ビジネスと人権:JICA初の課題別研修を実施

掲載日:2024.02.08

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JICAでは、国家の人権政策の策定や実施を担う途上国の行政官や裁判官向けに、ビジネスと人権分野で初めての課題別研修を実施しました。

国連のビジネスと人権に関する行動原則では、人権を尊重したビジネスを促進するため、国家による人権保護の義務履行が必要とされています。本研修では、同原則に沿って、ビジネスと人権に関する政策とその実施に関する優良事例や課題を共有し、各国の人権保護に役立てることを目的に実施しました。

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水俣市でのフィールドワーク

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OECDによるハイブリッド講義

研修では、コースリーダーの山田美和JETROアジア経済研究所新領域研究センター長をはじめ、日本政府(法務省・外務省・厚生労働省・経済産業省)、経団連・企業、市民社会(ビジネスと人権ロイヤーズネットワーク、個人加盟型組合総合サポートユニオン、JP-MIRAI)の協力を得て、日本の多様な取組の紹介を行いました。

7か国から参加した8名の行政官・裁判官からは、日本の省庁間協議やステイクホルダー間協議の重要性や、行政の初動、企業トップのリーダーシップ、被害者に対する差別をなくす教育等の必要性を学んだとの声がありました。特に水俣市の視察では、水俣病の背景にある社会構造を知り、政府・企業・市民社会など様々な立場の関係者から直接話を聞けたことが強く印象に残ったとのコメントもありました。一方、講師の日本側関係者からも、各参加国の様々な取組の情報が有用であったとの声もあり、双方向の情報交換の機会ともなりました。

また本研修は、ILO駐日事務所(JICAとILO駐日事務所のビジネスと人権に関する協力覚書)、UNDP、OECD(多国籍企業行動指針に基づく各国連絡窓口制度の講義)の国際機関の協力を得て、国際的取組みに関する情報も提供しました。特にOECDとはOECD東京センターのイニシアティブにより、JICA研修にOECDの専門的知見を活用する初の協力事例となりました。本事例は、OECDが持つ本分野の知見をOECD非加盟国含めて拡げる観点からも意義深いものとなりました。

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集合写真

本研修は、JICAサステナビリティ推進方針 の事業面での実践であり、今後もJICAグローバル・アジェンダ「ガバナンス」の旗艦研修として継続していきます。JICAは今後も、開発途上国政府の人権保護能力の向上を通じて、持続的なビジネス環境や国際サプライチェーンの改善に貢献していきます。

●研修概要
研修コース名:ビジネスと人権
研修期間: 2024 年 1 月 14 日~2024 年 1 月 27 日
参加国:7か国(カンボジア、コートジボワール、エジプト、メキシコ、モンゴル、スリランカ、タイ)
参加人数:8名(国家人権委員会、法務人権省、外務省、保健省、裁判官等)
(2024年度は11月頃の開催を予定)