国際ボランティア会議2023で大貫元研究員が国際ボランティア研究の成果を発表

2024.05.08

2023年10月22~26日、マレーシアのクアラルンプールで国際ボランティア会議2023(Annual Conference of International Volunteer Cooperation Organisations: IVCO)が開催され、JICA緒方貞子平和開発研究所(JICA緒方研究所)の元研究員で、現在も研究プロジェクト「国際ボランティアが途上国にもたらす変化とグローバル市民社会の形成」に携わる大貫真友子氏(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科講師)が参加しました。

この会議は開発ボランティア国際フォーラム(International Forum for Volunteering in Development)が主催する年に一度の国際会議で、国際ボランティア事業団体をはじめ、政府機関や民間セクターなどが一堂に会し、知見や事例を共有するものです。今回は、「A New Generation of Volunteer as Changemakers」をテーマに掲げ、若者の力をいかに社会の変革につなげるか、さまざまな角度から議論が行われました。

JICA海外協力隊がもたらす効果とは?

大貫氏は23日に2回にわたって行われたパネルセッション2「Measuring the transformative impact of youth volunteers」にパネリストとして参加し、「Transformative Impact of Youth Volunteers on Host, Sending, and Global Communities: Through the lens of Japan Overseas Cooperation Volunteers (JOCV)」と題して発表しました。

JICA海外協力隊のもたらす効果に関する研究について発表した大貫真友子氏

JICA海外協力隊のもたらす効果に関する研究について発表した大貫真友子氏

大貫氏は、ボランティア活動の効果は多面的、複雑、持続的であるため、数値化して相対的に比較することが難しいとしながら、ボランティア活動がもたらした効果の対象を派遣先(開発途上国)、派遣元(自国)、グローバル市民社会の3つに分類し、派遣先への効果とボランティア自身の変容に着目したことを説明しました。派遣前・中・後に行われたJICA海外協力隊員への意識調査の回答を分析した結果、協力隊員自身の変容については、イニシアチブ・対人能力・プロジェクト管理に関する内発的動機づけが向上したことや、開発途上国像が派遣前と比べて複雑化したことを報告。また、さまざまな協力隊員の個人要因、活動・派遣要因、活動中の問題(要請の不一致など)、ソーシャルキャピタル(社会関係資本)などの要因が、成果としての活動目標達成、活動や予算の拡充といった派遣先への影響、および協力隊員の変容に関係していることが分かったと述べました。これをふまえて大貫氏は、「ステークホルダーへの説明責任については、独創的な指標の設定や効果測定法を取り入れた研究を活用することで、ボランティアの特徴や役割を多角的に可視化することも有用なのではないか」との提言を行いました。


会場からは、指標や調査法などについて多くの質問が寄せられたほか、「そもそもボランティアのソフトスキルや信頼などの抽象的概念を測定することは難しく、比較できるものではないのではないか」「本来IVCOが示すべきは、例えば“識字率”の向上、などといった具体的な派遣先国への効果だが、各ボランティア事業団体はボランティア自身の人材育成面での効果を売りにしているのが現状なのではないか」といった課題も共有されました。

ボランティアがもたらす効果について議論が行われたパネルセッションの様子

ボランティアがもたらす効果について議論が行われたパネルセッション

また大貫氏は、26日の研究分科会「Research, Policy, Practice and Learning Day」にも参加し、「Outcomes of International Volunteering and Outcomes for Host, Sending, and Global Communities: The Case of JOCV」と題して発表しました。ボランティアの帰国後の社会還元に関して、欧米諸国と日本での研究調査結果を比較し、日本の帰国ボランティア(主に元青年海外協力隊)の特徴を紹介。元協力隊員のボランティア活動への参加率は一般市民と比べて圧倒的に高いこと、「変化の開放性」(自己決定、創造性、刺激的な経験などを重んじる)の価値観が、国際関係の活動や国際ボランティア参加に関連していたと説明しました。

IVCO2023への参加を終え、大貫氏は「若者の労働市場が悪化・保守化する中、ボランティアへの参加が短期化し、ボランティアツーリズムなどがより選ばれる傾向にあるが、開発途上国へのインパクトを考えると長期的・継続的な派遣が必要。また、ボランティアの価値をいかにさまざまなステークホルダーに説明できるかはまだ課題が残る」との考えを示しました。

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