マイノリティーの声を全国の視聴者へ:支局開設式開催-コソボ・メディア支援-

掲載日:2022.06.12

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技術協力プロジェクト「コソボ公共放送局(RTK)能力向上プロジェクト フェーズ2(2021年1月~2024年1月)」の一環として、同国南部の多民族都市プリズレンで6月12日、RTK初の支局が開局しました。2008年の独立宣言から14年。民族間対立が癒えないコソボで、新支局は全ての民族に正確・公平・公正な情報を届け、和解に向けたメッセージを発信する拠点となります。

コソボは旧ユーゴスラビアを構成していた6共和国の一つ、セルビアの自治州でしたが、1990年代以降、人口で多数派を占めるアルバニア人がセルビアからの独立を求めてセルビア内務省軍と武力衝突を展開、1999年の北大西洋条約機構(NATO)による軍事介入、国連PKO(UNMIK)による暫定統治を経て、2008年2月、独立を宣言しました。
独立後も、両民族間の対立が続き、相手民族への憎悪を煽る報道・情報の拡散が続いていたことから、JICAは2015年からRTKに対する技術協力プロジェクトをスタート。同局内でそれまで言葉を交わし合ったこともなかった両民族に合同で制作する情報番組を提案。新番組「In Focus」は既に30余本が放送され、今では、RTKの看板番組となっています。さらに、各民族言語で制作された番組を送出するコントロール・ルームをコンピューター・ベースで統合、両民族のエンジニアが協働する場を設置するなど、民族間の溝を埋める活動を続けてきました。

2021年1月に始まった同プロジェクト第2フェーズでは、両民族の和解促進に加え、これまで紛争に巻き込まれながら、自らの声を発信する機会が限定されていたコソボ内の少数民族(トルコ人、ロマ、ボシュニャクなど)も支援の対象に加え、第1弾として、これら少数民族が多く住むプリズレンの街にRTK初の支局を開設しました。

新支局には、7つの民族の計15人が勤務。各民族言語で放送される情報番組のほか、これまで首都の視聴者には届かなかった地元発のニュースを次々に発信することになっており、初代支局長のムハメト・レジャイさんは「少数民族のジャーナリスト達を、コソボの情報空間で真のステークホルダーとすることが、公共放送局RTKの使命」と語っています。

和解の促進と多様性の受容-。多数派アルバニア人主導で独立を宣言したコソボに住む全ての人々が、「コソボ人」としてのアイデンティティーを持ち得た時、独立国家として本当の一歩を歩み始めることになるのでしょう。

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プリズレン支局開設式の様子は、RTK「コソボ戦争終戦23年記念 3時間特番」のトップ項目として中継された

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プリズレン支局のサブ・コントロールローム。スタッフ一人でスタジオ・カメラ3台を遠隔操作できる