【実施報告】パネルディスカッション「外国につながりのある子どもたちを支援する国際教育コーディネーターの役割について」

2023年6月24日（土）、JICA横浜が主催し、神奈川県教育委員会に共催いただいたパネルディスカッション「外国につながりのある子どもたちを支援する国際教育コーディネーターの役割について」が開催されました。日本の学校に通う外国につながりのある子どもたちが増加する日本社会で、これからの学校はどうあるべきか、現場で活躍する経験豊富なパネラーと考える機会となりました。当日はオンライン配信で約140名の方が視聴されました。

●パネリスト：
外国につながりのある児童・生徒等の支援の経験がある県内の現職教員3名
　粟根幸子（愛川町立中津小学校）
　矢野あゆみ (大和市立渋谷小学校)
　柿原莉沙 (横須賀市立汐入小学校)

●ファシリテーター：JICA横浜 技術顧問（多文化共生）滝坂信一

冒頭、登壇者3名よりそれぞれが勤務する3校（愛川町立中津小学校、大和市立渋谷小学校、横須賀市立汐入小学校）の現状についてスライドを使った発表が行われました。

愛川町立中津小学校は、全校生徒434名に対し、全体の25.8%にあたる112名を外国につながる児童・生徒（計18か国）が占めている現状が報告されました。昨年度から初の「国際教育コーディネーター」が配置され、同コーディネーターに期待される機能、役割が説明され、コーディネーターの粟根幸子教諭（教頭）の1年間の活動経験が報告されました。

矢野あゆみ教諭が勤務する大和市立渋谷小学校は全校児童609名に対し、外国につながる児童は11%、学区内に神奈川県最大の公営団地である県営いちょう団地があり、多国籍化で全国でも有名となっている現状が報告されました。国際教室担当である矢野教諭と教育相談コーディネーター、担任、管理職とどのように連携して活動しているかが報告されました。

柿原莉沙教諭が勤務する横須賀市立汐入小学校には国際教室はありませんが、97名の全校児童に対し、外国につながりのある児童数は24名で約25%を占めます。そのうち、約30%の児童が日本語指導を必要とすると思われる状況とのことです。同校でも支援教育コーディネーターと担任、管理職が連携する校内体制が構築されています。

このようなパネリストの勤務先の状況を踏まえ、登壇者3名のディスカッションが行われました。国際教育コーディネーターを務める中津小学校の粟根氏は「国際教育コーディネーターの役割」として以下のように提言しました。

「愛川町ではこどもたちも先生も地域も保護者も、多様化を受け入れて生活しており、これは強みだと感じます。他方、クラスの3割の子が外国に繋がっている場合もあり担任はとても大変です。外国につながりのある児童とその他の全児童をどうつなげていくのかを考えることが大切です。教職員、日本語指導教室職員、インクルーシブサポーター、日本語指導協力者が連携することが大切で、彼らを整理してつないでいくのが国際教育コーディネーターの役割だと思います。」

そして、会の最後には神奈川県教育委員会の教育委員を務める笠原陽子氏が以下のとおり今回のパネルディスカッションを総括しました。

「神奈川県は『ともに学びともに育つ教育』として、すべての子供達に等しく教育を行っていくことを大切にしてきました。様々な教育的課題を持つ子ども（不登校、外国につながりのある子）の問題は、周囲の理解や指導の工夫、柔軟な教育システム、適切な教育環境を作ることが重要です。

カリキュラム・マネジメントの中心にあるのは多様な子どもたちへの支援であり、柔軟なカリキュラムを各学校が実態に合わせて考えていく必要があります。加えて保護者・地域が学校に関わっていくことも重要です。様々なステークホルダーを「整え、つなぐ」事が重要です。

今回登壇された３名は、様々な環境の中でそれぞれの知識と経験をつないだ経験を持っています。今後、神奈川県の中で市町村の取り組みを支援し、義務教育段階の外国につながりのある児童、生徒を含むすべての子供達がよりよく生きられる学習、学校環境を作ってきたいと思います。」

本パネルディスカッションを通して、子どもたちのために何を大事に考えなければならないのか、すべての子どもたちが幸せに暮らしていける社会、学校のために何が求められるのか、参加者一人ひとりが自分ごととして考えるきっかけとなりました。

参加者からのアンケートでは「当事者の意見が聞けて勉強になった」「学校社会を変えていく必要を感じた」などの感想をいただきました。

2023年度第5回パネルディスカッションも今年度中に開催予定です。日程は決まり次第、JICA横浜のホームページやFacebookにて掲載致します。みなさまのご参加をお待ちしています。