【インターンが伝える研修】チリ 高齢者支援のための地域モデル形成支援研修

2023.10.02

2023年8月28日(月)~9月1日(金)の1週間、「高齢者支援のための地域モデル形成支援研修」が行われました。チリから計7名の研修員が横浜を訪れ、講義や視察を行いました。

本研修の内容

チリはラテンアメリカの中で最も高齢化が進んでいる国の一つで、チリ高齢者庁(SENAMA)によれば、60歳以上の人口は総人口の約19%近くに達しています。チリでは公的な介護制度が確立されていないため、家族による介護が一般的ですが、家族からの支援を得られない高齢者も増加しています。また、民間の介護サービスは高所得者しか利用できないという格差も指摘されています。

他方で、日本には介護保険制度があり、高齢者の介護を社会が支える仕組みとして機能しています。介護が必要になった人は誰でも、少ない負担で介護サービスを受けることができます。

討議の様子

討議の様子。高齢者庁(SEMANA)長官クラウディアさんの「チリの組織はトップダウン型で規律が多いが、日本のように柔軟で各組織に裁量権の大きい制度を取り入れていきたい」との言葉が新鮮で印象的でした。

本研修では、日本の介護支援政策の中でも地域支援モデルに着目し、様々な団体が連携して高齢者支援に取り組むシステムについての講義や施設視察が行われました。より多くの人が包摂される公的な高齢者支援制度を目指すチリにとって、日本のシステムについて理解を深めてもらい、制度の実現に向けて新たな視点を持ってもらうことが、本研修の目的といえます。

私が同行させていただいた8月31日のプログラムは、横浜市社会福祉協議会の方からの講義と、横浜麦田地域ケアプラザの視察が行われました。講義では、横浜市の高齢化の現状や地域ケアプラザの機能について詳しく紹介されました。チリにはない制度である、民生委員・ボランティアについての議論が最も盛り上がりました。

横浜麦田地域ケアプラザへの訪問では、所長から活動についての詳細な説明を受けながら、施設を見学しました。最初に訪れたホールではフラダンス教室が開催されており、研修員も飛び入りで参加しました。振り付けの指示は日本語で行われましたが、研修員も利用者の方々に合わせて一緒に踊り、楽しいひとときを共有しました。

午後のJICA国際協力専門員の中村さんの講義では、日本の法律や介護保険制度についても議論が尽きませんでした。中村さんからは、帰国後も全国レベルでの介護保険の仕組み作りのためのオンラインセミナーを行う提案もあり、今後の連携が期待されます。

最終日には、アクションプランの発表と閉講式が行われました。アクションプランでは、最終的な目標として男女同額の年金と、家族以外の第三者を巻き込んだ介護システムの構築が述べられていました。この中で、日本で高齢者が高齢者のサポートをするように、「老いることは人生の一通過点に過ぎない」という意識を広めることが具体的な行動案として示されました。チリの研修員が日本の大きな特長と捉えた、「高齢者も他者へのケアに参加する社会」の実現を推進するステップとなる、素晴らしいスローガンだと感じました。

あとがき

本研修に同行させていただきました、JICA横浜センター研修業務課インターンの深川真優です。

研修を通じて、日本の制度が柔軟であることや、高齢者自身のケア意識、ボランティアコミュニティが参加者の居場所になっている点など、日本にずっといた自分が気づいていなかった特長を知ることができました。特にボランティア活動に関して、「高齢になっても他者との交流や支援をあきらめない意識」という側面があることを知りました。高齢化自体をネガティブに捉えるよりも、高齢化が進む中で何が日本の強みとして機能しているかに目を向ける重要性に、改めて気が付きました。同時に、異なるバックグラウンドを持つ人からの視点がいかに重要なものかを実感した経験となりました。

私は1年前にスペイン語の勉強を始め、研修員との簡単な日常会話を楽しむことができました。ネイティブスピーカーに自分のスペイン語が伝わったときは、非常に嬉しかったです。初日からの明るく活気にあふれた雰囲気は最終日まで続き、積極的な姿勢、協力する姿勢が光りました。

本研修は、日本とチリの間で知識や経験が共有され、互いに新たな気づきを得た貴重な機会となりました。行動力に満ち溢れた研修員の方々が今後どのようにプロジェクトを実現されるのか、楽しみです。

最終日

最終日、アクションプランの発表は、2時間に渡りました。

日本食を楽しむ様子

日本食を楽しむ様子も!この日はハヤシライスでした。

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