天皇皇后両陛下が帰国した青年海外協力隊と御懇談

2023.10.17

帰国した青年海外協力隊員の代表が9月26日、皇居(御所)において天皇皇后両陛下に御懇談の栄を賜り、任国での活動をご報告いたしました。

今回帰国した青年海外協力隊員は、2020年1月以降の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響を受け、派遣が延期されたり、日本への一時帰国を余儀なくされたりしながらも、日本での待機期間中には、現地へオンラインでの支援活動や能力強化などを行い、これらを現地に戻った際の活動に生かすなど、コロナ禍を乗り越えて派遣国での活動に従事しました。

今回両陛下にお目にかかったのはアジア、大洋州、アフリカ、中南米の国々に派遣されていた青年海外協力隊8名です。御懇談に先立ち、JICA本部(東京都千代田区)で田中明彦理事長と面談しました。

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前列左から松山さん、深澤さん、田中理事長、村上さん、鬼塚さん
後列左から 大塚理事長室長、山崎さん、園尾さん、尾崎さん、千葉さん、橘青年海外協力隊事務局長

学校を巡回し、日本語教育の活性化に取り組む

松山里美さん(スリランカ派遣、職種:日本語教育、43歳、福島県出身)は、中心都市コロンボにて、複数の中等教育機関で行われている日本語の授業の巡回指導を通して、現地日本語教師の指導能力の強化と授業の質の向上に貢献しました。また、日本語教師会の運営支援や地方の学校への出張授業、セミナーを開催するなど、学生や現地教師との信頼関係を構築しながら、教師間のネットワークの強化を目標に、日本語教育の活性化に取り組みました。

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巡回先の学校にて、折り紙教室を開催した様子

環境整備から体育授業を実践、授業の質向上を図る

山崎鉄平さん(カンボジア派遣、職種:体育、29歳、千葉県出身)は、首都プノンペンにある中高等学校に配属され、体育教員として活動しました。4名の現地同僚教員とともに、環境整備や体育用具の作成、学習指導要領の読み合わせなどを行うなかで、信頼関係を深めながら活動に取り組みました。また、日本のNPOが開催する授業研究ワークショップにて、リレーの授業を実践する等、配属校以外から参加した体育教師への指導も行い、体育授業の質の向上を図りました。

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教員を対象にした体育授業のワークショップを実施する様子

新しい手法を提案、児童の学習意欲向上に貢献

園尾洋平さん(パラオ派遣、職種:小学校教育、35歳、徳島県出身)は、地方部にある児童数約30名の小学校にて、現地の教員とともに算数及び体育教育の質の向上に取り組みました。算数教育では、計算ドリルを導入、他の小学校とオンラインで繋ぎ、計算力を競うイベント等、新しい手法を用いて児童の学習意欲向上に貢献しました。体育教育では、日本の運動会や陸上競技の授業等を導入しました。さらに、オンラインを活用した日本の小学校との交流会を実施しました。

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現地教員と協力し、リレーに取り組んだ運動会の様子

QITチーム立ち上げ、看護師の意識を変えるきっかけに

深澤千波さん(ケニア派遣、職種:看護師、41歳、愛媛県出身)は、地方部にある公立のカプテット病院に配属され、病院内での5S-KAIZEN(カイゼン)活動に取り組みました。QITチーム(品質改善チーム)を立ち上げ、看護師への現状調査やカイゼンの必要性の周知、指導を行いました。現地の看護師は多忙で、当初はカイゼンに前向きではありませんでしたが、QITチームを立ち上げ、チームでカイゼンに取り組んだことで、医療サービス向上を目指す院内の体制構築につながりました。

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QITチームメンバーとチェック表を用いて院内を循環する様子

課題を見つけ改善、消費者の視点に立ったマーケティングに取り組む

尾崎隼人さん(ガーナ派遣、職種:コミュニティ開発、29歳、新潟県出身)は、化粧品会社に配属となり、生産性の向上や製品の品質改善などの活動に取り組みました。工場内の動線の効率化、資材在庫の可視化による管理の精緻化、製品配送ドライバーの業務負荷軽減など、多くの業務改善を提案し、実施に至りました。また、配属先の主力製品である石鹸やシャンプー等に関し、商品特性を研究し、消費者ニーズを調査するなど、マーケティング活動にも取り組みました。

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配属先の商品を現地の代理販売店に提供している様子

改良かまどの普及を通して、住民の生活を改善

村上瑞樹さん(マダガスカル派遣、職種:コミュニティ開発、30歳、東京都出身)は、首都から約40kmの地方村落であるアンタネティベ・マハザザ市を拠点に活動を行いました。農村部の住民の生活改善や収入向上を目的に、市役所関係者や現地NGO等と協力して、改良かまどや泥炭の普及活動、栄養改善や家計簿に関する研修、裁縫や料理による女性グループの収入向上支援に取り組みました。300名以上の住民に改良かまどを普及させるなど、生活改善に貢献しました。

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住民を対象に改良かまどの講習会を行う様子

農業生産者の人材育成に貢献、幅広い活動に取り組む

千葉和人さん(ドミニカ共和国派遣、職種:コミュニティ開発、41歳、宮城県出身)は、アスア県ペラルタ市の農業省支部に配属され、農業生産者の人材育成の観点から、PCM手法、生活改善アプローチ及び適正農業規範(Good Agricultural Practices)を取り入れたワークショップを農業生産者に向けて複数回開催し、能力強化に寄与しました。また、日系社会や現地コミュニティとの関係を大切にし、長年の音楽活動の経験を活かした、音楽祭、日本文化の体験交流イベントなどを企画しました。

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任地の収穫祭で、日本文化の体験交流イベントを開催した時の様子

生活に張りをもち、心身機能の活性化を目指す

鬼塚慶子さん(ペルー派遣、職種:高齢者介護、37歳、長崎県出身)はペルー日系人協会に配属され、日系高齢者の健康維持を目的とした活動に取り組みました。活動目標を「各種プログラムを通して生活に張りをもち、心身機能の活性化を目指す」とし、心身機能や筋力低下予防を目的とした体操など、デイサービスプログラムの企画を立案、実施しました。また、高齢者の家族や介助者を対象とした勉強会を開催し、介助や健康維持に関する知識の向上を図りました。

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日系高齢者を対象に筋力低下を予防するための体操を実施する様子

御懇談後、参加者からは、「両陛下との御懇談の雰囲気が大変和やかで、緊張がほぐれ打ち解けた雰囲気でお話しすることができた」、「両陛下が真剣に報告をきいてくださり、様々な質問をされ、帰国隊員の活動に大変関心をもっていただいたことに感銘を受け、励みになった」などの感想をいただきました。

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