田中明彦JICA理事長が株式会社日建(山梨県)を訪問

2023.07.31

株式会社日建製地雷除去機。その大きさがわかります。中央左に雨宮CEO会長、その左隣に田中JICA理事長。

2021年7月25日、田中明彦JICA理事長は山梨県北杜市「いこいの杜コミュニティーパーク」を訪問しました。ここでは、日本の地雷除去機の主要なメーカーである株式会社日建の地雷除去機実機を視察することができます。

対人地雷で汚染されている国は67か国もあり、これらの地雷による死傷者は2021年だけで少なくとも5,000人以上にもなるといわれています。地雷は、地中に埋設されているため発見が困難であり、かつ一度埋められた地雷は長年にわたり爆発の危険が継続します。そのため、紛争が終了した国でも未だに地雷による被害が発生しており、また被害者の方々のほとんどが民間人である等、人々の平和な生活を脅かすものです。

地雷の発見と除去は危険が伴う作業ですが、今でも多くの地雷除去は除去員の手作業で行われています。その作業を機械化することで除去員の安全確保や、地雷をしっかりと処理しきる、後々まで残さない除去作業が可能となります。

株式会社日建は、2000年から世界各国に地雷除去機を納入している数少ない日本企業の一つです。カンボジアやアンゴラ、ラオスといった地雷や不発弾問題に直面している国に対し、これまでに合計137台もの地雷除去機を納めています。

なかでも長いアームのついた地雷除去機は「油圧ショベル型」と呼ばれるもので、日建が独自に開発したものとのこと。現在もカンボジアなどで運用されています。この「油圧ショベル型」地雷除去機は、安全性の高さのみならず、ワイヤーなどを使ったトラップ型の爆発物の処理にも対応できるものであり、地雷や不発弾処理に苦しむウクライナから強く供与を要望されている機材の一つです。

2023年1月にはウクライナで人道的地雷処理を担当する国家非常事態庁(SESU)が日建を訪問し、日建製の地雷除去機を視察しました(注1)

雨宮CEO会長は、地雷除去の難しさ、そして日建による長年にわたる地雷除去への取組みなどについて紹介しました。

田中理事長は、直前のウクライナ訪問の成果も踏まえ、①地雷除去に当たっては除去作業中、そして除去後の安全確保が極めて重要であること、②ウクライナ側の切迫したニーズに対応するため、一刻も早くの地雷除去機供与を目指したいこと、③安全確保や供与した機材の効果的・効率的な運用のためには人材育成が極めて重要であることを述べました。

雨宮CEO会長は、長年にわたる地雷除去に携わった経験から、地雷除去は機械の導入のみで全てが解決できるものではない、中長期にわたる努力が必要である、と明言。田中理事長が指摘した人材育成の重要性については深く同意するところであり、日建としても協力していきたい、また機材の早期納入についても全力で取り組みたい、と述べました。さらに、人材育成にあたっては20年にわたり地雷除去に取り組み、今や世界を代表する人道的地雷除去機関であるカンボジア地雷対策センター(CMAC)の知見の活用が有用ではないかと示唆しました。

地雷除去機デモの模様。除去機は巨大ですが、数センチ単位の上げ下ろし調整といった繊細な操作も可能です。

ウクライナの地雷・不発弾対策は、緊急でありかつ中長期的な取組が必要な課題です。JICAは、この課題に、日建に代表される日本企業、そしてCMAC等これまでJICAが協力してきた海外のパートナーとも連携しつつ、ウクライナの方々に寄り添った協力を、迅速かつ中長期的に推進してまいります。

(注1)2023年1月のSESUの来訪の模様は以下の通りです。
ウクライナ非常事態庁が地雷除去に関する視察で北杜市訪問 | 2022年度 | トピックス | JICA横浜 - JICA

(参考)その他のJICAによるウクライナ地雷対策支援については以下をご覧ください。
日本の技術でウクライナの地雷除去へ! カンボジアで日本製の地雷探知機の研修を実施 | 2022年度 | トピックス | ニュース - JICA

ウクライナ向け人道的地雷・不発弾対策能力強化プロジェクトを開始:ウクライナ非常事態庁にクレーン付きトラックを供与 | 2022年度 | ニュースリリース | ニュース - JICA

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