【実施報告】国際教室及び国際担当者向け研修講座の実施

2023.10.05

2023年8月7日(月)、8日(火)の2日間、JICA横浜は、神奈川県教育委員会と共催で、「国際教室及び国際担当者向け研修講座」を実施し、主に外国につながりのある児童・生徒を担当する神奈川県の教職員22名が参加しました。2日間の研修内容は下記の通りです。 

1日目:外国につながりのある児童・生徒の現状・背景を知る

初日の神奈川県教育委員会・指導主事の講義では、クイズ形式で神奈川県内の外国につながりのある児童・生徒の現状について考えました。受講者は、外国につながりのある児童・生徒については、日本語が通じる親戚・知人等の有無も含めて、丁寧に情報を収集することがその後のサポートにつながることや、外部の支援団体の資料等も活用し、日本の学校制度や生徒が学校で必要となる持ち物について説明することが重要であると確認し、保護者が抱える困難に寄り添う支援を心がけることの大切さを学びました。

ミャンマーに派遣されていたJICA海外協力隊経験を持つ教員による算数の模擬授業では、ミャンマー語で授業を受けることで、日本語がわからない子どもたちの状況を体験しました。参加者からは「言葉が分からない中で授業を受けるのはつらく、時間が長く感じる。」「無言になる。固まる。理解しようとして、教師をじっと見る。一方で、分からないからこそ『自分を当てないでほしい』という気持ちになった。」「イラストの有用性、また、ジェスチャー・笑顔があると、安心することがわかった。ゆっくり大きく話すことも大事だと再確認した。」といった感想がありました。

外国語での算数の授業体験

外国語での算数の授業体験

午後は、公益財団法人海外日系人協会の学芸担当より、「日本からの移民の歩み」に関する講義があり、その後、引き続き海外移住資料館を見学しました。

「にっぽん丸が最後の移民船だったことを初めて知った。」「『日系』と『Nikkei』は異なることなど、日系人という言葉は聞いたことがあっても、その中身まで考えたことがなかった。」「移民がその国で受け入れられるまで半世紀かかるという話を聞いて、私たちに何ができるかを問われていると感じた。」「日本からの移民が海外で経験してきた苦労や功績は、今、日本国内で、外国につながりのある児童・生徒やその保護者が辿ろうとしていること。多文化共生において、日本人移民の歴史から学ぶことは多いと感じた。」という感想がありました。

海外日系人協会の学芸担当の講義

海外日系人協会の学芸担当の講義

加えて、進路指導を行う上では、在留資格の知識が必要になるため、導入として、「【在留支援】外国籍の中学生・高校生のみんなへ~将来就職して働くために~」という題の法務省の動画の一部を視聴し、働くことができる在留資格と、働くことができない在留資格の違いを学びました。

2日目:個別の指導計画・現職教員による実践事例・日本語と教科の統合学習について考える

2日目は、初めに「生活言語」と「学習言語」の違いを学んだ後、個別の指導計画の作成の仕方について学びました。「自分が作成した個別指導計画が良いのか分からず、アドバイスをもらえて安心した。」との声がありました。

実践事例の紹介では、ブラジル・ホンジュラスにそれぞれ派遣されていたJICA海外協力隊経験を持つ教員2名より、実際に国際教室でどのような取り組みを行っているか、絵カードを使った具体的な指導方法も交えた実践例の紹介がありました。

また、神奈川県教育委員会・指導主事より、サバイバル日本語指導の初期段階において、日本語が伝わることの楽しさを児童・生徒に学んでもらうことの工夫を行うことが、その後の児童・生徒の日本語学習意欲につながるという話を、これまでの経験も踏まえて行ないました。

テーマ別に発表

テーマ別(日本語指導、校内連携、家庭との連携、外部機関・地域との連携)に分かれて情報交換をし、グループごとに発表

参加者の声

研修に対する総評価は、16名が「大変参考になった」(72.7%)、6名が「参考になった」(27.3%)と回答。

Q:本研修を振り返って、総評価は以下のどれにあたりますか。

以下のような参加者の声があがりました。

「同じ県内にいるのに、外国につながりのある児童・生徒の状況を知らないことについて、ショックを受けた。初心に戻り、考えることができた。」

「明日からすぐ実践できそうな内容をたくさん学べた。」

「一番刺激があったのは、ミャンマー語での算数の授業を受けたこと。言葉が通じないとはこういうことかと分かった。外国につながりのある児童・生徒にとって、日本語が少しずつ生活の中で使えるようになるように、根気よく指導していければと思う。周りの先生にもこの体験を教えたい。」

「普段交流する機会がない他の先生方と話す機会がたくさんあり、有意義な時間だった。中学生を指導する中で日本語の伸び悩みを感じていたが、小学校の先生方と話す中で、圧倒的に母学級での生徒同士の交流が足りない中学校の現状に気づいた。2学期からは母学級との連携を工夫していきたい。」

「外国につながりのある児童・生徒の担当ではないが、将来の必要性を考え参加した。外国語教育と日本語教育は評価方法なども含めて共通している点が多く、教材がそのまま利用できる部分があることに気づいた。」

「国際教室担当の役割の大きさに改めて気付かされた。コーディネーターとして、指導者として、母国のアイデンティティを大切にしながら教育実践を充実させていきたい。」

「現場での指導では、目の前のことで視野が狭くなってしまいがちだったが、豊富な研修内容を通して新しい視点を持つことができ、自身の視野が広まった。夏休みでないとこの時間は取れないので貴重な機会だった。」

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「外国につながりのある児童・生徒支援」という共通テーマの下、県内の各地域から関係者が集い、横のつながりを築きながら学び合う2日間になりました。子どもたちには言葉の壁があります。伝えられないもどかしさを抱えながら、それでも何か子どもたちを明るく照らしてあげられる道はないかと教員は現場で奮闘しています。また、支援団体を立ち上げた教員、保護者との意思疎通に日々奮闘される教員など、講師のみならず、それぞれの参加者の経験や実践を共有し、学び合う機会になり、一人一人の日々の取組や工夫を共有できました。

この度、JICA横浜HPで一般公開となった「11か国の教育制度・学校文化ガイド集」が参加者に紹介されました。教育関係者に利用してもらい、引き続き、どのような苦労や困りごとがあるか考えていく必要があります。

〈参考〉11か国の教育制度・学校文化ガイド集

〈参考〉昨年度の実施報告

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