進捗状況を共有するオンラインセッションを実施しました。帰国後、所属先関係者への研修内容の共有や活動に向けたミーティング、NGOを含む関係各所への協力要請、セミナーの実施など、活動計画が着実に進められている様子が紹介されました。研修員が立案した計画が周囲の賛同・サポートを受けて実際に行われる、このことが研修員自身の達成感や自信につながっているようでした。さらに、各発表に対して他の研修員から激励のメッセージが送られるなど、「妊産婦の健康を改善する」という同じ志を持つ研修員たちがお互いに支え合い、高め合う様子も見ることができました。
本研修のプログラムは終了しましたが、研修員の皆さんにとってはここからが本当のスタートです。JICAは引き続き、研修員の皆さんの活動をサポートしていきます。

オンラインセッションでの一枚。研修員一人ひとりから帰国後の活動を紹介してもらいました。

   
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